第2話 焦燥は悲劇とともに
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「ッチ、無事で居やがれよ!」
脳裏に思い出すのは無邪気な笑顔。
記憶を失った彼女が見せてくれる笑顔。
本来の彼女は笑うような人間じゃないのかもしれない。
それでも俺が出会ったときは笑顔だった。
そんな彼女は今や俺の生活の一部に溶け込んでいる。
だからこそ奪われるのが怖い。自分の日常が壊れるのが怖い。
また大切な人を失ってしまうことが怖い。
4年前に母が死んだとき何もできなかった。でも、今はこの状況なら万が一に対応できる。
まだ出会って半年程度。でも半年分以上にかかわってきた。
人を避けてきた3年間を埋めるかのように。
(俺の壊れかけた心に入った日々を埋めるように俺に声をかけてくれて俺を助けてくれたあいつは絶対死なせない!)
自分たちが住んでいるマンションは1キロ先。
走れば3,4分ほどでつく距離。でもその数分が重苦しかった。
マンションの非常口から入り階段をかけあがり姫宮というプレートが立てかけられた部屋の前にたどり着いて
ドアノブに触れる。
するとドアノブは一切の抵抗なく回りドアが開いた。
そのことになおさら焦燥を感じ靴を履いたまま部屋に入り呼びかける。
「姫宮!無事なら返事しろ!姫宮!」
その声に返事するものはいない。
ただふとした瞬間水の音が聞こえた気がして水場へ行く。おそらく音の出どころは風呂場。
だとしたらそこでトラブル?何があった?
全く理解できないまま
走って風呂場のドアを開ける。
「姫宮!......ごめんなさい」
そこにいたのは着替え中の姫宮。
しっかり下着はつけてるしズボンもはいている。
むこうは不思議そうに首をかしげてこちらを見ていただけだったがいたたまれなくなり扉を閉めて後ろを向く。
脳裏には先ほどの上半身に下着しかつけていない姫宮がずっと浮かび上がっている。
悶々としながら姫宮が出てくるのを待ち、一発殴られる覚悟くらいはしておく。
いくらそのあたりに無頓着な彼女でもさすがに怒るだろう。
というか着替えの時に突撃されて怒らない女子の方が怖い。そして心配。
「やぁ、そんなに見たかったの?ボクの『着・替・え』」
「いや、ちがっ、」
事故だと伝えようとするが声がうまく出ずに詰まってしまう。動揺するあまり頭が真っ白だ。
そこに追い打ちをかけるように姫宮は続ける。
「そっかぁ、そうだよね。ボクのこんな貧相な体なんて見たくないよね。高宮が好きなのはおっぱい大きい子だろうし」
「別に貧相だとかは思ってねぇけど...。というかまて、さらっと俺の性癖をさも知ってるかのように言うな。やめろ」
「君、さすがにベッドのしたにおくほど愚かじゃないみたいだけど二重底程度でごまかせると思ってたの?」
「なぜそれを!?てか、いつさがしたんだよ!」
「君がいないときに」
「それは不法侵入って言うんだぞおい」
「ボクはちゃんとアリーナさんから許可を得て鍵を借りたんだよ?」
「何してやがるあの年増ぁ!」
さらっと自分の持ってるそういう本の隠し場所がばれて性癖がばれただけでなく自分たちが住んでいるマンションの管理人であるアリーナが敵に回っていた。
彼女はロシア人と日本人のハーフで個人としてはかなり優秀な人間だがこういったときに敵になる。
今度絶対文句を言ってやると思いながら拳を握る。
「というか不法侵入どうこうって言うなら今の君はどうなの?」
「あ、」
思い返せばドアの鍵が開いていたからふつうに入ってしまっている。
「よし、こうしよう。今回君はボクを心配してきてくれたんだろう?」
「まぁな」
姫宮のことを心配してここまで戻ってきたというのは本当だ。
「なら今回のことは不問にする。そのかわり君もボクの行動に関して問い詰めない。これでどう?」
「...わかった」
事実自分も不法侵入のようなことをしているのだ。今更何も言えまい。
それに自分は相手の下着姿を、姫宮は自分の性癖をみているのだからまぁおおあいこのようなものなのかもしれない気がしなくもない気がする。
とりあえず自分はどちらにしろ社会的に死んでしまうので今回の一件もなにもないことにしてくれるのは助かった。
「まぁ、ボクが時間忘れてお風呂入ってたのは悪かったよ。それについては謝る」
「...おう。てかしっかり忘れてたのな」
「まぁね、準備するからその辺に座って待っててよ。くれぐれも漁ったりしないように」
「誰が漁るか!」
「それならいいんだけどね?」
どうやってもからかわれる...。
いつかやり返してやると思いながらもどうせ返り討ちに会うんだろうという確信も持っている高宮だった。
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なんかこっちばっかり書いてる気がする...。もう一個の方もちゃんと書きます。というか本命は先輩の方のお話です。よくわかんない方はプロフから読んでみてください。
それではまた。
異能力は対価とともに roriko-nn @ichika0120
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