第16話 一緒に朝食を

翌朝、部屋をノックする音が聞こえた。


「どなたでしょう?」


 マリーがドアを開けて確かめる。


 そこにいたのは、侍従服姿の男性。


「失礼いたします。私はアーク殿下の侍従、マークと申します。アーク殿下からアリシア王女殿下へのご伝言がございます。もしよろしければですが、朝食を一緒にとっていただけないかと」


「アリシア様に、確かめて参りますわ」


 


 マリーはマークと名乗った侍従の言葉を私に伝えた。


「構わないわ。アークはこちらに来られるの?」


「ええ、そのようでございます」


「わかったわ。支度が終わったらマリーにそちらの部屋に知らせに向かわせると伝えて」


 私の言葉をマリーから伝えられたマークは、部屋から出ていった。






 彼を見送った後私はマリーに手伝ってもらってドレスに着替える。


 朝用の軽い感じのドレス、上品なブルーで締め付けないデザインだ。胸元には白いリボンと薔薇。スカートには白いレースとブルーのリボンが飾られている。


 髪は三つ編みハーフアップにしてやはりブルーのリボンで飾る。


 そして胸にはローズクォーツを身に着けてもらう。




 マリーをアークの部屋に向かわせ、その間に侍女服に着替えたミシェルが私にお茶を入れる。


 ミシェルが私に仕えるのが決まったのは昨夜、取り急ぎだったのだけれど、さすがにミシェルは手慣れているのが分かる。


「これも警護の一環ですから」


 礼儀正しくそう言うミシェル。きっと、そういうものなのだろう。


 私はお茶を一口頂く。薔薇の香りがほのかにする。


「とてもいい香りね、ミシェル」


「先ほど、アーク殿下からの贈り物ということでマーク殿から頂いたものです」


「そうなの。アークが来たらお礼を言わないと」




 ちょうどその時だった。部屋のドアがノックされる。


「アリシア様、アーク殿下が来られました」


 マリーに続いてアークが入ってくる。


「アリシア、連絡があったと思うけれど、今日はこちらで朝食を一緒に取らせてもらうね。朝食のほうも、こちらに運ばせてもらう」


「アーク、わざわざありがとう。あの、お茶も美味しかったです」


「ありがとう。アリシア、君のドレスも清楚で上品で素敵だ。とても似合っているよ」


 アークにそんなことを言われると、照れてしまう。




 私とアークはテーブルにつく。


 メイドが前菜、スープ、主菜を運んでくる。


「君の好みに合わせてもらった。昨夜の疲れもあるだろうし、ゆっくりして大丈夫だから」


「でも、アーク、出発の時間もあるし……」


「そうだね、――本当はこの館から一刻も早く君を連れ出したいくらいだ。この館は、危険すぎる」


 アークの言葉に、私は息を飲んだ。

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