私の幸い

桜が咲いたので、君と手を繋いで見に行く。満開の桜と君を写真に撮る。花びらを一枚一枚拾っては、君が花びらを雪のように何度も舞い散らす。ため息を出るほどに満開の桜を見ていると君に手を引かれた。

「何でこの花見るの?」

「綺麗だから」

まだ花見の意味も桜の切なさも知らない君の質問に答えて、近所の団子屋でみたらし団子とジュースを買い、一緒に食べる。君はまだ花より団子の方が良いようだ。

淡い桜色、穏やかな晴れの日、団子の柔らかさに冷たいジュースが喉を通る心地よさ。瞳に桜の映り込む君の横顔。この幸いの日を君がいつかすっかり忘れてしまってもいい。きっと君の手を引く私のための幸いだから。

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