第2話 ワンパンマン(アクション)

「どんな相手もワンパンチで一撃必殺」

「まさに強すぎるヒーローの登場ですね」


 こんにちは、入る度に構造が変化するダンジョン『書籍館』でVチューバーをやってます早稲田夜鶴子わせだよつるこです。


 今日もダンジョンを降りた先に東大倉島とうだいくらしま君が私を待ち構えたように、この場所で入手した一冊の漫画本を手にしていました。 


 あの太陽の微笑みで黄色いマントを着込んだ目立った表紙は週刊少年誌のワンパンマンですね。


「この主人公、サイタマという男は絶大な強さと引き換えに全ての髪の毛を失ったという部分がカッコよくてさ、まさに男の憧れというヤツよ」

「エアコンもつけずに毎日激しい筋トレをして、体中が筋肉痛で悲鳴の音をあげてもトレーニングをして、その反動が原因だとか」

「普段は冴えない顔してるけど悪者を倒した時の姿がカッコいいんだよな」


 サイタマはボロいマンションに住みながらも趣味で怪人を倒すヒーローの仕事をする毎日でしたが、どんな強敵でも毎回ワンパンで敵に勝利するため、ギャグ漫画なのにウケない作品を読み漁り、つまらない日常を送っていました。


「そんな中、彼の前にジェノスという頭から尻尾の先までサイボーグな戦士が登場しますね」

「サイタマの弟子になりたいと住み込みを求めてくるイケメンなヤツだな。速攻で拒否られるけど」

「お金ならありますと分厚い札束をドーンと出されるのが何とも……」

「それで歯ブラシは持ってきたか? ってサイタマは怪しい勧誘を食らったような困り顔で受け入れるし、この作品はギャグ要素もあって面白いよな」


 ジェノスはサイタマの強さに惹かれて、彼を先生と呼んで慕うようになりましたが、サイタマには鬱陶しい相手でもありました。


 しかし、同居を重ねるにつれて、限界を超えてまで戦うジェノスの一心を知り、純粋に強くなりたいという真っ直ぐなひたむきさを応援するようになるのです。


 その後、ジェノスの勧めで趣味ではなく、ヒーロー協会に就職し、本格的なヒーローのお仕事を始めます。


「基本、人間から変異した怪人や地球にやって来た異星人を倒して平和にするアクション漫画ですものね。売り上げも上場らしいですし」

「ヒーローやモンスターにもレベルがあって、ちょっとしたゲーム感覚で読めるのも魅力的だよな」


 災害レベルが鬼やら龍などと色々なランク付けがしてあり、最高クラスのS級ヒーローでも敵わない強敵も続々と登場。

 唯一無二で一発KOで決めるのはサイタマだけでした。


「そこへ自称、宇宙最強の戦士が登場しますね」

「ああ。今までのワンパンが通用しない相手だからな。手に汗握る展開だったぜ」

「そこで彼は本気のパンチを繰り出すことに……」


「数ページの見開きでマジパンチを使うシーンだろ。あれは痺れるなあ」


 サイタマが今まで手を抜いて戦っていた余裕の素振りからちょっと本気モードになった彼の力は宇宙最強の戦士さえも太刀打ちできませんでした。


「ヒーローにも地上最強の戦士が出てきますよね」

「力強いエンジンの鼓動が鳴り響くキングだよな」

「あれは自身の心臓の音と知った時にはもう……」

「ゲームが得意という部分も王者に相応しいよな」

「マニアックなゲームもお好きなようですが?」

「まあ、彼も一人の男だからね」


 キングは実はゲームが上手いというだけでなく、二次元の理想郷のギャルゲーで癒やしを求めていたのです。


 そして、自宅に怪人が押し寄せ、偶然、対戦ゲームをしていたサイタマにピンチを救われます。

 あの最強のキングさえもサイタマに憧れを抱くようになるのです。


「そのキングよりも強い男、ガロウも登場しますね」

「怪物の力を取り込んで、ほぼ不死身の強さを持った男だろ。あれは最早もはや、人間の領域を超えてるし」

「サイタマのパンチでは気絶しましたけどね」

流石さすがに不意打ちには弱かったわけだ」

「でも後半はこのガロウ編の物語がしつこいくらいに続くんですよね。いつ終わりを迎えるのみたいな」

「原作は終わったけど結構長々とガロウ編は絡んでくるとか。そこがマンネリ化して、ちょっと残念だよな」


 サイタマの出番が極端に少なくなり、途中から読み始めたら、ガロウが主人公と間違えるくらいの勢いですね。


「途中にあるファミレス事件がなければガロウ編はだらけた展開になっていたでしょうね」

「サイタマが財布を忘れて食い逃げをしようとするシーンだよな」

「そこでさっき話したサイタマのパンチを食らうはめに」

「フブキの姉さんに会計を任せたとはいえ、逃げた者通し、共犯者を恐れてたからなあ」


 あのサイタマの関わりたくない言動はパンチからでも浮き出ていました。


 ヤンキー大食いガロウ王に目線すらも合わせない焦ったサイタマの『さいならっきょ』な顔は明らかに冷静さを失っていましたね……。


****


「──それでは東大君。今回の漫画、ワンパンマンの評価をお願いします」


 東大君にメモ帳を手渡すと、彼は不思議な表情で黒いボールペンを走らせます。


「Vチューバーのわりにはこんな所はアナログなんだな」

「まあ細かいことはお気になさらず」

「それもそうだな。どれどれ……」


 ワンパンマン

 1巻〜続刊

 ジャンル アクション

 テレビアニメ、ゲームあり

 ストーリー★★★★

 キャラクター★★★★★

 演出★★★★★

 シリアスさ★★★★

 お笑い度★★★★

 中毒度★★★★★

 お勧め度90%


「──というわけでアクション系が好きな人なら文句なしの作品で物語もよく練られている。しっかりとドラマ性もあり、ただワンパンで倒してお終いじゃないんだな」

「イラストがちょっと熱血系な男性目線なのに意見が分かれそうですが、王道の展開で安心して読めますよね」

「ああ。三千万部以上の売り上げを叩き出しただけのことはあるぜ」


 漫画だけでなく、第一期、第二期と続々にアニメにもなっていますので、そこからでも入れて万人にオススメできる作品ですね。


 なお、みんなが公平に楽しめるダンジョンゆえ、ダンジョン内で手に入れた漫画本は地上へは持ち出せません。

 その点はご了承下さい。

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