第62話 炎上ー6
龍一の提案はこうだ。
レイレイと蒼太は前からゲームで知り合っていた。
戦った記録も蒼太とレイレイのプレイヤーログに記録されている。
そこでお互いバトルジャンキーで、ゲームが好きで意気投合。フレンドになった。
これに関してはその通りだ。
そしてここからが真実を証明するためのほんの少しの嘘になる。
「あのストーカーを使う。レイレイ、お前はストーカーっぽい被害にあってたって言ってたよな?」
「うん、一応警察にいったけど証拠も何もなかったからスルーされた」
レイレイはあのストーカーの被害を事前に知っていたそうだ。
といっても違和感程度で実害がなかったため、大事に考えていなかったらしい。
ポストが開けられた形跡などがあり、一応警察にも連絡だけしたがその時はスルーされたとのこと。
「ストーカー被害で怖かったから友達の愛ちゃんに相談した。すると兄の蒼太ともゲーム仲間であることに気づき、親もいない一人暮らしなので配信者イベントまではしばらく泊まることになった」
「捏造とは……お前悪いな……」
「どうせこっちも証拠なしの魔女裁判させられてんだ。それに捏造じゃない。誇張っていうんだ、事実殺されかけてんだよ。レイレイは」
「そりゃそうだ」
そしてここからが話の本題。
「泊まった動機はこれでいい。愛ちゃんと友達なのも事実だし、あのストーカーはすぐにニュースになる、殺人未遂でな。でだ。ここからだが、俺と蒼汰は近いうちに二人で龍王オルフェンに挑戦する。その練習をこの一週間ぐらいレイレイ相手にさせてもらったってことにしたい。対人戦闘が得意なレイレイにな」
「確かに滅茶苦茶三人で対戦した」
「うん、私のログにも残ってる」
「そう。だからレイレイと俺と蒼太はただのゲーム仲間であり、配信者仲間であり、泊まったのはレイレイをストーカー被害から守るためであり、泊まっている期間は毎日のようにゲームをしていた。それが事実。だから男女の仲のようなことはありません。友人ですと否定して、それと時系列を淡々と説明。あとはずっと静観でいい。本当にお前らはそういう関係じゃなかったんだしな」
「そうだな! うん……俺はそれでいいと思う。レイレイは?」
「……私はそれが一番いいならなんだってする!」
するとフィーバー社長も同意してくれた。
「うん。本当に悪いことをやってしまっての炎上とは今回は違う。いわゆる疑惑だ。ならば真実を伝えて静観するのが最も効果的だろう。俺もそれでいいと思うぞ」
「あざっす!」
それからライブスターのスタッフと相談の上、レイレイは釈明文を記載した。
と同時に俺と、さらには龍一までそれを書かれたブログへのURLを自身のSNSで投稿したのである。
当事者である俺とレイレイだけでなく、龍一まで加わったことで信ぴょう性は一気に増した。
「これで賠償金もなんとかなりますかね、フィーバ社長!」
「……いや、正直厳しい。額は減るかもしれないが0とはいかないだろう」
「え?」
「確かに炎上は収まっていくかもしれない。だが事実レイレイ君を使ってのCMはもうできないし、費用は全部ぱぁ。実はそういった広告の契約にはイメージを損なう行為をしてはいけないと、具体的はなく曖昧に書かれている。つまり解釈次第ということだが、今回の件はおそらく裁判で争っても負けるだろう。事実炎上し、レイレイ君のイメージはガクッと落ちてしまっているからね」
「そう……ですか……でも私。払います。頑張って! これからいっぱい頑張ります!」
拳を握り決意しているレイレイを見て俺はつい口が滑った。
まぁでもかっこつけるのは男の特権ということで。
「100億あれば一億ぐらい余裕だな。なぁ、龍一」
「お前……賠償金を払う気か?」
「だって俺も悪いしさ……」
いや、これに関してはガチで俺も悪いと思ってる。
炎上するかもとか思いながら結局家に泊めてたのは事実だしな。
なんか居心地よかったんだよ、レイレイがいるの。やばいなと思いながらも強く追い返せなかった。
「だ、だめだよ。そんな……私そこまでお世話になれない! それにそんな大金!」
「じゃあ龍王倒せた場合のみ支払いということで」
「はっ! ちょっとひよってんじゃねーか。男気みせろよ」
「ち、ちがうわい! そのほうがレイレイが受け入れやすと思っただけだわ!」
「どうだか……」
隣で龍一がくっそムカつく顔をしているが、そんなのは一旦置いといて俺はレイレイを見る。
俺が悪いと思ってるのは事実だが、それだけじゃない。
だってあの時レイレイに俺は言ってしまったからだ。
「言っただろ、友達が困ってるなら絶対に助けるって。だから任せろ、あの王様くっそ怖いけどなんとかしてやる! んで全員ハッピーエンドの大団円よ! 勝ちまくりやりまくりの札束プールも夢じゃないぜ。がはは!」
「普通に下品だし、やりまくりはお前まじで今はやめろ?」
「すんません、調子乗りました」
普通にガチ目に龍一に怒られたが実際そう思っている。
だが俺は驚いているレイレイに追撃するように言った。
「そうと決まれば話し合いは終了! レイレイは……よし! 愛理を我が家にしばらく呼び戻そう!! んで二人で一日中縛りゲーでもどうぞ! しばらく静観しないとだめだし、配信活動とかも自粛だしな!」
「お前にしては名案だな」
「お前にしてはが余計だが。で、どうだ、レイレイ。俺が龍王を倒すまで、愛理と遊び尽くす! 報酬はなんと一億円! やるよな? いや、やれ」
俺はニッコリ笑って、レイレイに手を伸ばす。
「………………」
コクリ。
言葉が出ないレイレイは、ただ頷いたのかもわからないような表情で俺の手を握った。
契約完了、そしてここからが第二幕の始まりだ。
勝てば100億、最強の龍。
あの世界の頂点の四体の王の一人、龍王オルフェンを倒す。
そう思えばなんだろうな。
「――よっしゃ! わくわくしてきた!」
「では、ブルー殿! 100人組手、残り4人、始めるでござるぞ!」
「ばっちこいやでござる!」
俺はあれから天空のトワイライトにログインし、100人組手の続きを行った。
96人連続踏破までは、案外早く到達した。といっても40時間ぐらいかかったけどな!
そろそろゲームの攻略時間って概念が壊れるんだが、一応ここで一区切りさせてもらえるのだ。
つまり96人組手はもうやらなくてもいいということ。
しかし、実際問題、きついのはここからだったのだ。
「では、風龍丸、林龍丸、山龍丸、そして拙者、火龍丸の誰の秘儀の攻略をやるでござるか!」
「とりあえず一番難しい奴で!!」
「かかか! さすが勇者殿! その勇猛果敢さ、天上天下唯我独尊! では」
そういって、火龍丸は刀を抜いた。
「いくでござる。勇者殿、切り捨てごめん!!」
その瞬間、火龍丸が火に包まれて目を閉じる。
俺は冷や汗をかきながら剣を構えた。相変わらずなんて圧だ。
天竜よりも遥かに弱いはずの火龍丸、なのに今感じるのはまるでクリストファーさんと対面したときのようなプレッシャー。
「……侵略すること火のごとし!!
「くっ!!」
烈火のごとく放たれる一撃一撃が致命傷の12連撃。
一撃もらったらアウトだが、もう今日で10回以上見てきた俺なら! JUST!!
12連続の攻撃を始めて全てJUSTガードで弾き生還した俺は満面の笑みを浮かべる。
ついに攻略した。なんとか生き延びたぞ!! これで火龍丸の技は攻略か!
「これは驚き申した……王に比べれば稚拙な我が技なれど、それでも受けきられたのは初めてでござる。さすが勇者殿」
「かかか! まじで死ぬかと思ったでござる!! これでクリアでござるか?」
「何を言ってるでござるか! 片腹痛し! 某の攻撃をうまく受けた程度で王の一撃を受けられるなど笑止千万!! ならばこそ!」
そういって再度火龍丸は剣を構えた。
「咆煌轟十二連! 全てを完璧に受けるまで終わらぬでござる!」
暗に12回連続でパーフェクトを決めろと言われ、俺は白目をむいた。
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