おれは詩人だ




 おれは詩人だ。


 間違いなくな。


 誰にも何も言わせない。


 それは自己申告制度に彩られている。


 文句があるなら殺せば良い。


 そうすれば反対派はいなくなる。


 「おれは詩人だ」


 さっきこの宇宙とかいう真っ黒なふざけた空間に宣言した。


 宇宙の野郎は最初から黙り込んでいるので屑だ。


 それは勝手にやれという意味なのだ。


 そう受け取った。


 実験動物が勘違いをして真顔でこの世界の仕組みを解明しようとしている。


 心底、笑える。


 おれは詩人だ。


 もう二度とお前らの口の動く速度には驚かない。


 全自動発狂機械。


 縦も横も本当は存在しない。


 存在しているのは嘘だけだ。


 おれだけが本当のことを今、喋っている。


 だから迫害されて隅に追いやられて死ぬだろう。


 空が綺麗だとか。


 花が美しいだとか。


 まあ言いたいことはわかる。


 けどな。


 おれはそんな暇人の戯れに付き合う余裕なんて無い。


 あっぷあっぷして溺れそうな奴にドーナツを差し伸べろ。


 想像力が欠落している。


 日々、サムライジャパンなどを応援している。


 確実に狂っている。


 「自分をみてえ」と胸元をさらけ出し乳首を露出したくなる衝動。


 世界中の詩人たちは手淫に夢中だ。


 どんな角度で手首を動かそうか思考中なのだ。


 まあ毒殺すべきだろうね。


 床を転げ回る動きで発電しよう。


 「詩人か………」


 どうしてそんなものになってしまったのだろうか?


 永遠の謎だ。


 気付いたらそうなっていたのだ。


 もうここに詩人が突っ立っていたのだ。


 「おれの人生は所詮、誰かの駒でしかないのだろうか」


 どーも自分で何かを決定づけた覚えが無い。


 真夜中の遊園地だ。


 電飾は煌めいて、だが誰一人いなかった、職員すら。


 観覧車が回っていた。


 誰もいなくても回るのかという発見があった。


 そこで夢から覚めた。


 回路がおかしくなってまたおれを奇行へと走らせようとする。


 安全装置が作動し首にそっと縄を掛けようとしてしまう。


 ふふん。


 死が誰かの予想通りにそこに待ち構えていると思うのなら罠だ。


 おれは詩人だ。


 この世界を革命するのだ。


 「はー、面倒くさいけど革命するか………」


 よっこらせっと。


 おれは椅子から立ち上がった。


 そして椅子は立ち上がられた。


 世界は革命された。


 おれがその気になればこんなもんだ。


 だが誰も気付いていなかった。


 だから広報活動が必要となった。


 「世界が革命されてますよおおおお」


 おーい。


 聞く耳を持て。


 お前が今そこで肺呼吸、出来ているのはおれのおかげだ。


 このおれのな。


 だから取り敢えずお前は感謝すべきじゃないかね?


 世界は革命された。


 そして家に帰って来る頃には革命前と何も変わらなくなっていた。


 大きい掃除機がほしい。


 全人類を吸い込むぐらいの。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る