スクイズ・プレー

 ハードボイルドつながりで、これ。といっても知名度は高くないはず。作者はポール・ベンジャミン。誰だ、というかたは作品紹介のところを読んで下さい。



???シンキングタイム???


 久々のオールカタカナ。「プレー」はplayでしょう。これがlでなくてrになるとprayで「祈る」になるんでしたっけ。

 まぁいい、問題は「スクイズ」。これ、野球のスクイズだよな、きっと。内容に関することなのであんまり詳しく書けないですが、作中にも野球のスクイズが登場します。そもそも、このお話、私立探偵に依頼に来る人が元プロ野球選手なのです。

 今、あんまり野球熱は高くないし、世界大会とオータニさんぐらいしかファン以外の関心を集めていないですが、以前は地上派のテレビ中継をバンバンやっていました。ある程度、野球の知識はあるはずですがスクイズってどんな意味なんだ。いや、プレーの中身は知ってるけどさ。あれでしょ、ランナー三塁でバントするやつ。確実に一点を取りにいく作戦。

 スクイズ、うーん、これは音で当てに行くしかない。クイズなら“quiz”か。じゃあ頭に“s”をつけて“squiz”か。



 というわけで

【The Squiz Play】

 で、どうでしょう?



 正解は

【Squeeze Play】

 でした。


 ほうSqueezeとな。辞書を引こう。

 強く押す、絞る、締め付ける、押し込む、脅して奪う。

 なるほど。野球の戦術でいえば、「押し込む」はよくわかります。そして、『スクイズ・プレー』の内容というかハードボイルドというか私立探偵ものの定型をふまえると「脅して奪う」も腑に落ちる。

 関係ないけど、同じタイトルの短編がなんかのアンソロジーにあったなと調べてみたら、ありました。題名はちょっと違って「スクイーズ・プレイ」。作者はレナード・トンプスン。十六歳。かのクイーンが絶賛したゴリゴリの密室物。『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』(北村薫編/角川文庫)で読めます。


★★★作品情報★★★


 スクイズ・プレー(ポール・ベンジャミン著/田口俊樹訳/新潮文庫)


 ポール・ベンジャミンってポール・オースターの別名義なんですね。『幽霊たち』『ムーン・パレス』『偶然の音楽』のオースター。

 というか、ポール・オースターとして世に出る前の幻のデビュー作がこの作品。

 いや、もうビックリするくらいハードボイルド。オースターって文学の人でミステリプロパーの作家ではないけれど、面白かったなぁ。ワイズクラック、探偵の軽口、比喩のセンスは文学的なものが重要なので、ハードボイルドはプロパーなミステリ作家よりもオースターのような作家のほうが得意なのかもしれません。



!!!単語!!!


 squeeze 強く押す、絞る、脅して奪う

 quiz テスト、クイズ、質問、取調べ

 play 遊ぶ、競技する、演奏する、芝居する

 pray 祈る

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