第17話 謎の「ご学友」
「危険すぎるって――」
「君のペンダント、ローズクォーツが魔法でいつの間にか無くなっていたと言っただろう。俺が予測した通りだった。高レベルの術師がこの館に入り込んでいて、いつの間にかペンダントを奪っていた」
アークが真剣な表情で私を見つめながら言う。
「その人は――その人は、ロザラインと何か関係があるの?」
私が聞くと、アークは首を横に振った。
「――分からない。名乗ることも無く、彼女は消えてしまった。ただ、立ち去る前に、気になることを言っていた」
「――気になること?」
「君はローズクォーツの本来の持ち主ではないと――」
「――!!」
私はお母様から、王家の証としてこのペンダントを渡された。
「アリシア。このペンダントは今日からあなたのもの。このペンダントがアリシアをきっと守ってくれるわ」
ぎゅっと、私は
アークの言葉が本当だとしたら――私は、どうしてこのペンダントを持っているの?
そして、ローズクォーツの本来の持ち主は、もしかして――。
「その彼女が、このペンダントの本来の持ち主で、だからこのペンダントを狙っていた――?」
「いや、違うな。それは彼女自身が否定していた。それに――」
「それに?」
「――こちらを愚弄したくて、彼女が本当のことを言っていない可能性もある。いずれにしても、アリシア、君がそのペンダントの鍵を握っていることには変わりはないと俺は思う」
「――アーク――」
「だから、これからも君のことを守らせてほしい。これはアリシアがペンダントの持ち主だからではない。君に危険が及ぶのが嫌なんだ。――アリシア、君のことが好きだから」
さらりと彼は、私への想いを口にする。思わず顔が火照ってきてしまう。
「――そう、それからもう一つ、アリシアに言っておかなければならないことがある。ロザライン嬢の同行は、こちらから断らせていただいた。あんなことがあった後だからね。万が一のことも考えたんだ」
「アーク――」
「その代わりミシェルが魔法騎士として同行するよ。君の侍女になることは聞いていると思うけど」
「ええ、ミシェルは今朝から私の侍女としても仕えてくれているわ」
「うん。それからこれはミシェルから聞いたんだけどね。彼女がアリシアの侍女になるのは君の身辺警護だけが目的ではないんだ」
「――?どういうことかしら?」
私は息を飲む。
「うん。詳しくは分からないけれど、アリシア、君以外にも身辺警護をする必要のある人物がいると聞いて」
「――それは、一体誰なの?」
「アリシア、君はローズクォーツ学院の特別寄宿室に入寮することになっていると思うんだけど、もう一人、その特別寄宿室に入寮するという予定の人物がいる。彼女の名前は、リズ・ブラウン」
リズ・ブラウン。
――初めて聞く名前だけれど、もしかして、彼女がお父様とお母様が私に用意した「ご学友」なのかしら?
「――ブラウンっていう家名はあまり聞いたことが無いのだけれど、男爵家か何かかしら?」
「いや、彼女は平民だと聞いている」
「――平民?」
平民の身分で、ローズウォーター魔法学院に入学することは大変困難となっている。
この国で、魔法を使えるのは通常ならば王侯貴族だけだからだ。
けれど、ごくまれに平民でも魔法を使える者が生まれることがあり、そういう場合は特別に奨学金をもらって魔法学院に入学することができる。
平民で魔法学院を卒業した者は、魔法騎士になるなりして国に仕え、功績を挙げれば爵位をもらい、貴族に列せられることになることができる。
けれど、魔法学院でも平民の身分の者は平民専用の「平民寮」に入ることになるはずで、貴族と一緒の寮に入ることは許されない。
それなのに、リズ・ブラウンは王族しか使えない特別寄宿室に入ることになるという。
「――一体、なぜ彼女が?」
「うん。俺にもよくは分からないんだけれど、ただ、彼女は、
魔法王国の王女なのに魔法の使えない私が婚約者の王子様に溺愛されています りむ @rimu_15165535
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔法王国の王女なのに魔法の使えない私が婚約者の王子様に溺愛されていますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます