花は咲く

最後に父と共に桜を見たのは十三の時だった。冬の間は辛そうだったが、春先になったら急に体調が回復して、家族みんなで近所の桜を見た。屋台のりんご飴を父が欲しがったので買ったが、結局いくらも食べられずに代わりに弟が食べた。

「次は藤を見に行こうよ」

十になったばかりの弟が夏までの予定を勝手に決める。母は気が早いと言うが、父は静かに笑って頷いた。

桜が散る頃に父は眠るように息を引き取った。穏やかな最後で良かったと母が言う。弟がわんわん泣いていた。私は泣くタイミングを失ったまま冬を越して、声を上げて泣いたのは次の年の桜を見た時だった

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