ツナマヨ




 おれの頭は狂っている。


 狂っていた。


 どっちだ?


 どっちでもいいか。


 腹が減ったな。


 小説の中の登場人物としては些かインパクトに欠けるがおにぎりを購入した。中身はツナマヨでいいや。


 おれはツナマヨの写真集に欲情した。


 おれは狂っていた。


 歯止めが効かなかった。


 ガンダムの富野を見て勃起した。


 最新作では是非、富野が全裸でガンダムに搭乗して自爆してほしい。


 星に願った。


 「いっけえええええええっ」


 富野、死す。


 基本的におれはアニメしか観なかった。


 アニメを観ない奴は精神的に未熟な奴だと思っていた。文明ってやつを理解、出来ないのだ。だからおれは可哀想な奴にわざわざ追い討ちをかけるような真似はしない。


 日本男児たるもの一度は宮崎駿の描くアニメキャラで射精しなくてはならないのだ。


 「え? お前、宮崎駿の描くアニメキャラで射精したことないの?」


 極楽の加藤とかいう奴がテレビで吠える。


 おれはツナマヨの写真集を売った。


 ぱっくり割れて中のツナマヨがぬらぬらと光って露出した状態を見ても何も思わなくなってしまったのだ。飽きた。当たり前だ。何度も何度もツナマヨで射精、出来る奴なんて頭が狂っている。繰り返しツナマヨで射精、出来るようなそんな奴は収監してしまえっ。そんな奴がうろうろしていたらこっちは安心して生活することが出来ない。手足を縛って拘束し薄暗い地下室にでも放り込んでおけばいい。どろどろの液状の餌でも啜らせておけっ、それが政治ってもんだろ。


 自由。


 それを認めるのならツナマヨの写真集で何度も何度も性液を搾り出すような変態の人権を剥奪し直ちにその場で処刑する自由も認めるべきなのだ。


 普通は一回だけだろ。


 だが常習性を伴うとなると全く話しは別だ。おれたちはまるで異なる星から飛来して来た宇宙人のようにそいつを感じてしまうのだった。


 おれには元来、正義感ってやつが備わっている。


 もしそんな奴が通りを歩いていたら早歩きで近付いて注意してやろうと思っていた。予め思っていないと実際そのような光景に出くわした時、迅速に行動へと移れないからだ。


 早歩き、そして肩に手を置き、注意。


 早歩き、そして肩に手を置き、注意。


 ぶつぶつぶつ………。


 何度もその時の情景を思い浮かべ頭の中で模擬訓練を行なった。


 もちろんツナマヨの写真集を眺めて何度も何度も何度も何度も射精するような奴は精神的に何かしらの問題が生じている可能性が非常に高いので対話による相互理解は失敗に終わるかもしれない。


 だからこそこちらも自衛のため改造スタンガンなどを用意しておく必要があるだろう。電圧を違法に上げ一撃で仕留めることの出来る米軍仕様の代物だ。


 結論から言うとおれの頭はまだ狂っていなかった。


 正常の範疇だった。


 ああ良かった。


 現役でやれる脳がまだ入っていた。


 「やっぱりおれはまだ大丈夫だったのか………」


 安心した。


 誰だって自分が異常者だという烙印など社会から押されたくはない。今だから言えるがびくびくし少し消極的な面があったと少し反省している。これからはもっと積極的に他者と関わるべきなのだろう。


 「ツナマヨかあ………」


 掌のそいつを見た。まるでそいつで射精したのが大昔のことのように思える午後だった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る