第34話 その両手の剣に思いを乗せて、盛大にバズれー2

◇蒼太視点。


 知らなかったな。


 パーフェクトガードか……そんなのあるんだ。

 なんとなくこれ、いけるんじゃね? と思ったけど、まさかほんとにいけるとは。


 でもよかった。

 これならいける。


 これならまだ遊べる。


 この最高の時間を永遠に。


「……まだ遊べるな……天龍」


 俺は剣を天龍に向けて笑う。

 これほど最高の状態は初めてだ、今までで一番かもしれない。

 今ならなんだってできそうだ。

 神がかり的なラッキーパンチだったのは分かっているが、それでも間違いなく頂点に手が届いた気がする。


――――コメント――――

・うぉぉぉぉぉぉ!!!!!

・うぉぉぉぉぉぉ!!!!!

・うぉぉぉぉぉぉ!!!!!

・嘘だろ、ここでパーフェクトガード!?

・初めて見た……綺麗。

・あれ、雑魚相手ですら相当練習しないと起きない奴でしょ?

・初見じゃまず無理。

・神か。

・まじですげぇぇ。

・AP決めますか。

・ひょええぇぇぇ!!

・wwwwww

・天龍さん顔真っ赤!

・やばすんぎ

・くそかっけぇぇ!

・ブルー君! ブルー君! あぁ! ブルー君!

――――――――――――


 過去一番のコメントの盛り上がりが画面の右端で読まなくてもわかる。

 集中しすぎて気づかなかったが、どうやら試みは成功して結構視聴者がきてくれてるのかな?


「ふぅ……よっしゃ!!」


 ならこっからもがんばらなきゃな!

 そして俺が再度気持ちを引き締めて剣を握りなおす。


「さぁ、続きをやろうぜ! 100億円龍!」


 初めてホームランを打ったあの日のように。

 高鳴る鼓動が、脈打つ心を躍らせて、さぁはやくやろうぜと前を向く。


 まだ試合は始まったばかり。

 逆転サヨナラはこっからだろ?


 そのときだった。


 後ろにのけ反った天龍が翼を強くはためかせ空に飛び立った。

 いつの間にか真っ赤に燃えていた鱗は黄金色に戻り、そして空中に滞空しながら、流暢にしゃべり出す。


『名を聞こう、小さく……そして強き者よ。我は龍族の姫、シルヴァーナだ』

「……お前……。そうか、俺はブルー」


『その首飾り。そうか……お前がトワが認めた男か』

「ん? トワを知ってるのか?」


『あぁ。強き者、新たな勇者ブルーよ。お前はトワにも、そして英雄王にも……技、その一点のみでは届きうる。龍族の長である我が認めよう。お前は強い』

「一応、ありがとうってでもいっとけばいいのか?」


 おいおい、そんな褒められるとお前を倒すのが少し忍びなくなってくるじゃないか。

 全然倒すけどな! あと英雄王って誰? 慢心王のこと? しかし、流暢な日本語だな、さすがアテムのAI。まるで高貴な貴婦人のようだ。


『ゆえに我はお前の力を認める。そして頼む。我が里へとくるがいい、天空人よ。我らは100年の時を経てお前達を受け入れよう』

「里?」


 そういって天龍は、後ろを振り向く。

 その先には、地上が広がっているが遠くにはまるで里のような……いや、遠すぎて見えんわ。

 うっすら聞いたことがあるが龍人の里という奴か? でもあそこっていけないとかなんとか。


『ブルーよ、天空の勇者の後を継ぎし者よ。かつての大戦を無様に生き残った者として頼む。我が王を……悠久を我らを守るためだけに戦い続けている我らが王を解放してくれ』

「とりあえず詳しく――」


 バッサバッサ。


 あれ? 天竜さん? もしかしてお家に帰ろうとしてません?

 そんな翼をはためかせてどこいくの!?

 おいおい、今めっちゃ体あったまってすごく良い感じなんですけど!


『……ではな』

「ちょ、ちょっと待て! おいおい、こんな生殺しですか!? まだまだ俺はやれるんですが!!」


『……ふふふ、ははは。そうだな……しかし少し疲れた。認めよう、此度の勝負、お前の勝ちだ。良き戦いであった!!』


 すると天龍は高笑いしながら飛び立っていく。

 俺はぐっと剣を握って、逃げやがってと叫ぼうとした。

 その瞬間。


パリン。


「……あ」


 俺の両刀は砕け散った。

 骨の剣と鉄の剣、最弱とはいえまだ作ったばかりなんですが。

 そして気づけば天龍は、俺の視界から消えていた。俺は笑いながら地面に座り込む。


「なんだよ、糞――!!」


 先ほどまでの喧騒が嘘のように静寂に包まれる霊峰イカロス山頂。

 突如緊張の糸がほぐれ、疲労感が俺を襲う。

 集中力を限界まで使ったのもあるが、どっと疲れててを両手を広げながら俺は地面に転がった。


 空を見れば憎たらしいほどに輝く太陽が落ちてきそうなほどに燦々と。


 ん? 落ちてくる!?


 ドスン。


 と思ったら俺の隣に何かが落ちてきた。

 黄金色に輝くそれを俺は見つめる。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

・天龍の黄金鱗(換金アイテム)

レア度★★★★★★(レジェンド級)


世界一の硬度を誇る黄金色に輝く鱗。

天に近づきすぎた者がそれでも覚悟を見せ、己が限界を越えた時、報酬として与えられる。


売却額……時価。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「はは、こんだけ頑張って鱗一枚か。まぁ…………悪くはないな」


 俺がこれが報酬かなと笑いながらそれをアイテムボックスに閉まった時だった。


 ゴーーン!! ゴーーン!


 まるで鐘の音が、天空のトワイライト中に響いているかのように鳴り響く。


『黄金の試練、攻略を確認しました。繰り返します。黄金の試練の攻略を確認しました』


 そこにはシステムコールと呼ばれるお知らせが空に映し出されていた。

 コメント欄を見れば、どうやら俺だけではなくみんなが見えているようだ。


『黄金の試練、初踏破者。攻略者名:ブルー。黄金の試練は以降は挑戦不可です。また攻略に当たって、龍人の里が全プレイヤーに解放されました。繰り返します。龍人の里が全プレイヤーに解放されました。以上、システムコールでした』


「あぁ、なるほど。龍人の里にこいってことね……」


 どうやら俺は一応戦いには勝ったようだ。

 天竜は倒せなかった。

 それでも頂点には届いていたようだ。


――――コメント――――

・これ勝ちってこと?

・間違いなく勝ちってことでしょ!

・勝った!! ユニーク討伐ではないけど!!

・100億は!? 100億なし!?

・いや、でも龍人の里解放!?

・まじか! 全然入れなかったあそこか!

・すぐいかなきゃ!!

・[500円]おめでとうございます!!

・[1000円]まじ感動しました!

・[100円]すごかった、ブルー!!

・[2000円]お疲れ。心震えました。

・[100円]最高OF最高。これからも応援します。

・シナリオ進んだー!!

・これユニークも実は無理げーってわけじゃないっぽいな。

・本格的にプロも参戦してくるぞ!

・[10000円]ブルー君、すごかった。本当にお疲れ様!

    ・

    ・

    ・

――――――――――――


 コメント欄では読み切れないほどのコメントが流れ、さらにはスパチャと呼ばれる投げ銭も届いた。

 一人ひとりお礼をいうのが礼儀だろう。履歴に残っているから読み上げていこうか……これ一体いつまでかかるんだ!? 

 数えきれないほどの投げ銭の数、でも初めてなんだ。最初の配信のスパチャぐらい夜までかかっても読み上げていこう。


 それに今は気持ちが高ぶりすぎている。


 あ、でもこれだけはみんなに言っておかなきゃ。

 俺は体を起こして、配信を操作し、正面を映すようにする。

 今までは基本背中ごし、とはいえ視聴者の操作によってどこからでも見れるのがVRゲームの配信の魅力なので、正面から見てた人もいるだろうが。

 

 そして俺は正面を向いて挨拶をする。

 いつもふざけ倒してるから改まると少し恥ずかしいな。


「えーっと、あれだな。なんだかちょっと緊張するな。……まずはここまで配信みてくれてありがとう。自己紹介もまだだったけど、ブルーって名前で活動し始めました。もしこの配信が楽しかったなって思ったら一回だけでいいです。動画の拡散お願いします! ちょっと色々入り用で……濁さず言うとバズりたいです!」


――――コメント――――

・くっそ拡散しました。

・石化病の妹のためでしょ、知ってます! 拡散!

・全力拡散。

・安心しろ、もう日本のトレンド一位だ。

・ドラゴン君が動画リツイートしてるよ!

・あ、レイレイもやってるわ。これは余裕でバズりますわ。

・万バズ余裕でいくな、わんちゃんワールドクラスか。

・このゲーム世界中で人気だし多分余裕でいく。

・妹ちゃん良くなるといいですね! これからも応援してます!

・[1000円]これ少ないですが、治療代に!

・[100円]じゃあ俺も!

・[500円]感動したし、俺も!

    ・

    ・

    ・

――――――――――――


 俺が少し申し訳なさそうにするとやはり一瞬ですごい数のコメントが流れる。

 いやいや、みんなそんな投げ銭して大丈夫? だめだめ、俺の金銭感覚がぶっ壊れていくから!

 1000円って大金よ?


「投げ銭は無理してまでは大丈夫だからな。1000円なんて大金ほいほい投げるもんじゃない。見てくれるだけでほんとにありがたいから」


――――コメント――――

・[1000円]了解しました!

・[1000円]気を付けます!

・[1000円]これからは控えますね!

・[1000円]もちろん登録はしておきました!

    ・

    ・

    ・

――――――――――――


 こいつら言葉が通じねぇ!

 押すなよは押せの合図だよ理論でごり押してきやがる。

 我が家の三日分ぐらいの食費が次々と飛んでくるがこれが金の暴力か。 

 悔しいが、屈してしまいそう! くっ! オカネキモチイイ!


「はは……でも……ありがとう。すごく助かる」


 俺は頭を下げてお礼を言う。

 本音を言うとお金はいくらあっても足りない。

 俺は石化病の治療費だけではなく、研究費も稼ぎたい。

 そのために配信者になり、ユニークを倒すと決めたのだから。


 じゃあ、一区切りもついたしそろそろ言うか。

 この配信は動画として残り続ける。

 俺の代表動画としてトップ画面でたくさん再生してもらうことになるだろう。


「じゃあ、視聴者のみんな。これからも全力で楽しくをモットーにたくさん配信するんで……こいつ面白いなと思ってくれた人は!」

 

 だから俺は両手を合わせてお願いする。

 そして満面の笑みで、言った。


「――チャンネル登録と高評価お願いします!!」


 この一言のための戦いだったのだから。






 こうして俺はこの日、天龍との死闘という神回を配信してストリーマーとしての人生を歩みだすことになった。


 世界的なバズにより、拡散されまくった動画は指数的に世界に広がっていく。

 つまり、一夜にして俺は世界的ストリーマーになってしまったということだ。


 これからどんな世界が待っているのだろうか。

 どう俺の世界が変わっていくのだろうか、世界にはすげぇ奴がたくさんいるからな。


 全く想像もできないが、ただ一言いうならワクワクが止まらない。


 きっと輝いているのだろう。というか無理やりでも輝かせてやるわ。


 じゃないと愛理も安心できないし、何より応援してくれる視聴者に魅せられない。


 でも今日ぐらいは結構頑張ったからあえて自分で自分にこう言おうかな。

 

 お疲れ、俺、そして。



 ――ようこそ、輝かしきストリーマーの世界へ。




                       第一章完。












 あとがき。

 第一章読了お疲れさまでした! どうでしたか? 熱くなってくれたなら嬉しいです。


 ちなみに黄金の試練は、勇者でなくても攻略可能です。

 詳細な条件をいうと、

 ・個人でジャスガを50回決めること。

 ・灼熱天龍状態で、パーフェクトガードを一度でも決めること。

 の二つです。ちなみにジャスガの難易度は、スマブラより難しくてスト6より簡単ぐらいかな。まぁ人に寄る!

 なので、墓守の灯台のようにたくさんの人数で寄ってたかってでは超えられない試練なんですよね。

 うーん、大石さん可哀そう。

 あ、そうそう、後ろでずっと見ていた凛音ちゃんは、どうなるんでしょうね。ちなみにゲームがうまい奴はモテるよね。

 しかもVR世界で、あんなプレイ目の前でされたらどうなっちゃうんでしょう、これはツンツン委員長がデレるのも近いか?

 ちなみにああいう強い女が抗えない恋に崩れていくのが好きです。(作者の癖)

 


 本作は、配信要素はありますが、ダンジョン配信ではないですし、最近の配信物とはまた違って、有名人に映りこんでバズるという流れを選んでいません。

 なぜかって? 運よくではなく、自分でバズりたいと思って、努力してバズるほうがかっこいいと思ったからです。

 

 まぁ案の定、ここまでにラノベ一冊分かかったが……。(笑)

 つまりは作品としての序盤爆発力は無かったのでランキングを上がることはできてません。なので、ここで切実にお願いします。

 ページ下にある『☆で称える』の+ボタンを3回押して応援してランキングを上に押し上げていただけると嬉しいです!

 フォローボタンも押していただけると大変嬉しいです。

 ほら、普段★なんてつけないそこの読者様、ほんの数センチ指を伸ばしてくれれば救える命があるかもしれない。


 二章・龍王編までは何と言われようと意地でも続ける(天龍戦より糞熱い展開用意してるから絶対書きたい)つもりですが、打ち切りエンドは嫌すぎる。

 とはいえ、数字ないんで商業はちょっとと言われたら「ですよね~」(白目)になるしかないんでお願いします。流行りのダンジョン配信ではないからやっぱり厳しいか……。

 

 欲張らせてもらうと文字付のレビューが一番うれしいです。

 少しでもよかったなと思ってくれたら、「よかった」の一言でもいいんで、どうか、一度★を付けた人も再考を

 

 と、作品のためとはいえ、うっとおしい★クレクレ、フォロークレクレを長く書きましたが、そろそろあとがきだけで一話分書いてしまいそうなので、終わります。それぐらい作者もこの作品に思い入れがあって続きをすごく書きたいんだなとでも思ってくれればうれしいです。(リメイクしたぐらいには)


 ではこれからも頑張っていくんで。

 

 チャンネル登録フォロー高評価お願いします!

 

 作者のKAZUでした。

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