第6話 勇者の試練ー3
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・忘却の龍王刀 攻撃力:100
レア度★★★★★★(レジェンド級)
かつて龍族の王が使っていた龍族のみが鍛えられる刀。
錆びてもなお空間を歪ませるほどに帯びる魔力は、この世界最高峰の一振り。
その一撃は大地を割り、空を裂き、運命すらも切り開く。
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うぉ!? インフレ!? 滅茶苦茶強い武器手に入れたぞ!?
鉄の剣なんてコモンで★1だったのに龍王の刀!? なにそれ、レア度レジェンド級ってなに!?
俺がその刀を手に入れてゲーマーらしくテンションが上がっていると直後、俺の視界の頭上には、白い文字が表示され、俺はそちらに集中する。
【技の試練 雷光のサム=ライ】
完全に侍じゃねぇか、名づけが安易すぎるだろとツッコミを入れる暇もなく、目の前の着物を着た骸骨侍も剣を抜いた。
HPゲージが表示されるが、なんとすでに残り一ミリ。
一撃で倒せるという意味だろうか。俺が考察している時だった。
その骸骨侍は居合切りのポーズをする。
――ぞわっ。
悪寒がした。
ずっとゲームをやってきた経験からわかる。
俺はこの後死ぬ。
このまま何もしなければ死ぬ。
そんな初見殺しの一撃を向けられた時と同じ感覚。
普段ならもらっていたかもしれない、でも今は20時間のウォーミングアップ後だ。
体も心も準備万端、覚醒し、テンションもハイになっている。秒で集中しその骸骨を見つめ続ける。
そして次の瞬間、紫色の閃光が見えたかと思ったら。
ガキン!!
俺は吹き飛ばされていた。
何とか受けることには成功していたが、受けたと言うより構えていたら当てられたというほうが正しいか。
一応反応はしたつもりだが、なんか勝手に体が動いたという感じで自分でも何をしたかはよく分かっていない。
「はぁ!?」
それでもガードとしては成功したはずなのに、俺のHPは既に半分を切っていた。
貫通攻撃。
つまりもう一回受ければ死亡、もしかしたらまたあの20時間耐久レースからスタートなんだろうか。
そんな鬼畜過ぎる試練はちょっと勘弁なのだが、今の一撃は正直見えなかった。
反射神経や動体視力には滅茶苦茶自信があるのだが、おそらく人の反応速度の限界を超えている。
見てから衝撃が襲うまで、全くの同時。0.1秒以内の刹那の一撃。
とりあえず俺は、振りぬいた後の骸骨侍へと今が隙だと走りこむ。
振り下ろす日本刀、これで終わり? さすがにぬるすぎる。と思ったらやはり目にも止まらぬ速さで居合抜き。
俺の一撃が弾かれた。
「ジャスガ!?」
【JUST!!】という文字と共に俺の日本刀はその侍に弾かれて一瞬硬直し、HPが少しだけ削られた。
硬直で動けない俺はやばい殺されると思ったが、なんか蹴られた。
HPはそれほど減ってないことからダメージはほとんどない蹴りだった。
「……あれ?」
そして骸骨侍はもう一度居合のポーズを構えた。
その瞬間、俺はこの試練の意図に気づく。今のは生かされたのだろう。屈辱だが、おそらくそうだ。
どうやらこのゲーム、ジャストガードがあるらしい。
ジャストガードとは、ベストなタイミングで攻撃をガード、または攻撃を当てて弾くことだ。パリィと呼ばれたりもするな。
このゲームでいえば、今俺が切りかかったときにシステムの攻撃アシストが入り、攻撃モーションが始まる。
その時俺の持つ日本刀が一瞬光ったがその攻撃モーションに攻撃を後出しで合わせることでジャストガードが発動する。
つまりこの試練、あの雷光のような速度の一太刀を受けきることが突破と見た。
俺の長年のゲーム勘がそういってる。
というか技の試練っていうぐらいだからそうだろうな。
HPが半分減ることから、おそらくチャンスは二回。
失敗したらおそらくは力の試練からやり直し。
光の速度の一閃に、タイミングよく攻撃を合わせる。
それこそ神業のような芸当だろう、でも俺は思った。
なんて親切設計なんだと。
一度技を見せてくれる。
さらには、攻略のヒントまでくれる。
ここまで丁寧に導かれて失敗しましたでは、縛りゲーマーとしての名が廃る。
俺は日本刀を骸骨侍と同じように居合のポーズで構えた。
先ほど一度技は見た、一度見た技なら何の問題ない。俺は一度見れば初見殺しはもう攻略できる。
目を閉じながら頭で、先ほどの一撃をイメージする。
トントン……シュッ。よしこのタイミング。
頭の中でタイミングを決めて、居合のポーズでにらみ合う。
先に剣を抜いたのはサム=ライ。
トントン……。
紫色に輝く紫電一閃、一瞬の煌めき、光速の剣技が俺の胴体を真っ二つにしようと迫ってくる。
見つめる俺は口をだらしなく開けて、集中する。
20時間に及ぶウォーミングアップは十分だ、体中の血が沸騰する、緊迫感が気持ちよい。
全身の毛が逆立って、そして。
――見えない刃をはじき返す。
【JUST!!】
俺の成功を伝える黄金色の文字が空中に現れて、JUSTガードは成功した。
よかった。結構ひやひやしたが、成功したようだ。
どうやらこのゲームのジャストガードは、されたほうに多少のダメージが入る仕様で、先ほど俺もくらった。
つまり、骸骨和風侍のその一ミリしかないHPがジャストガードの成功による反動で減り、完全に0になる。
その習慣、骸骨はさらさらと灰となって消えていく。
俺はそれを見つめていた。
笑っている?
どこか嬉しそうに灰になって消えていく侍。
負けたのが嬉しいとでも言いそうなほど満足気に消えていく。少しなんか哀愁が漂っていたが一体この試練はなんなんだろう。
するとやっぱり俺の眼の前にスカイパッドが突如現れて、勝利を告げた。
『プレイヤー:ブルー。技の試練クリア。奥にお進みください』
ここまで来たら最後までクリアしたくなってきたな。一体どこまであるのか
しかも滅茶苦茶良い武器も手に入れた、これは龍一に自慢してやろう、あいつ絶対悔しがるぞ。がはは……。
パリン。
「……………………はぁ?」
次の瞬間、忘却の龍王刀はポリゴンとなって砕け散った。
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