お互いの中にお互いの理性を探しあうみたいな、曖昧なセックスになった。性欲だけじゃないなにかを二人とも探していたのだ。

 明るい部屋で、お互いの目を覗き込んで、ついでみたいに肌に触れた。

 快楽は確かにあったのだけれど、それを追うには 七瀬は追い詰められすぎていたし、章吾は真面目すぎた。

 繰り返した口づけだけが、誠意だという気もした。いや、それともそれとてただの粘膜接触に過ぎないのか。

 行為が終わった後、七瀬が章吾に詫びた。

 ごめん、と、ひとこと。

 なにが、と章吾も一言かえした。謝罪を受け入れるつもりはなかった。

 七瀬が先にベッドから立ち上がり、グレーのシャツを身に着けた。章吾はその背中を見ていた。見なれた幼馴染の後姿。

 さっきまでのセックスを思い出さなければ、ただそれだけで済む。

 ただ、思い出してしまえば下肢が熱くなる。章吾はもう、この幼馴染と得られる快楽を知ってしまっている。

 「……ゲーム、しよう。」

 ぽつん、と七瀬が言った。

 章吾はベッドの上に転がったまま衣服を身に着け、七瀬の隣に座り込んだ。

 そして二人はゲームをしたのだ。たった今してしまったセックスを、なかったものにするみたいに。

 ゲームは普段通りに盛り上がった。ただ、二人が常のように肩を小突き合ったり腕をつかみあったりすることはなかった。

 そのことから、互いに目を逸らしたまま。

 訊けばよかった、と、今現在の章吾は思う。

 セックスをしたことは正解だったのか不正解だったのか。

 ただの幼馴染でいるのが一番だったのではないかと。

 それでも、とにかく二人はセックスをしてしまった。それが最初で最後のセックスになることもなく、翌日も、その翌日も七瀬の部屋でセックスをした。

 性欲、だったのだと思う。

 15歳の性欲。

 だんだん互いの正気を探り合うような息苦しさは消え、ただ快楽を求めあうだけのセックスに変わっていった。

 最初のセックスの記憶を辿り終えた章吾は、深く肺の底から煙草の煙を吐き出した。

 あの頃、章吾はセックスと同時に煙草を覚えた。

 因果関係は分からない。もしかしたら、体内に溜まった澱を吐き出せたらいいなんて思ったのかもしれない。

 一本目の煙草をフィルターぎりぎりまで吸い終え、もう一本の煙草に火をつける。

 最初のセックスから10年。今、幼馴染は花に埋もれてお経なんかを聞かされている。

 冗談みたいだ、と思った。

 これが冗談じゃないなんて、そんなのは許せない気がした。







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