第17話 ちょっとしたシステム考察

 さて、ではそろそろ天空のトワイライトのシステムを考察していこうか。

 Wikiとかみればわかるんだろうけど、俺は結構やりながら理解していくタイプなのだ。

 龍一からは非効率と罵られるが、効率=楽しいではないんだよな、俺は攻略本片手にプレイするタイプではない。


 といっても完全に行き当たりばったりではない。

 さすがに今のご時世のゲーム、完全に初見ではどうやっても見つからないだろうってアイテムやクエストなんかもあるしな。

 

 だが、まずは俺の目標はアイテム:小さな骨を10個だ。


「お、いたいた。小鬼ことゴブリンさん……うん、緑! 弱そうだぜ!」


 ここでこの世界で俺が理解していることを整理しよう。

 この世界は基本的に、レベルという概念がない。

 その代わり装備で強くなるというシステムを採用しており、レア度が一定以上のものはプレイヤー間で受け渡しができないようになっている。

 先ほどリオンからアイテムを受け取ったが、レア度★1、つまりコモンだから可能だったのだろう。

 だから俺が龍一から最強装備をもらって即座に一線級ということはできないし、一度所有者が決まってしまった装備は地面に捨てようとも他プレイヤーは手に入れることはできない。ただしデスペナでロストはあるけどな。


 なるほど、ちゃんとこのゲームを遊んで欲しいという運営の意図を感じるな。

 あとスカイディアに売っている武器や防具は基本的に一番初期のレア度★1の装備だけだ。

 徐々に解放されていくのかは知らないが、つまり課金で強くはなれませんよってことだな。


 じゃあどうやって強くなるか? 


 それは二パターンある。


 世界を探検し、強い武器を手に入れる。

 もしくは、素材を使って武器を強化するだ。

 

 スカイディアにある鍛冶系スキルを上げた人が在籍しているクラン――鍛冶クランに武器と素材とお金を渡せば、装備を作ってくれる。

 アイテムの受け渡しはできないが、鍛冶による強化は、所有者の俺が許可を出せばできるらしい。複雑なシステムだ。


 そこまでいけば完全に仕事みたいなものだが、強化自体は一瞬なので結構な稼ぎになるそうだ。

 もしくは自分で鍛冶スキルを上げるかどうかだな。

 スキルについては正直まだ俺は詳しくないが、熟練度によって上げることができるそうで、ひたすら鍛冶をやり続ければ鍛冶スキルが向上し、より強い武器でも強化できるようになる。料理をたくさんすれば料理スキルが向上して、できた料理によるバフ効果が上昇する。釣りスキルから採掘スキルと、一体どれだけあるのか知らないが、基本的に時間さえ使えばすべてのスキルは習得できるようになっているらしい。ちなみに俺は今は一切のスキルなしですけどね。


 ただし、戦闘に関するスキルはこの世界にはない。

 

 戦闘は基本的に、スキルなしで自由度が高い肉弾戦だ。

 これも運営のこだわりなのか、魔法なんかはないと聞く。格闘ゲーマーがはまるわけだ。


 しかしシステムのアシストが至るところに入るので、それを駆使して戦う感じだな。俺はもう大分慣れたが、フルダイブ系のゲームが初めてだと苦労するだろう。

 本来、生身で化け物と戦える身体能力は人間にはないが、そこはゲームらしく圧倒的な身体強化バフによって、超人のような動きがこの世界ではできるのだ。

 

 この辺がリアルで武芸の達人でもなくても、ゲームでは達人になれるゆえんかもしれないな。

 と、チュー爺に色々教えてもらったシステムの考察を振り返りながら俺はスカイパッドにいくつかメモをする。


 ――――コメント――――

・鍛冶クランは、スカイディアの北西にあるクラン「ヘファイストス」がおすすめ

・ちな、この世界はモンスター系の武器か、無機物系の素材の武器だけど初心者はモンスター系がいいよ

・最初は何の武器からいく? やっぱり剣?

――――――――――――


 コメントでいくつか意見をもらう。

 俺の数少ないリスナーは、どうやら結構このゲームやりこんでやがるようだ。

 鉄系と骨系で別れると思ってたが、そうかモンスターの素材系か、それとも鉱物とかの無機物系の二択なのか。

 了解了解、どっちも捨てがたいがまずはモンスター系からいくか。どうせどっちも手に入れるつもりだが。

 

 そして先ほど発見したゴブリンっぽい小鬼へと背後から忍び寄る。

 チュー爺も言っていたが、最初はこの辺のモンスターを狩って骨系統を集めるのが良いだろうといってた。

 つまりモンスター系ということなのだろう。確かに鉱物とかはまだまだ集めそうにないしな。


「ぬん!!」

「ぎゃ!?」


 所撃を背後から木の棒で一撃!

 

【エンカウント! グリーンゴブリン!】


 俺の画面に、モンスターとの戦闘開始のメッセージ。

 ノーマルモンスターはこのように、種族名が流れるのか。


 緑+ゴブリンでグリーンゴブリンとかいう安易すぎるネーミングの俺の腰ほどのゴブリンがギギギとこちらを向く。

 俺と同じく木の棒を持って、こちらを見て涎を垂らしている。

 すでにHPは半分を切っているのでやはり最弱か、叫びを上げながら俺に向かって走ってくる。

 上段からの振り下ろし、あまりに遅い。あくびが出るぜ。

 俺は初見で余裕ですおとジャスガを成功させて、一瞬の硬直をしたゴブリンを背後から一撃。

 するとポリゴンとなってゴブリンが消滅し、死体も残らない。


【グリーンゴブリンを撃破! 1スカイコインを獲得! 小さな骨×1を獲得!】


 お? ほんとにスカイコインもらえるんだ。10スカイコインで1円だからえーっと……0.1円かな。世知辛い。

 まぁ初期モンスターだしそんなもんだろう。それよりも小さな骨一つか。いいね、あと9個。


 周りを見渡せばいくらでも湧いてくるグリーンゴブリン達。

 お、あそこなんて集落か? 5体ぐらいのゴブリンがたむろってるぞ。

 おっしゃ突撃ぶちかますか。

 そして俺は勇気とは何かを体現するべく、パンツ一枚と木の棒で、蛮族プレイをぶちかます。

 もはやどちらがゴブリンかもわからないが、とりあえず片っ端からゴブリンを狩りまくった。


 普通の戦闘がこれほど楽しいとは、やはりこれが神ゲーか。

 気づけばこの辺のゴブリンを粗方平らげて、俺の所持金は50スカイコインで五円チョコが買えるほど。

 一時間ぐらいかかったので稼ぎとしては最低時給も真っ青で、独裁国家でももう少しまともだぞと思いながらも楽しかったのでOKです。


 よし、一旦スカイディアに戻って鍛冶クランに顔を出してみようかな。


 新しい武器か、さてどうしようかな。


 やはり宮本武蔵スタイルで両手に剣をがロマンだよな。


 ――――コメント――――

・戦闘マジでうまくない?

・これ本当に勇者説あるな。

・いや待て、もう少し様子を見たほうが……

・拡散してみたけどセンシティブ判定されましたww

・裸だしな。

――――――――――――

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