第44話 突然の同居人ー2
「ほらほら、見てみて」
飯を食った後、俺とレイレイはソファに座りながら配信者イベントの資料を一緒に見た。
あれ、こいつ俺の彼女だったっけ?ってなるぐらいに距離感の詰め方が異常な速度だった。
俺の体にもたれるように、その柔らかい体を預け、俺の顔のガチで半分ぐらいの小さな顔を俺の肩に乗せる。
俺がそれにドキドキしながら顔を向けると、ん? っと笑顔で上目遣いで俺を見る。
うん、好き。付き合おっか……って違う! 俺はそんなに軽い男ではない。なのでプラトニックなお付き合いから始めませんか?
「なんか同棲してるみたいだね」
「お、おう」
なんだいまの「お、おう」は。
こんなに童貞っぽい「お、おう」は自分でも聞いたことがないぐらい童貞臭がすごかったな。
「というか日米合同なんだな。日本だけかと思ってた」
「ライブスターとジャパンeスポーツ合同開催みたいだから海外の有名プロとかも呼ぶらしいよ」
「へぇー、普通に楽しそうだな」
海外の有名選手とゲームするなんて日本にいたら絶対にできない。
プロならできるかもしれないがアマチュアでは、そもそもサーバーが別れているため出会うことはないからだ。
天空のトワイライトでも同じ、海外サーバーと日本サーバーはそもそも別れているので出会うことはまずないだろう。
それは普通に楽しそうだ。
出場者一覧を見ると、日本からは……龍一はまぁ出るってのは聞いてたけど。
「ラヴァー……」
「そうそう! ラヴァーさんもでるんだよ! 私ファンなの! ブルー君の方が好きだけど、ラヴァーさんもすごく好き!」
「お前の好きはゲームがうまいと同義だろ。しかも相手は日本最強だぞ?」
「でもブルー君の方が私は凄いと思うけどなー」
ラヴァー。
通称、変態仮面。
仮面をかぶった変態紳士とも呼ばれ、男女共にその意味不明さで大人気のプロゲーマー。
だが強い。
ただ強い。
ゲーム好きの俺としては一度は会って見たかった人ではある。
「あ、今日から愛ちゃんのお部屋借りていい?」
「それは愛理の許可がないとダメだろ」
「大丈夫、許可は取ってきました!」
「はぁ?」
そういって俺にスマホを見せるレイレイ、それは間違いなく愛理とのメッセージのやり取りの画面だった。
なんなら滅茶苦茶親し気なんだけど、お前らいつ知り合った?
『レイレイちゃんが泊まることを許可します。お兄ちゃん、レイレイちゃんには逆らわないで……ガクブル』……だと?
「愛理の何を握った!!」
「ふふ、聞きたい?」
なんということだ。
この女、俺の世界一大事な妹になにを……。
「あはは、冗談! 弱みなんて握ってないよ! ちょっと仲良くなっただけ! 愛理ちゃん私のリスナーだったからさ。年も同じだし」
「なんだお前高1だったのか」
「そ! 本名は鈴村美鈴! バリバリJKで、名前の鈴が二つでレイレイだよ! あ、本名は公開してないからブルー君だけ特別だぞ!」
「お、おう」
俺の鼻をウィンクしながら指で突く。
くっ! また童貞お、おうがでてしまった。不意打ちとは卑怯なり。
「はぁ……愛理がいいっていうなら勝手にしろ。ただし俺の部屋には無断侵入禁止だ」
「了解しました!! どうする? 愛ちゃんの代わりとしてお兄ちゃんって呼んであげよっか? それで愛ちゃんとはどんなプレイするの? 私、借りの妹として頑張るよ!」
「やめろ、うちを倒錯してる兄妹のように言うな。健全な兄と妹だ」
「愛ちゃん、あんなに可愛いのに?」
「それは同意するが、妹に劣情を抱く兄は創作内でしか存在しないと覚えておけ」
「そうなんだ……エッチな本だと定番なのにね!」
とんだ風評被害である。
遺伝子の拒否反応を舐めるんじゃない。普通に嫌だぞ。
するとレイレイが隣でカシャカシャと写真をとっている。
「何をしてるんだ?」
「SNS更新用の自撮りだよ。一日一回はあげてるんだ!」
「ふーん………………よこせ!」
「あぁ! だめ!!」
俺はレイレイからスマホを奪い取って写真の一つを見る。
嫌な予感がしたからだ。こいつは危険だからな。そして案の定だった。
「……レイレイ。注視しないとわからないが、なぜこのグラスにうっすら俺が映っている?」
「…………え、えーっと」
滝のように汗を流しながら目を逸らすレイレイ。
俺はその目を真っすぐと見つめる、おい、目を合わせろ。
「レイレイ?」
「あ、あはは……に、匂わせ? てへっ! いた!?」
俺はレイレイにデコピンした。
ほんとにこいつほっとくと秒で炎上しそうで怖いわ。まじで。
終始こいつのペースに乗せられっぱなしだったがまぁなんやかんやしばらくレイレイが家に泊まることになった。
幸い愛理の部屋は空いているし、こいつなんとファントムまで持ってきやがった。配信する気満々である。
それにしてもラッキースケベならぬ、ドストレートドスケベをかましてきてそろそろ俺の色々がアウトになりそうになるが、配信者としては絶対NG。
こいつマジでガチファンが多いから炎上するんだよ。
俺は別にそういうのはいないと思うから問題ないだろうが、下手すればリアル凸からのリアル殺傷事件とか起きそうだし。
家に年頃のJKがいるという非日常に若干ドキドキはするが、とりあえず今日は龍人の里を探索する予定なのである。
「じゃあ俺は配信するからおとなしくしとけよ!」
「ねぇ、知ってる? フルダイブ中は体に何されても気づけないんだよ? ぐふふ……じゅるり」
「いつからこの世界は貞操逆転世界になったんだ」
「はい! ということで今日からね! 龍人の里に入っていこうと思うんですけども!!」
こんな時間に配信初めてすみません。今の時刻は深夜3時!
あれだな、配信者としては特定の時間に配信するように考えなくてはならないな。
まぁ徐々に生活リズムを合わせていくから許してくれ!
スカイディアから始まり、転移門へ。
そして龍人の里の眼の前の転移門に、俺は転移した。
目の前には完全に江戸時代っぽい真っ白な壁と瓦の屋根、そして大きな木造の門。
その門の前に立つのは。
「龍人? ほとんど人間みたいだな……あ、でも角が生えてる」
門番であろう龍人が二人。
見た目は完全に人間である。
だが服装は侍? 甲冑を着て腰には一本の剣を差している。
あと頭に角が生えているから一応は龍なのかな? しかし和風ファンタジーという感じだな。忍殺……一心……RTA……う、頭が。
とりあえず入ってみるか。
他にもちらほらとプレイヤーらしき人が出たり入ったりしているので普通にいけるだろう。
ちわ! 勇者です! パンイチだけど、不審者じゃないよ!
そして俺が門の中に足を踏み入れた時だった。
「やや!? そこにいるのは勇者ブルー殿ではござらんか?」
わぁ強制イベントだぁ。
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