【完結済】幼馴染にフラれた僕は神社に彼女を下さいと神頼みに行った そしたら神様からヤンデレ美少女に好かれるという特級呪物を授かった件

栗村坊主

僕は幼馴染に告白してフラれる

柏木早苗かしわぎさなえさん。ずっと前からあなたの事が好きでした。僕と付き合ってください!」


 放課後の校舎裏、強い西日がギラギラと僕と彼女を照らしている。季節は夏、夕方と言えどもまだまだ暑くて汗がポタリと頭を下げた僕の額から地面に落ちた。


 僕の名前は佐伯武光さえきたけみつ、高校1年生だ。僕は今、長年好きだった女の子を校舎裏に呼び出して告白している。その想い人の名前は柏木早苗かしわぎさなえ。茶髪のポニーテールが特徴のいつも明るい僕の幼馴染だ。


 顔は少し釣り目で一見すると怖い印象があるのだが、僕に言わせると彼女は多少口が悪いぐらいで全然怖くない。むしろ笑うとそのキリッとした顔がフニャリと崩れて可愛らしさすら感じる。


 背は女性の平均程度、150台後半でスポーツをやっているせいもあって健康的な小麦色の肌が眩しい。胸は普通ぐらいだと思う。


 僕と彼女との出会いはそれこそ赤ん坊の時になる。お互いの両親が仲が良く、尚且つ家も近いため文字通り小さい頃からよく一緒に遊んでいた。


 そんな僕が彼女の事を気になり始めたのはいつの頃だったか…はっきりとは覚えていないが、漠然と思春期になる中学生ぐらいからだというのは記憶している。


 それまでの僕たちは幼いが故にお互いに「友達」という意識の垣根を超えることはなかったのだけれど、中学時代の友人がよく一緒にいる僕達を「お前らいつ付き合うんだよ?」と冷やかしてきたのがその始まりだったように思う。


 それによって僕は彼女の事を「仲の良い友達」から「気になる異性」へと認識を変えたのだ。


 そこからはもう彼女の事が気になって止まらなかった。毎日暇があれば彼女の事を考えて、寝てる間の夢にさえ彼女が出て来た。


 しかし俗に言う「ヘタレ」の僕には彼女と付き合うにはどうすればいいのか全く分からなかったし、行動する勇気もなかった。もし失敗したら…今の仲の良い幼馴染という関係も崩れてしまうかもしれない。その恐怖が心から離れなかった。


 もっと言うと、当時僕が通っていた中学には恋愛にうつつを抜かす奴は恥ずかしいという風潮が何故かあったため、友達にも相談できずに僕は悶々とした毎日を過ごした。


 そもそも彼女は僕の事をどう思っているのだろう? ただの幼馴染? それとも…僕と同じように異性として意識してくれているんだろうか? 当然ながら恋愛経験の無い僕にはそんなことはさっぱり分からなかった。


 そのまま彼女への片想いを抱えたまま時は過ぎ…僕たちは高校生になった。幸運にも僕たちは同じ高校に進学することが出来た。


 そんな悶々とした毎日を送っていた僕に変化があったのは高校に入学してしばらくたった日の事。クラスでたまたま隣の席になった男…こいつに僕が彼女の事を好きなのがバレてしまったのだ。彼の名前は田中康太たなかこうたと言う。


「なぁ佐伯、お前柏木さんの事好きだろ?」


「ど、どどど、どうして分かるのさ?/////」


「分かりやすい反応ありがとう。そりゃ、お前はいつも柏木さんの事を目で追ってるじゃん。見る人が見れば分かるよ。で、いつ告白するの?」


「な、なんでいきなり告白の話になるんだよ?」


「俺の見た感じでは…柏木さんもお前の事を憎からず思ってると思うぜ?」


「えっ、そうなの?」


「だって柏木さんとよくつるんでるに男子ってお前ぐらいじゃん。考えてもみろよ。嫌いな男とつるむかよ」


「うーん…」


 高校は中学と違い恋愛に対して比較的寛容だったという事もあり、それ以降この康太が僕の恋愛面での参謀としてよく話を聞いてくれるようになった。彼は恋愛豊富な人間…という訳ではないのだが、何故か彼の言葉は僕の心に響いてくるのである。


 まぁ、僕も内心は恋愛相談ができる友達というのを欲していたせいかもしれない。


 そしてその康太の数カ月に及ぶ説得によって僕は彼女に告白することを決心した。期日は7月3日。この日は彼女の誕生日であった。僕はrein…メッセージアプリで彼女を校舎裏へと呼びだして告白する事にした。



○○〇



 僕は彼女に想いを伝え、頭を下げた状態のままその返答を待つ。他の人には数秒でも僕にとってはまるで悠久の時のように感じられる時間が流れた。そしてその永遠にも感じられる数秒の後、彼女は口を開いた。


「お断りします。そもそも私、付き合ってる人いるから」


「えっ…?」


 思いがけない返答に僕は固まる。あれ…? 康太の話では早苗は僕以外に仲の良い異性はいないと聞いていたんだけど…?


 僕が困惑したまま固まっていると彼女は言葉を続けた。


「はぁ…もう行って良いかしら? 私この後部活があるんだけど」


「えっと…誰と付き合ってるの?」


 僕の頭は困惑と疑問で一杯だった。そしてその混乱している頭から苦し紛れにひねり出した言葉がそれだった。


 本音を言うとあまり聞きたくない。自分が好きな人が僕の知っている誰かと付き合っているなんて想像したくないからだ。だが彼女が誰と付き合っているのか疑問を晴らさないと今日は眠れそうになかった。厄介な話だ。


「サッカー部の横浜君よ」


 サッカー部の横浜…僕は記憶の中を漁る。


 あぁ…クラスのトップカーストに所属している男でイケメンだが酷く性格の悪い奴だったと記憶している。彼は所謂面白キャラとしてクラスに君臨しているのだが、彼の放つギャグは基本的に誰かの悪口なのだ。他人を笑いものにしてウケをとっていると言えば良いだろうか。


 僕や康太などのグループは彼の事が苦手なのであまり絡まない。


 まさか早苗がそんな奴と付き合っていただなんて…僕は絶望で思わず泣きそうになってしまった。

 

「まったく…この際だからついでに言わせてもらうけどね。人の誕生日に変な事しないでくれる? 最悪の誕生日になっちゃったじゃない。そもそもあなたが私と付き合おうなんて100年早いわ。幼馴染だからって調子に乗りすぎよ。横浜君みたいなイケメンになって出直してきなさい。そうしたらATMぐらいにはしてあげるわ。おっと…部活に遅れる。じゃあね」


 彼女はそう言うと僕をひと睨みして運動場の方へ行ってしまった。


 僕は彼女が去った後、精神的に立っていられなくなりその場で膝をついた。確かに僕はよく平凡な顔をしているとよく言われるけれど、そこまで言わなくてもいいじゃないか。


 何がダメだったのかなぁ…? 康太の意見を鵜呑みにしたこと? 僕がイケメンじゃなかった事? それとも全部…かな?


 僕の頭の中でグルグルと沢山の疑問が回る。そうして日が暮れるまでの間、僕は校舎裏で佇んでいた。


 僕はこうして幼馴染にフラれ、失恋した。



○○〇


どうも、作者の栗坊と申します。お初お目にかかる方は初めまして! もうすでに知っているという方はお久しぶりです。


ヤンデレ美少女との1対1のラブコメ始ました。あとざまぁもあります。

お試し連載で1週間ほど連載して評判がいい様なら続きを書こうと思います。


※連載予定 11/2(木)~11/7(火)までは午前7時と午後19時の1日2話更新。11/8(水)のみ午前7時更新の1話更新の計13話

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