なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか
クイーンとカーを取り上げて、この人を紹介しないわけにはいかないでしょう。はい、クリスティおばちゃんです。前シリーズで短編「あなたのお庭はどんな庭?」を和訳してズタボロだった記憶が……狙って面白そうなタイトルを選んではいるのですが、今回もちょっと難易度高そう。
???シンキングタイム???
フレーズというか文章がタイトルになっているのか、今回は。
いくら私でも「なぜ」くらいはわかる。“WHY”だろ、“WHY”。自信があるからか大文字表記。しかし、なぜだろう。Wで始まるアルファベット三文字ってなんかの組織の略称に見えるのは。世界保健なんちゃらのせいか?
出た、人名問題。地名・人名といった固有名詞はスペルを当てるのが難しいのよねぇ。「エヴァンズ」か。もう音の感覚でいくしかないな、“evans”でいこう。考えてもしょうがない。だって、脳内データベースに正解が入っていないんだから、思い出しようがない。
で、「頼む」です。んー“please”? いや、「プリーズ」はお願いするときの枕詞というか決まり文句みたいなもんか。違うな。だって、プリーズの後に“help me”みたいに動詞が続くから、プリーズ単体は動詞ではないんだよ、きっと。うん、冴えている。でもきっと、プリーズだけでも動詞として成立するパターンもあるパターンだな、これ。
あー「頼む」ねぇ……「望む・希望する」ならホープ、“hope”か。「注文する」ならオーダー、“order”か。
頼む、なんとか正解に引っかかっていておくれ。
というわけで
【Why did you order Evans?】
で、どうでしょう?
正解は
【Why Didn’t They Ask Evans?】
でした。
They ask?
Didn’t?
ふーむ、“ask”ねぇ。確か「訊く」ではなかったか。
うん、辞書をひこう、んだ、そうすべぇ。
「尋ねる」「…するように頼む」。ほう。
そして、theyよthey。これはわかる。意味はわかる。he(彼)she(彼女)の複数形でしょ? 「彼ら、彼女ら」。ということはゴルフ場で死んだ男が「なんで頼まなかったんだ?」と感じている対象は「彼ら・彼女ら」、つまり複数いるということか……
いや、なんかあるんだよ。Theyは具体的な誰さんと誰さんを示さないみたいななにかが。
あ、辞書になんか記載がありますね。なになに?
特定のthey(すでに話題になっている人・物・事)に、総称のthey(人々は、みんなは)に、権威のthey(権威者、政府、警察、専門家など)。ふむ。いろいろ、あるのね。
おや、ということはクリスティは(以下、略)
なにを書こうとしていたかって? Don’t ask! 聞いてくれるな!
★★★作品情報★★★
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?(アガサ・クリスティー著/田村隆一訳/クリスティー文庫)
ダイイングメッセージは死に際の伝言とされることが多いですが、たいがいが死体のそばで見つかった謎の文言や記号です。雑に言ってしまうと、広義の暗号ミステリにあたるわけです。
本作はまさしく死に際の伝言。タイトル通り「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」と言い残し、絶命してしまった男の死の真相とは?
ちなみに創元推理文庫版(長沼弘毅訳)のタイトルは『謎のエヴァンス』。
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