象牙色の嘲笑

 英訳企画のシーズン2をやるにあたり、ぼんやり考えていたのは「難易度が高そうな独特で素敵なタイトル」を取り上げるということ。『3、1、2とノックせよ』や『くたばれ健康法』など、いくつか候補は挙がっていたのですが、今回の『象牙色の嘲笑』も一つ。

 というわけで、今回もロスマクです。



???シンキングタイム???


 ポイントは「嘲笑」でしょう。ただ笑うのではない。日本語は「笑い」の表現が多様です。「笑う」「高笑い」「鼻で笑う」「馬鹿笑い」など。国語辞典に載るほどではないのでしょうが「ひき笑い」なんてのもあります。そもそも「笑う」と「嗤う」がある。あ、「哂う」もか。

 シンプルに「笑う」ならラフ、laughでしょう。なんか別の単語があるのか、なにか単語を一つくっつけるのか。わからん。保留。

 次は「象牙色」。これはなんかあったな。アイボリーか。スペルはivoryかな。待て。

 でも、アイボリーは「象牙」であって「象牙色」ではないのではないか。ほら、鶯色は鶯ではないし、抹茶色は抹茶ではない。なぜ緑系統の色の話なのだ。ほら、茜色は茜ではないし橙色は橙ではない。

 関係ないけど茶色って変だな。だって、日本人が思い浮かべるお茶って緑茶だし、当たり前だけど色って緑でしょ。これが紅茶とかウーロン茶とかコーン茶とかルイボスティーなら茶色なのはわかるけど。

 ん? 緑茶とわざわざ緑をつけていることからすると、スタンダードなお茶は緑色ではないのか。玉露などの緑茶は身分の高い貴族のもので、一般庶民は保存の関係などから茶色のお茶を飲んでいた時期が歴史的には長いとかなのか。

 日本のお茶文化話にも興味はあるけど、話を戻そう。

 ただの「象牙」を「象牙色」にするには、この手がある。カラーをつけちまえばいいのだ。アイボリー・カラー。



 というわけで

【The Ivory Colared Laugh】

 で、どうでしょう?



 正解は

【The Ivory Grin】

 でした。


 ん? grin? これが「嘲笑」っぽいな。辞書を引こう。そうしよう。

 和英で「ちょうしょう」っと。おや、出てこない。ならば英和でgrinを引こう。「(歯が見えるくらい)にこっと笑う」とね。んー、でもこれ嘲笑か。お、続きがある。

〔苦痛・怒り・嘲笑などで〕歯をむき出す。なるほど。

 あ、ivoryは象牙だけでなく象牙色も含むのか。


★★★作品情報★★★


 象牙色の嘲笑(ロス・マクドナルド著/小鷹信光 松下祥子訳/早川文庫)


 何回か前の『はだかの太陽』のときと同じパターンですが、新訳版が出てるのね。いいことだ。ぜひ買って読んでください。そうすれば、ほら、ロスマクが続々と新訳や復刊するかもしれない。



!!!単語!!!


 ridicule 嘲笑

 derision 嘲笑

 scoff 嘲笑

 scorn 嘲笑

 mockery 嘲笑


 laugh at~ ~を嘲笑する


 日本語は語彙が豊かだどころじゃないな、英語多いな、嘲笑。

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