第19話 鍛冶クラン・ヘファイストスー2

 すみません、俺は女の子が好きなんです。

 できれば妹みたいな家庭的で、可愛くて、普段はちょっと冷たいけど実は優しいみたいなそんなタイプが。


「ごめんなさい!」

「あら、何を勘違いしてるのかしら。鍛冶師としてよ?」

「……すんませんでした。見た目で判断してました!!」

「ふふ……よくってよ。私は気に入ったメンズの専属鍛冶師として今は活動してるの。クランとしての仕事は基本受けないわね」

「そうなんすね。えーっと俺の名前は……ブルーです」


 それを伝えた瞬間ビビヤンの目が見開く。


「そう……大丈夫。顧客情報は守るわ。でもそう……あなたが……」


 すると俺のコメント読み上げ機能でコメント欄が湧いている。


――――コメント――――

・ビビヤンの専属ってま!?

・プロゲーマーとかそういった人しか契約しないのにな。

・というかあまりに自然体だけど、この人ずっとパンいちですからね?

・ビビヤンってリアルでも相当有名な刀鍛冶らしい。

――――――――――――


 どうやらビビヤンさんはとても有名な人らしい。

 断る理由もないので俺はフレンド承認する。

 これでビビヤンとリオンの二人が俺のフレンドになったな、そろそろ龍一も入れてやるか。

 何やってるのか知らんけどメッセージ送っても未読スルーだが、まだゲームやってんのかな?


「じゃあまずはヒアリングからしましょうか」

「ヒアリング?」

「えぇ、ただ依頼された者を作るのは三流、それを完璧にこなしてやっと二流。一流は顧客の潜在的ニーズを掘り起こすものよ」

「ほぇー」


 どうやらこのビビヤンさん、相当にプロ意識が高いらしい。

 それに武器に関する知識も豊富で、滅茶苦茶に助かる。


「ちょっとこっちにいらっしゃいな」

「うぃっす」


 そういって案内されたのは訓練場? 武器の試し切りでもする場所なのかな?

 

「じゃあヒアリングしましょうか。あなたに一番適した種類の武器を。その辺の装備は★1だから好きに装備して」


 するとビビヤンがスカイパッドを操作して、武器を装備。

 大きな大剣を構える。

 あぁそういうこと。ヒアリングってもっと問診票的なのを意識してたわ。あれね、体に聞きますってことね。

 了解、俺も色々試したかったんだよ。とりあえず片手剣あたりからいくか。


「うふ♥ 楽しみね。では……ディエル!!」

「お?」


 俺の眼の前に決闘を申し込まれましたのメッセージ。

 スカイディアではPKはできない、だがこのように決闘モードならば模擬戦闘ができるのである。

 ちなみに全損しても死なないので、力試しにはちょうどいい。とビビヤンが言っている。

 ならちょっと全力出しちゃいますか。


 俺は落ちていた鉄の片手剣を構えて、ゆらりとビビヤンを見る。


……数分後。


「…………うふふ、さすがね……私のセンサーは間違ってなかっ……た。ガクッ」


 ビビヤンをフルボッコにしてしまった俺。

 このゲームの戦闘ってエフェクトとか衝撃はあるから痛みは無くてもまぁまぁトラウマ残るのよね。

 

 ビビヤンは結構強かった。

 どれぐらい強いかというとダイヤモンドぐらいかな。

 ダイヤモンドとは何かというと、俺が龍一と結構やりこんだ格闘ゲームに、スマッシュシスターズ、通称スマシスというものがある。

 最終的に日本サーバー不動の1となった龍一、その龍一とだけひたすらとやったのだがあいつがダイヤモンドぐらいの時ぐらいはヒビヤンは強かった。だが、残念だったな、俺は日本鯖一位の時の龍一に勝ち越している。


「ふぅ、でも見えたわ。あなたのスタイル。ずばり、これね!」

 

 そして手渡されたのは剣二本?

 

「あなたは完全に宮本武蔵タイプ、二刀流の剣豪ね。ちなみに私は色々プロファイルして有名な剣豪のタイプを当てはめるのだけど、例えばドラゴン君って知ってる?」

「はい、知ってますよ!」

「そう、あの子なんてのは佐々木小次郎タイプ。他にも色々なタイプがいるけどあなたは間違いなくそれね」


 俺は二本の剣を握りしめる。

 うん、しっくりくるし、結構俺は二刀流が好きで、色んなゲームでできるならやっている。

 それをこの短時間で見抜くとはさすがビビヤン、有名なだけはある。

 

「その鉄の剣はプレゼント、で小さな骨を10個頂いてと。じゃあ打つところ見ていく?」

「いいんすか!?」


 トントンカンカン!


 ものの数分で、骨の剣が完成した。

 ビビヤンが言うにはレア度が上がるほど時間がかかるらしいが、この最低レベルの武器ならばビビヤンのスキルレベルなら適当にやってもミスることはないらしい。

 それでも工程はしっかり行っていた、早すぎて何やってるか全然わかんなかったが。 


「じゃあまた素材ができたらDM飛ばして、どんどん強化しちゃうから」

「了解、あ、料金は……」

「ふふ、初回だけはサービスしてあげる。あ、最初に行くなら私的には火山地帯がおすすめよ。鉱石もたくさんほれるし、モンスターの素材も集まるしね。あ、ピッケルもあげちゃうわ」

「圧倒的感謝!」


 ピッケルか、これで火山の鉱石を掘るのか。

 うーん、嫌な記憶が蘇ってきたぞ? 護石……ガチャ……う、頭が。

 とはいえ、鉱石というのは凄く男としてワクワクするな。

 無機物系かモンスター系の武器、どっちを育てるか悩んでいたが、両方育てるという選択肢は考えてなかった。

 んじゃ、最強の装備目指して頑張りますか!


 そして俺はビビヤンに感謝を述べて、鍛冶クランヘファイストスを後にした。

 転移門をくぐり、地上へと戻る。

 鉄の剣と骨の剣を装備して、防具はなし。

 

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・鉄の剣 攻撃力:5

レア度★(コモン級)


ただの鉄の剣、殺傷能力は低い。ほぼ鈍器。

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・骨の剣 攻撃力:5

レア度★(コモン級)


下級モンスターの骨から作り出した剣、脆い。

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 うん、コモンらしくテキストもひどいな。

 二秒で考えたような説明だが、まぁ最低ランクだというのがひしひしと伝わってくる。

 俺はスカイパッドでマップを開く。

 ここから火山地帯までは、結構距離があるようだが、まぁ時間はいくらでもあるからな。

 

 そして俺は火山地帯ヴォルカニカへと向かった。


 そこにこの世界の最強の一体がいるなども知らずに。


 そしてもう一人。


「もう我慢できない、ブルー君。待っててね」


 とんでもない奴が俺を狙っているとも知らず。

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