偽のデュー警部

 ラヴゼイは本当は『苦い林檎酒』をやりたかったのですが、英訳企画のシーズン1でやっているのではなかろうか、と不安になり、こちらにします。

 というのも、新年一発目としてミルンの『赤い館の謎』を取り上げて原稿を書いたのですが、『赤い館の謎』はシーズン1でやっていたのです。

 読み直して腰を抜かしそうになったのは、ほとんど同じ思考で解答を導き、単語選びからスペルミスまでまったく同じ間違いをしていたこと。

 あれ、『偽のデュー警部』はやっていないよな……


 

   ???シンキングタイム???


 この企画で何度も出てくる人名・地名、固有名詞問題。「デュー」って……これがマイケルとかジョンなら……いや、Tomしか書けないな。Michel? John? あってる?

 脳内にデータが入っていないのだから、いつもどおり音の感じでアルファベットを並べるしかなかろう、うむ。“Due”でどうだろうか。

 次は「警部」か。はいはい。ミステリを日本語に訳すとき、警察の捜査官をなんでもかんでも「警部」にしがちということくらいは知っているんだぞ。有名な「刑事コロンボ」だって日本語吹き替え版ドラマでは「警部」と呼ばれているけれど、確か「警部補」だったはず。というか日本と海外の警察組織って違うよな。いや、違わないのか。明治に海外から警察というシステムを輸入したのだろうし。明治ならイギリスだろうな。

 閑話休題。まぁいいや“inspecter”で。「捜査官」くらいな意味、なんなら「探偵」も「名探偵」も“inspecter”でカバーできるくらい幅広い言葉なんだろうけれど(註 筆者の怪しい知識・見解です。きちんとした英語学習企画ではないので、その点ご容赦を)。

 ラストは「偽の」ですか。なんかあったなぁ。わりと推理小説に出てくる言葉だし、頭の引き出しのどこかにはあるはず。そうか、フェイクか。スペルは“fake”かなぁ。

 待て“ the”は必要なのか? いらないか、人名だし。すると“Fake Inspecter Due”か。いや、それだと「偽警部デュー」か。ミスター・デューが偽警部なのではなくて、デュー警部のニセモノの話だよな。確かイギリスでは伝説的な実在した名刑事デューのニセモノの話だったよな……



 というわけで

【The Fake Due Inspecter】

 で、どうでしょう?



 正解は

【The False Inspector Dew】

 でした。



 まずさらっとスペルミスを認めましょう。“inspector”ね。“e”じゃなくて“o”なのね。

 そして“false”って。辞書だ、辞書。「誤った」「人造の」「見せかけの」「(人をだます目的で)偽の」。へぇ(fakeでもいいじゃん)。

 こうなったら捜査官関係の言葉を調べておきましょうか。

“inspector”はアメリカでは警視正でイギリスでは警部(補)なのか。イギリスでは“superintendent”(警視〈正〉)の下の階級にも使うのね。で、“superintendent”はアメリカでは警察署長なのか。

 まぁ日本語、日本の警察組織に当てはめたらということなので、どのくらい正確なのかは判断しがたいところがありそうです。




   ★★★作品情報★★★


 偽のデュー警部(ピーター・ラヴゼイ著/中村保男訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)


 作者の名前がすっと出てこなくて焦りました。ピーター・ラヴゼイです。『苦い林檎酒』もいいのでオススメです。『死の競歩』も『マダム・タッソーがお待ちかね』もこの人か。

 ハヤカワオンラインで「ラヴゼイ」で検索したらアンソロジーしか出てこなかったので、読みたければおそらく古本屋をあたるしかないのでしょうね。



 !!!単語!!!


 inspector 調査する人、調査官、検札係

 superintendent 監督者、管理人、指揮者 

 fake 偽の、偽造の、ニセモノ、ぺてん師、詐欺師、でっちあげる

 false 誤った、人造の、見せかけの、(人をだます目的で)偽の

 false accounting 不正会計

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