第23話 秘境・火狼の裂け目ー1
燃えるような灼熱のステージ。
溶岩が下に流れていて、真っ赤な岩が足場としていくつか存在している。
ステージのギミックとしては面白い。
だが、この不安定な足場で俺はどうやら戦わなくてはならないらしい。
「秘境……ねぇ。見つけたらラッキーのはずだけど……これはちょっとアンラッキーか?」
【エンカウント! 炎の巨人ファルムス】
俺が入った途端、溶岩からゆっくりとよじ登ってきた大男。
巨人というよりは大男ぐらいのサイズだが、おそらくネームドボス。
勇者の試練で戦ったあいつらと同格ということだろうか、いや、さすがにあれと同レベルではないだろう。
ノーマルでも強さに差があるようにネームドでも差がある。
どちらかというと強さよりレア度の方を表しているのかな?
「ウォォォ!」
疑問に思いながらも、その叫び声とともに戦闘が始まる。
ふむ、一撃もらえば即死。何度でも挑戦できるような気もするし今は様子見に徹底するべきか。
と一瞬思考が日和散らかした瞬間、俺は自分で頭をたたく。
バカか俺は。
危ない危ない、死んでもいいからって思考がゾンビになっていた。
こんなんでは縛りプレイヤーの名が廃る。緊張感を持て。
あのリオンって子に何を偉そうに説教垂れた? 全力で遊べ、この世界を。
真剣に遊べ、全力で遊べ。
「よし、じゃあリスナーに宣言します。俺ここ負けたら二度ときません。もしそうなったら誰か攻略しちゃっていいよ」
――――コメント――――
・ま?
・秘境のレア度わかってる?
・縛りプレイここに極まる。
――――――――――――
自ら死ぬことはまぁ許す、検証だったり好奇心だ。
それもゲームを楽しむ一つの要素なのだから。
でも戦闘で、死ぬのは、だめだ。
何度でもリセットできる世界だ。
失敗してもやり直せばいいだけの世界だ。
でもだからこそ。
「真剣勝負とは、命を賭けるという意味よ!! きぇぇぇ!!」
それこそがパンツの勇者の勇者道。
俺は両手に剣を握る。
突進してくる炎の巨人、攻撃はそれほど早くはない。奇声を上げながら俺も立ち向かう。
これぐらいなら余裕で躱せ……!?
直後俺のHPが少し減った。
一切攻撃を受けていないのにだ。だが原因はすぐに判明する。
HPの横には火傷のような火のマーク、状態異常を表しているのだろう。
「近づくだけで火傷状態か……長くは戦えないと」
少しずつ減少していく俺のHP、2秒ほどで1ダメージ。
なら200秒ほどしか猶予はない。
のんびりと戦っている暇はないようだ。
なら勝機はやはり、ここだろう。
俺は炎の巨人の胸元へと攻撃を躱しながらダイブ・
――そして一閃。
「ガァァ!!」
HPが一割ほど減少、なるほどそれほど強くないか。
すると炎の巨人が体をぐっとためモーション、勘だがおそらくこういうモーションの後は。
俺は急いで距離を取って集中する。
直後巨人が体を大の字に開いたかと思うと、炎を帯びた石が四方に飛んでいく。
やはり今のは範囲攻撃、速度はそこそこ100キロぐらいか? でもそれぐらいなら。
「小学生でもスタンドまで飛ばすわ!!」
俺は両手の剣で、その岩を次々と打ち砕く。
強力な全体攻撃、セオリー通りならばこのあとは。
「――隙あり!」
やはり一瞬の硬直、ボーナスタイム。
連続で切り刻み、大ダメージを加えた。
それからも俺と巨人の攻防は続く、しかしさすがは神ゲー、基本に忠実。
この程度のボスはいやらしい逆張りはなく、オーソドックスで、だがハイレベルな攻撃のオンパレード。
しかしむしろそれぐらいが大好物よ!
……3分後。
【炎の巨人ファナリスを撃破! 1000スカイコインを獲得! 紅蓮鉱石×10、紅炎宝石×1を獲得!】
「まじか! 今ので1000スカイコイン!? 一気に小金持ちになったな……」
まぁまぁな強敵だったが、どうやら結構おいしい敵だったようだ。
ゴブリン1000体分ものお金、しかもえーっと?
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・紅蓮鉱石
レア度★★★(レア級)
純度の高い溶岩が魔力で固まった結晶。
武器の素材として重宝される。
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・紅炎宝石
レア度★★★★★(エピック級)
純度の高い溶岩が魔力で固まった結晶が、気の遠くなるような長い年月を経て宝石となったもの。
武器の素材やアクセサリーとしても重宝される。
売却すると10万スカイコイン。
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「レアアイテムきたぁぁぁ!!」
レアとスーパーレアの一つ上のエピックだぞ。これはなかなかやばいのでは!?
真っ赤な溶岩のような石と、完全にルビーのようなこぶし大の宝石。
素材として優秀なようで、これは良い拾い物をした、後でビビヤンに見せてみよう。
というか売ったら日本円にして一万円!? おいおい、これゲームだぞ!? うひょぉぉぉ!!!
こんなとこで一万円稼いでしまうとは、滅茶苦茶テンション上がるな。
ちょっとだけ踊ろう。ヘイヘイヘイ!
ガガガガ。
俺が小躍りしていと見苦しいと言わんばかりに奥の扉が開いた。
どうやら進めるようだ。
俺はそのまま溶岩の海の上の岩をほいほいっと進み、奥の部屋へ。
そしてそこには。
「……ワンコ?」
真っ赤な魔方陣の上でぐったりしている子犬がいた。
【エンカウント! 火狼:亜種(幼体)※名無し】
あ、あれもユニークモンスターなのか。
俺はそのワンコを見る。
柴犬の子供のようだが、真っ黒なワンコ、俺を見るとぐるると威嚇しながら立ち上がるがどうやら体力がないようでべたっと地面に倒れる。
「クーーン……」
さて、これは……ちょっと討伐する気にならないぞ?
正直持って帰りたい。
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