第15話 天空のトワイライトを楽しもうー4
あれから接続数が3になった。
これが有名コンテンツの力か。
少しばかりコメントをくれるのでちょっと配信が楽しくなってきたな。
本当はブルーって証拠を集めて拡散すればもっと人気になる気もする。
が、それは俺の配信者としての実力じゃない気もする。
だから俺は配信内容、つまり俺のプレイで気に入ってもらえるようにするために積極的にブルーとは言わないことにした。
配信者として本当に生きていくならそれが必要だと思ったからだ。
まだ二年も卒業までは時間があるからな、地道にやろう、というかあまりに初心者すぎていきなりバズっても怖い。
これぐらいの少人数のほうが安心する。
「うし、じゃあ初めて地上おりてみますか!」
――――コメント――――
・ビギナーがんばれ!
・というかなんで裸?
・↑縛りプレイらしい
・めっちゃ増えたよね、ブルーって名前の偽物。
・しゃあない、アクセス数稼げるし。でもこの人タイトルは違うけどね
・セクシー裸配信だしなw
――――――――――――
広大なスカイディアの東西南北の端、この国に四つある転移門の一つに俺は来ている。
アーチを描くような石造りのまるで遺跡の真ん中に青い光が渦巻いている。ドラクエかな?
スカイパッドをこの転移門にはめ込んで、転移先を選択し、光りに触れると転移するらしい。
転移先というのは、この転移門と呼ばれるもので、これは地上の至る所にもあるとのこと。
自分のスカイパッドをはめ込むことで解放でき、一度解放すればどこからでも転移門を使えば転移できるという仕組み。
まぁルーラのようなものだな、ただし転移門がないとダメなので戦闘中のルーラはできない、まぁデスルーラはできるが。
自分が行ったことのない場所はいけないようになっているので、他の人と一緒に最難関エリアへと転移とはいかないようだ。
俺のスカイパッドのマップ機能を選択するとたった一つだけ転移できる先がある。
このスカイディアの真下にある転移門らしい。
よし、じゃあこの転移門でその転移門へと転移しようかな……と一般人は思うだろう。残念でした、浅はかなり。
このゲーム落下ダメージはないんですよ、さすが天空族。落下するときは最初と同じようにふわっと浮くらしい。
チュー爺がいってたが、俺達は天空族と呼ばれ、かつては空を飛ぶ力を持っていたとのこと。今は失われてしまったが、なんか加護的な何かで落下のダメージだけはないらしい。
ゲームシステム上その方が都合良いのかな? なんて邪推してしまうが、そう聞いたならやることは一つよ。
俺はスカイディアの端っこまで走る。
道中半裸の変態だと笑われたが、事実なので仕方ない。今はまじで身ぐるみはがされている状態なので着る服もまじでないからな。
俺のアイテムボックスはまじで空っぽ、木の棒すらこの国には落ちておらず。
まぁ下界に行けば落ちているだろう。
「うひょーー。こえぇぇぇーーーー」
スカイディアの端っこ、柵を乗り越えて下を見下ろすと、雲よりも高いスカイディアからうっすらと見える地上。
俺はその端っこに立ち、目を閉じる。
空を浮かぶ島、そこから落ちるならば我が国に伝わる呪文を唱えなければ非国民と石を投げられるからな。
えーそれでは、皆さん。ご唱和ください。
「バ〇ス!」
その掛け声と同時に俺は空を飛んだ、これでスカイディアが崩壊したら爆笑なのだが、まぁそんなことはないし、経済的損失で世界恐慌まっしぐらだろう。
しかし浮遊感が軽減されているとはいえ、毎度ながらこれはちびりそうになるな。
でも気持ちいい。空を飛ぶってこんな気分なんだろうか、まぁ落下してるだけだけど。
グングン地上が近づいてくる。
あ、あれが転移門か。確かに真下にあるな。後うっすらと見えるのは、人かな? 10人ぐらいの集団。
…………あれ? これやばくね? 直撃コースじゃない?
俺はなんとかならんかと空中で平泳ぎしてみるが、全く移動しない。
クロールは、やはりだめか。うん。どうやら、俺にはなすすべがないようだ。すまん、許してくれ。故意ではないんだ。
「うぉぉぉぉ!!! あぶなーーーい!!」
「え?」
俺は真下にいた集団へと落下してしまった。
地面ぎりぎりでふわりと空気のクッションが助けてくれたが、その反動でプレイヤーの一人とぶつかり、回転しながら地面を転がる。
「いてて……ん?」
むにむに。
なんだろうか、この掌に吸い付くようなやわらかい電脳的でありながらも官能的な感触は。
むにむに。
あぁ、そうか。まさか俺にジャンプ系鈍感ラブコメ主人公の才能があったとは思わなんだな。
一体どれほどの確率なのだろうか、事故で押し倒してしまった相手がめちゃくちゃに美少女で、さらにその胸をラッキースケベで揉みしだくというのは。
気づいて顔を上げたときには、すでに俺は10揉みぐらいしてしまっていた。
その子のお腹に埋めていた顔を上げれば、今にも沸騰しそうなほどに真っ赤な顔の美少女プレイヤー。俺は人生で初めて美少女の中身がおっさんであればよかったのにと思った。
「あ、あ、あ、あ…………」
「言いたいことは分かる。これから起きることもわかる。だがここはぐっとこらえて落ち着いて聞いてほしい」
俺は両手を上げて、降参のポーズ。
わなわなと震える美少女は、その胸を手で守るように隠しながら涙目で俺を睨んでくる。
どうやら本当に怒っているから見た目は違うとしても性別は同じのようだ。
ゲームのアバターにしても滅茶苦茶に美少女の、つまり女子高生ぐらいの女性だった。長い髪はサラサラで、キリリと力強い目は属性を付けるなら生徒会長タイプだろう。
まじめで、校則には厳しく、エッチなことは絶対にダメと禁止する。でも薄い本に登場するならば野太い声でとんでもないことになっちゃうタイプの子だな。俺は正直めちゃくちゃ好みだ、清楚系が嫌いな男なんていない、そうだろみんな!。なんて光の速度で俺の思考が回るのだが、回転する方向が明後日の方向を向いている。あまりのことに動揺しているのか? ステイステイ。静まれ、ブルー。お前はクールな男だろ。まずは挽回方法を考えろ。
なんせパンツ一枚で美少女に覆いかぶさり、胸を揉みしだくという少年漫画ですらもう少し自重する行為をした後だ。
完全に性犯罪者である。
アカウント永久BANすらもありうる。
だからとりあえず第一声は。
「大変申し訳ございませんでし――」
「いやぁぁぁ!! 変態!! しねぇぇぇぇ!!!!」
叫ぶ少女、俺は蹴られて宙を舞う。
だが甘んじてどんな罵倒でも受け入れようとも。土下座ぐらいは全然します。
だから運営に通報だけはしないで、まじでハラスメント判定受けてアカウント永久BANされてもおかしくないから。
俺は誠心誠意の謝罪の意を込めて、こういうときのお決まりの全力平手打ちぐらいは受け入れようと目を閉じた。
「ゴホッ!?」
気づけば腹を剣で貫かれていた。
確かに悪いとは思いますけど、いきなりぶっ刺しますかね?
もう少し話を聞いて欲しかった……あぁ、俺のHPゲージが一瞬で減っていく。
パリン。
そして謝罪をする暇すらなく、俺はポリゴンとなって砕け散った。
――――コメント――――
・これは全面的にお前が悪いww
・www
・ムカッ。私のほうが大きいもん。
・↑ガチ恋沸いてて草
・今のってもしかしてリオン様?
・多分……ちょい待ち、調べる。
・あ、そうだわ。画像のってる。滅茶苦茶可愛いけど、本物の顔らしいよ
――――――――――――
気づくと俺は女神様っぽい人の前へ。
どうやらこのゲーム、プレイヤーキルは普通にあるらしい。
勇者死にました、すみません。女神様。俺もしかしたら資格なしかもです。
『ふふ、勇者ブルーよ。次は頑張るのですよ』
お、この女神様もNPCとして会話に補正が入るのか。すまんな、こんな勇者で。
変態と間違われて殺されましたよ。いや、まぁ状況だけいうなら変態でしかないし、現行犯逮捕されてもおかしくはないのだが。
ということで、どうですか女神さん、最初の民族衣装みたいな奴もう一回くれませんかね? 嫌でしょあなたもこんな半裸の勇者。
と思ったらやっぱりそのままスカイダイビングさせられた。ちくしょう、また素っ裸かよ。
着地した俺は一目散に転移門へと全力ダッシュ。
すると先ほどの美少女が転移門からスカイディアへと戻ってきていた。
俺は全力ダッシュしながら、地面から煙が出る勢いで鮮やかなスライディング土下座をかます。
「すんませんでしたぁぁぁぁ! 事故なんです! 通報だけはゆるしてつかぁーーさい!!」
――――コメント――――
・ってか今、女神アルテナさん、勇者っていった?
・聞いてなかった
・いったような気がする。
・……こいつもしかしてマジで勇者? 裸なのに?
――――――――――――
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