第48話 龍王との邂逅ー4
「しかし、ブルー殿! その装備で一体どうやってここまでこられたでござるか?」
「文字通り死ぬ気でやったでござる。あと三回ぐらい死んだでござる」
クエストを受注した後、龍一はとりあえず寝るといってログアウトした。
俺はまだまだ元気なので探索でもするかと思ったのだが、今はいぶし銀歌舞伎侍の火龍丸に連れられている。
なぜなら天龍が俺を見て装備が弱すぎると嘆いたかと思ったら火龍丸を呼んだからだ。
「我が王に挑むとお聞きした次第。拙者でできることはこの命かけて手を貸させていただくで候!」
「火龍丸殿は、オルフェン様をとても助けたいようでござるな。……そろそろしゃべり方戻していい?」
「某とオルフェン様は……いや、この里全てオルフェン様の子のようなものでござる。確かに血は繋がってはござらん。だがあの御方は我々が生まれた時からずっと王でござった。あの御方ほど優しき王はおらぬ。あの御方ほど民のことを考えてくださる王もおらぬ。確かに稽古は死ぬほど厳しかったでござるが……それでも某は王が大好きでござった」
そういう火龍丸は昔を思い出すように少し笑顔になり、そして少し寂しそうな顔に変わった。
その言葉だけで龍王オルフェンが民に愛されていたことがわかるし、民を愛していたことがわかる。
悪い殿様もいれば、命を賭けてまで忠誠を誓ってくれる部下達を持つ殿様もいる。
そういう意味で言えば龍王オルフェンは間違いなく民に愛されている王なのだろう。
「ところでどこいくんだ?」
火龍丸に連れられて俺が向かったのは龍王城の後ろにある訓練場?
広場のような場所で鎧を着た巻き割りや、刀なんかが置かれている。
「ブルー殿には強き武器を手に入れていただく。さすがにその武器では我が王の一撃を受けることすら叶わぬでござるからな」
お!? もしかして武器くれる感じか!?
助かる。まじでこの辺の敵糞強くてDPS不足が深刻だったんだよ。
だがどうやら俺の期待したことではないようだ。
「火龍丸殿? もしやとは思うでござるが?」
「そうでござる! 我が王に挑まんとする
「なにその世紀末蛮族組手」
そこに現れたのは鎧武者×100ぐらい。
装飾の違いはあれど、全員完全に武士であるし、なんかすごい目が血走ってますね。
倒した相手の武器を奪い取るなんて、目が合ったら勝負して勝者は合法カツアゲする某育成ゲームみたいだが、これは間違いなく龍王のクエストを受けたから発生したサブクエスト。
「では、始めるでござる! 我が王はいつも朝飯前にこなしていた100人組手! これぐらいはこなしてもらわねば王を倒すなど夢物語でござるからな! ちなみに一度敗北すると最初からでござる!」
「やっぱり強制鬼畜イベントだぁ……」
楽しそうだなぁ(白目)
……数時間後。
「ぷはぁ!」
俺は配信を終了し、ヘッドセットを取り外した。
「きっつい、きっつい。あいつらまじで強いな」
侍たちは一人ひとりが本当に強かった。
最初は小手調べだったんだろう、スマシスという格闘ゲームでいうとブロンズレベルの相手だったのだが徐々に上がっていき今ではダイヤモンドレベルはあった。
しかもまだ半分といったところだし、これは相当にハードモードなクエストだと思うが相手があの天龍より強い龍王というのなら正直生半可な覚悟では爆死する未来しかみえない。
しかもこのクエスト、負けたら武器没収からの最初からやり直しという『我らの思いを託したい』とかいう話はどこに行ったという鬼畜仕様。
「こりゃしばらくは100人組手がメインになりそうだな……というかクリアするまで多分進まないタイプのクエストだ」
おそらくは俺がこれをクリアするまでは、龍王に挑めないのだろう。
なぜならあの龍王覇気とかいう一発終了、回避不能全体金縛りの術の対処方法が無いのだから。
あれ解決策くれるよな? くれないならどうやっても無理だぞ?
そして俺はそのままリビングに降りていく。
時刻は夕方ぐらい、今日こそ12時ぐらいに寝たいものだ。
「あ……ブルー君! シャワー先に頂いたよ♥」
「…………日頃パンイチで徘徊している俺がいうのもなんだが、少しは恥じらいを持ってほしい……」
時間的には夜。
リビングに降りるとレイレイが最低でも上半身裸でタオル一枚肩にかけてソファに座っていた。
幸い、背中越しだし、肩より上しか見えないので俺の童貞ポイントの減少は軽微。
だがこの女もはやここを我が家かと思ってやがる、こら! 人と話すときは目を見て話すものだ、こちらを向け!
ピンポーン。
「ん?」
するとチャイムが鳴ったので、何か宅配でも来たかと俺は玄関に向かう。
そして扉を開けると、今一番会いたくない人ランキング一位がいた。
つまりちくちく小言大魔王、龍一が肉を大量にビニール袋片手に現れたのである。
「うぃ、龍王戦の決起会しようぜ。焼肉な」
「……お引き取りください。ただいま天野家本邸には、大変危険な毒ガスが充満しておりますゆえ」
「はぁ? 意味不明なんだよ、ほら、入るぞ」
「ちょ、まず! まずいですよ、今は!! ちょっとまずいってば!」
「なんだよ。あ、愛ちゃんがいないからっていかがわしい店から女でも呼んだか? ははは……よし絶対に入ろう……」
「違うわ! というか俺達はまだ高校生だぞ! ちょ! 待て! おい! ぬぉぉぉーー!! 唸れ、俺の上腕二頭筋!!」
全力で龍一の侵入を止めようとする、だがゴリ押しで入ってこようとする龍一。
くそ! 俺の右腕が上がらないのをいいことに力づくとは卑怯なり。
しかし、たとえこの身朽ちようとも、ここだけは通せぬ!!
我、裸の勇者ブルー也!
「あれ? もしかしてドラゴン先輩? リアルで会うのは初めまして!! レイレイでーす」
俺はゆっくりと振り向いた。
そこには、ピンクの下着一枚とタオルを首からかけてたわわな胸がギリギリタオルで隠れるような、まぁ人前に出てはいけない格好のレイレイがいた。
なんでお前はそう……羞恥心というものがどこかに消えてしまったんだ。いいぞ、もっとやれ! でも今は違う!
冷や汗を流しながら俺は龍一を見る。
うわ、すっごい険しい顔。
「ち、違うんだ。龍一! なぜ俺が浮気がばれた妻みたいな感じになってるのか分からないが違うんだ! あの子が無理やり襲ってきたのよ! 私は悪くないわ!」
「てへっ!」
「まて! 警察はまずい! リアル警察は色々とまずい!! スマホをおけ、龍一!!」
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