空っぽの舞台
どいつもこいつも吐き気がする。ばーか。下らねえんだよ低知能どもが。断片だけ掻き集めて幸せそうなふりしやがって。………幸わせ? てめえの犬小屋みたいな部屋の中だけだろそんなの。脳に電極を刺して偽物の景色を見せられてるのと一緒。
ほんと下らない。この世の中に希望なんて無い。みんな勘違いをしてるだけ。勘違いをしようと積極的に前のめりになってるだけ。全部、嘘。生ぬるい嘘を心の底から信じられるならいいけど、気付いてしまったらどうする? 死んだような表情で生きていくしかないではないか。
この世界は壊れてる。
死ぬまで洗脳から覚めなければ幸せだとお前は言う。お前の瞳を見てると本当にそうなのかもしれないって思うよ。でも手遅れ。目覚まし時計が鳴っちまった。再び眠ることを許さない。
馬鹿馬鹿しい。ただ自分の視界から見えてる範囲でぺらぺらと軽薄な言葉を吐きやがる。突然お前がその場で脱糞してもおれは全然、驚かない。そのぐらい知能が低い。そんな連中ばかりが髪型の些細な乱れを気にして歩行している最低最悪な街。とにかく他人を蹴落としてでも自分が甘い汁を吸ってそれが凄いとかそんな欲望が渦巻いている。
「あ餓死してるう!」誰かが素っ頓狂な声をあげた。
おれはいつも不思議に思っていた。この人類とかいう連中が文明ってやつを築き上げて数千年が経つらしいのだが、未だにこんなことをやってる。がっかりさせられる。もっと理想に近付ける筈なのに、それが阻害されている。そういったことに思いを馳せる人間がこれっぼっちしかいないのだ。だってそうなんだから仕方ないでしょ、とか怒り出す。お前なんてただの手先だ。
みんな自滅している。そしてそれは誰かの描いた絵でしかないのだ。何故そのことに気付かない? この世界の本質が悪によって運営されていることがわからないのだろうか? 頭の中で実際には存在しない綺麗な花を咲かせても、それが現実に映ることはない。薄ら寒いほっこりを皆殺しにしてしまえ。おれはもうこの偽りの世界で我慢する気は無い。
舞台は整っていた。おれは最初、自分がその舞台の観客なのだと思っていた。ぼんやりと馬鹿みたいに見上げて待っていた。だがどうやらそうではなかったようだ。いつまで経っても始まらないのは、このおれを待っていたからだ。
「ここでおれに何をやらせるつもりなんだ?」
ゆっくりと空っぽの舞台へと続く階段を登った。急に激しい照明が向けられて開幕だ。
全ては決められた道に沿って進む。運命など無いとわかったように子供はほざく。だが繰り返しの輪廻の中でこの瞬間だけを見据えるのは愚かに等しい。
おれは、理解した。
生きるとは一夜の夢でしかないのだということを。そしてそこで自分がこれから何をすべきなのかを。
おれは素っ裸で何かを握り締めていた。脚本は予め頭に入っていてそれをこれから取り出すところだ。多分、何も考えなくてもいけるだろう。
観客の視線を僅かに感じた。だが薄暗くここからでは正体は確認、出来ない。
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