第5話 勇者の試練ー2
苦節4時間、なんとこの糞固ゴーレムを殴り続けていたら木の棒がポリゴンとなって砕け散りました。
まさか武器に耐久力があるとは思ってませんでしたね!
いやだとしたら木の棒にしては良く持った方だよ。
ならば素手だ、VRヤンキーゲームで極めたこのケンカ殺法でと殴って見たら、なんと0ダメージ。
永遠の0が続く状態でかれこそ10分ほど殴ってみたが、あ、これ武器ないとダメージ通らないんだ。木の棒って結構偉大だったんだな。と気づいた。
さすがに武器もなければ退路もない。
にっちもさっちもいかなくなったので、俺は合掌しながら目を閉じる。アーメン。できれば一撃でおなしゃす。
プチッ。
俺はゴキブリのように潰れて死んだ。
すると、あぁ死んでしまうとは何事ですとでも言いそうな女神様の前で俺は目を覚ましていた。
どうやらこのゲーム、死んだらここで復活して、再度スカイディアにスカイダイビングらしい。
最初の泉に戻ってきた俺は、とりあえず武器がいるとチュー爺に頼ることにした。
「チュー爺! 武器が欲しい!」
俺は広場を永遠に徘徊し続ける悲しきチュー爺に武器を手に入れるにはどうすればいいか聞いてみる。
すると、武器屋なるものが近くにあるらしいのでマップを見ながら向かうことにした。
結構なプレイヤーで賑わっているこれぞ武器屋というような斧や刀など所せましと置いてあるファンタジーっぽい店内。
店員さんはゴーレム? そういえばこの国ゴーレムみたいなマネキンがその辺たくさん歩いて仕事してたけど、チュー爺以外のNPCって見てないな。
まぁそういう世界観なんだろう、正直何もわかってないが。
俺はゴーレムに話しかけてみる。
「いらっしゃいませ! 何をお探しですか!」
凄い機械音の抑揚のない声でゴーレムは接客してくれた。
「なんか武器ありますか?」
「ご予算は」
俺の予算は……うん0ですね。スカイパッドの俺のステータス画面には、0スカイコインって書いてるわ。
なんか売れるアイテムは……うん、なんもないですね。課金……いや、あんまり課金はしたくないんだよな。
ん? いや違う、俺には売れるアイテムがあるじゃないか。そうだ、これで!
……
俺は武器屋を出た。
日差しが眩しい、なんて開放感なんだろう。ここは天国に近いからかな。
周りの視線、心地よい緊張感は俺のテンションを高揚させる。
しかし、あれだな。あの人達は本物の人間だと思うと、いつもと同じ格好でも何か違う扉が開きそうだな。
「ふふ、なんであの人パンツ一枚?」
「見ちゃいけません。変態よ」
そう、俺は今パンツ一枚である。
アバターは俺の素顔でもあるので、俺は今素顔を晒しながらパンツ一枚で街中を歩いているようなものだ。完全に事案である。
だが、説明させていただきたい。
決して俺はそんな趣味があるわけではない、確かに目覚める気はするが釈明させていただきたい。
あの武器屋で一番安い武器、鉄の剣が100スカイコインだったのだ。
だが俺には初期の民族衣装しかない。
あとは分かるな、そう全部売った。これで鉄の剣が3つほど買えた。
これで途中で壊れても何とか問題ないだろう。
そう、これは仕方なかったのである。
強調して言うが、決してパンツ一枚になりたかったわけではない。
俺の正装みたいなところはあるし、むしろ気合が入るという気はするが決して故意ではないのである。
そして俺はもう一度あの城へと向かうことにした。
また一時間ほど苦労しながらも俺はまた勇者の試練へとたどり着く。
【力の試練 金剛石像フェルゼンハルト】
前と全く同じ金ぴかゴーレムが動き出す。
しかし前と違って俺は鉄の剣を持っている、あとパンツ一枚。
これで2ダメージぐらい与えられたなら、前より二倍速いはず。
なんなら5ダメージぐらいいくんじゃないか? なんせ木の棒よりも鉄のほうが圧倒的に強いからな。木の棒の攻撃力が1で、鉄の剣が5だ。
単純に5倍ダメージという計算ではないだろうが、相当強いぞ。
そんな期待を込めて、俺は剣を振るった。
1!
「…………」
~きっちり20時間後。
「ぬぁぁぁあ! これで終わりじゃ糞ボスがぁぁ!!」
「ゴォォォ…………」
鉄の剣三本目にして、何とか勝利した。
二本の鉄の剣は、砕け散ったが、このラストの鉄の剣でトドメまでいくことができた。
苦節20時間、すべての攻撃を躱し続けて、ヒットアンドウェイ。
ついに金ぴかゴーレムのHPを削り切った、絶対こんなクリア方法じゃないと思うけどまぁ楽しかったからいいか。
すると俺の眼の前にスカイパッドが突如現れて、音声を告げる。
『プレイヤー:ブルー。力の試練クリア。奥にお進みください』
どうやらクリアしたようだが、何かドロップアイテムとかないんですか?
と周りを見渡すがどうやら何もない。
勇者の試練とかいいながら、なんてけち臭いんだと罵倒しながら俺は奥の扉に進む。
同じようにスカイパッドをはめ込めるようになっていたので嵌めるとやはり扉が開いた。
また同じような円形の城の内装をしたバトルフィールド。
俺の目の前には着物を着た骸骨剣士? が地面に突き刺さった剣を持って仁王立ち。
どうやら日本刀のような見た目をしているし、侍的な敵なんだろうか。
さらに、俺の目の前には一本の錆びた日本刀が地面に突き刺さっている。
まるで握れと言わんばかりの構図だが、そういうことね。
俺はすべて理解して、今からタイマンする感じっすねと地面に突き刺さった錆びてる日本刀を握って抜いた。
その瞬間、刀の横にウィンドウが表示される。
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・忘却の龍王刀 攻撃力:100
レア度★★★★★★(レジェンド級)
かつて龍族の王が使っていた龍族のみが鍛えられる刀。
錆びてもなお空間を歪ませるほどに帯びる魔力は、この世界最高峰の一振り。
その一撃は大地を割り、空を裂き、運命すらも切り開く。
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「……インフレ激しくない?」
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