第43話 突然の同居人ー1

 もしもし、ポリスメン?

 

 部屋に不審者がいます。

 犯人の特徴は、ドエロい感じに頑張れば見えそうな膝上10センチぐらいのミニスカセーラー服で髪はピンク、おっぱいは非常に柔らかそうです。

 今俺が寝ようと思っていたベッドの中で俺の枕に顔をうずめてはぁはぁと吐息を漏らしながら顔を赤らめてました。

 おそらくは変態です。

 

 一応聞くんですが、男が美少女に襲われた場合は強姦というんですか? ご褒美というんですか?

 とりあえずすごい怖いんで助けてください。

 あ、でも一時間……いや二時間後ぐらいでゆっくりお願いします。


「……ってちがーーう!! 何してんのお前!?」

「ブルー君、今どき鍵をポストの中に入れるのは、セキュリティ意識的に低いと思うよ? でも……リアルであえて嬉しい。クンカクンカ! これがブルー君のリアルの匂い!! クンカクンカ!!」


 俺が寝ようと思っていたベッドの中になぜか潜り込んでいた変態痴女ことレイレイさん。

 リアルで会うのは初めてだが、ゲーム内では何度か会ってるので違和感はない。

 違和感はないが、この状況には違和感しかない。

 なぜ俺の家にこいつは不法侵入してるんだ?


「というかなぜ俺の家を知っている」

「SNSにあげる写真はガラスとかに映る諸々の情報を確認したほうがいいよ。ブルー君の過去ツイート全部漁ったらこの辺かなってわかっちゃうから」

「おっふ……」


 何と特定廚でしたか。

 あとで過去ツイ消しとくか。あのアカウントバズってから数十万フォロワー超えてるからな。

 しかしそんな特定できるようなツイートがあったか? 怖すぎるな。特定班。


「だからね、ほら。おいで……眠いでしょ? 私が抱き枕になってあげる」


 そういって布団を開き俺を誘うレイレイ。

 なんという誘惑、死ぬほど眠いことを除いても抗えない魔力がそこにはあった。

 そうか、ここが俺達の黄昏トワイライトか。とりあえずパンツ一枚になっていいですか?


「ってちがーう!」


 本日二度目の違うが出たが、危ない危ない。

 この変態痴女のペースに乗ってはいけないが、いかんせん変態レベルでは今の俺では圧倒的に不利。

 やはりパンツ一枚になって初めて戦えるレベルか。だが今脱いだら正直危険なのである。何が? ナニガだ。


「知っている仲だ、不法侵入並びに変態的誘惑罪には目をつぶってやるが一体何しに来た?」

「うーん、妹ちゃんが入院するっていってて寂しいかなって思ったから? ノリ? 暇だったから。それにきてもいいっていったよね」

「……リアル凸とは思ってなかったんだよ」

 

 確かに会いに来ていい? に対していいよとは答えたけども!

 だからといって暇なんでと健全な男子高校生のベッドにもぐりこみますかね。

 俺がサッカー部だったら今頃大変エッチなことになってたぞ。話変わるけどサッカー部の彼女持ち、非童貞率って異常じゃね?


「はぁ……とりあえず俺は眠いから寝るぞ。お前は帰れ」

「えー!! やだやだやだ! 帰らない!!」

「駄々をこねるな。その姿を親が見たら泣くぞ?」

「……親ならいないよ?」

「ん?」


 親がいない? どういう……。


「私さ、施設育ちだからさ。親の顔も知らないんだよねー。ずっと一人、だから今も一人暮らしなの」

「……そうか」


 今のは俺が悪いな。ちょっとデリカシーが無さ過ぎた。

 親がいないか……、最初からいないなら俺とは違うが、寂しいという気持ちはちょっとだけわかるな。


「だからね……すごく寂しくて……一人でいると……壊れてしまいそうで……グスングスン」

「…………ごめん」


 泣きそうな顔でうつ向くレイレイ。

 俺は思わず謝ってしまった。


「ふむふむ、ブルー君は優しいからやっぱり泣き落としに弱いと。メモメモ」

「……俺の謝罪を返してくれ」

「てへっ!」


 そういって舌を出しながら手を頭に当ててあざといポーズをする。

 くっ! 可愛い! 相変わらず顔面SSS、ボディSSS、常識Fランクの歪構成である。


「ほらほら、我慢しなくていいんだよ? 今ならリアルJK配信者おっぱい枕使いたい放題だよ?」

「リアルJK配信者おっぱい枕……だと!?」


 なんだそのパワーワードは。

 ということはそれを枕にしていいということなんですね、そういうことなんですね!

 プルプルしてて柔らかそうな安眠必至のそれを! 


「ってちがーーう!!」 

「ははは、ガード固いんだね。貞操観念しっかり系?」

「男女逆なんだよ、そのセリフは」


 そういってレイレイはベッドから降りて部屋を出ようとする。

 やっと言葉が通じたか、残念だ。しまった心の声が漏れた。


「じゃあまたね」

「おう、気を付けて帰れよ」


 そういってレイレイは部屋を出て外に出た。

 とんでもない嵐のような女だったなと思ったがいよいよ眠すぎて泡吹きそうなので俺は眠ることにした。



……



 パチッ。


 夜中、月が出ている深夜2時。

 ばっちりと目が覚めたので、俺はインスタントラーメンでも食べるかと起床する。

 俺は料理ができない、というよりしない。

 放っておくと一日ラーメン三食とかざらなのだが、愛理が入院中はインスタントラーメン連続記録も更新されるかなと思っている。


 だがこの匂いはなんだろうか。

 美味しそうな匂い、でもどこか優しい匂い。

 トントントンと小気味よい音がリビングから聞こえてくる。

 あれ? 愛理は入院中なのにと回らない頭で思考しながら俺はリビングにおりた。


「あ、おはよう。そろそろ起きると思った! ブルー君、12時間ぐらい寝るもんね」

「俺の生活リズムがなぜ把握されているのかは触れないでおくが、何してるんだ? レイレイ」


 そこにはエプロンを付けたレイレイが料理をしていた。

 しかも制服ではなく、男が大好きなあのふわふわした寝巻だ。

 いや、そこは重要ではないのだが、一体何をしてるんですか? お前が包丁持つとちょっと警戒するんだよ。すぐ刺すから。

 

「料理! まずは胃袋からっていうもんね! 私こう見えて一人が長いから家事全般できるし料理は得意だよ。さっきは買い物に出掛けました!」

「まさかの家庭的な女……対極に位置すると思ってたわ」


 そういって俺の後ろに回って俺の背中を押すレイレイ。

 なすが儘俺は椅子に座らされて次々料理が運ばれてくる。


「どうぞ!」

「実はバキバキになるエッチなお薬が入っていたりして……」

「あはは、エッチな本の見過ぎ! 大丈夫、情欲しか入ってないから」

(そこは愛情では? いや、それでもおかしいんだが……)


 俺は警戒しながらも匂いは間違いなく美味しそうな味噌汁を飲んだ。

 

「……普通にうまい」

「やった!」


 両手をぐっと握って最高の笑顔で俺に笑うレイレイ。

 いや、正直滅茶苦茶美味しい。

 普通に愛理の料理とタメ張れるぐらいには、本当にうまい。

 なんというか、全然似合ってないが家庭の味だった。するとレイレイがやっと俺の家に来た理由を話し出す。


「えーっとね。まぁノリってのが本当のとこだけど、少し泊めてほしくって。ほら! 今週末東京であるでしょ! ブルー君も出る奴!」


 ああ、そういえばフィーバーさんから色々資料がきてたな。

 まだ目を通してなかったが、そうか、もうすぐか。


「日米合同ゲーム配信者イベント! 楽しみだね!」

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