曖昧な気持ち

憧れの人と二人で桜を見た。

高い背は桜の花に馴染んでも溶け合わない。スラリと伸びた背が桜によく似合った。

一房の桜を容易くひと掴みにできそうな大きな手が、薄いガラス細工に触れるようにそっと桜の花びらに触れる。いつもより優しげな表情で桜の句を一つ教えてくれた。そんなところがいいなと思う。

「落ち着いたら手紙を書くよ」

LINEでも何でもあるのにそんなことを言って、彼はこちらを見た。

「背なんてすぐ伸びるさ。俺のお下がりの制服もすぐちょうど良くなる」

桜より彼を見ていた僕の複雑な表情を勝手に勘違いして、彼は僕を励ます。そんなところが。

これを恋と言うのかわからないが、彼のことがたまらなく好きだった。

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短編《桜》 よつ葉 @Kleeblatt3939

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