3.エンジェライト


『何があっても、ワタクシを守って、そして、どんな戦いも勝って、生き抜いて、どうか死なないで』



ユエ姫様に、耳元で囁かれた台詞が、何度も繰り返し繰り返し流れ、シンバはガバッと起き上がった。



ライフルで撃たれた筈と、胸元を触ると、ガチャっと金属のような音が鳴り、それを服の中から出すと、ソレはユエ姫様がくれた鏡のペンダントだった。



そのペンダントの鏡は割れて粉々だが、銃弾が減り込んでいて、このペンダントの御蔭で、助かったんだと知る。



シンバは、なんでオレを助けたんだと、ペンダントを責めるように見つめる。



助けるべき人間はオレじゃなく、ユエ姫様だろうと——。



何をやっているんだと、ペンダントに苛立ちをぶつけているが、それは自分自身への苛立ちだった。



「・・・・・・割れた鏡の裏に何か文字が——?」



割れてしまった鏡の破片の裏に文字らしきものがあり、シンバは、服の中から、鏡の破片を全て取り出すと、パズルのように、カタチを修復し始める。



幸い、鏡は、大きめに割れていて、ひとつひとつのピースが細かくない為、うまく修復できそうだ。



「・・・・・・これは・・・・・・確かエンジェライトの紋章・・・・・・?」



鏡の裏にはエンジェライトの紋章が描かれていた。



「なんで・・・・・・?」



そういえば、賊達が、エンジェライトの王が同盟を結ばない国は世界から排除するという命令を出したと言っていたと思い出す。



とりあえず、ゆっくりと起きた出来事を思い出しながら、周囲を見渡す。



荒れ放題になった城の中には、あちこち、騎士達の死体が転がっている。



誰か生きている者はいないだろうかと、探してみるが、王の死体まで見つけてしまい、愕然とする。



「オレが弱いから・・・・・・」



『何も失いたくなければ、強くなる事だ』と、賊の親に言われた事を思い出し、



「また全て失った・・・・・・」



そう呟く。



全て? いや、ユエ姫様がどこにもいない。



もしかしたら、ユエ姫様と騎士隊長は、うまく逃げれたのかもしれないと、シンバは、僅かな希望を胸に抱いた。



ユエ姫様が生きておられるならば、この状況をどうすればいいのだろうか。



「何も失いたくなければ、強くなる事だ」



賊の親の言葉を、自分の口で吐き、エンジェライトの王を潰してやると、リーフェル城を出る事にした。



城下町も、死体やら、泣き声やら、この世の終焉を迎えた景色が広がっていた。



国がこうなってしまっては、このエリアも終わりだろう。



終わらない為には、どこかで生きておられるであろうユエ姫様が、王として、再び、この地に降臨するしかないだろう。



そして、どこかで身を隠しているユエ姫様が、この地に戻ってくるには、今回の戦を仕掛けたエンジェライト王を潰す他ない。



しかし、この辺の賊達もエンジェライト王の味方だとすれば、厄介だ。



なるべく誰にも見つからず、エンジェライト迄、辿り着きたい。



今のシンバは、ライフルの弾の衝撃で、アバラがやられ、呼吸をするのも苦しい。



戦いになると、今度こそ、完全に負け、死ぬだろう。



とりあえず、痛み止めの薬が必要だと、リーフェルエリアにある港町に行く事にした。



港町なら、船で多くの人が訪れ、いろんなものが売り出されている為、薬ぐらいあるだろうと考えた。



それにエンジェライトへ向かうなら船に乗らなければならない。



空には太陽が輝いている。



賊達がリーフェル城を襲った時、ユエ姫様の部屋にいたシンバは、バルコニーで上弦の月を見た記憶がある。



あれから何日経っているのだろう。



ギラギラ光る太陽に、嫌な汗を流しながら、前へ前へと歩いて行く。



「全面戦争だろう」



何とか夕方には、港町に着き、最初に聞いた台詞がソレだった。



と言うか、思った以上に人が沢山いて、身動きがとれない程で、悪気はないのだろうが、直ぐ隣の人が、シンバの腹部に肘を当て、激痛の余り、倒れそうになる。



これだけギュウギュウに人が傍にいると、別に聞く気はないが、前や後ろ、左右にいる人達の話が聞こえてくる。



「エンジェライトがリーフェルを堕としたなんてねぇ」



その台詞に、シンバは驚いた。



もう噂が広まっている。



一体、あれから何日経っていると言うのだろう。



「あ、あの・・・・・・リーフェルを堕としたって・・・・・・いつの事ですか?」



隣の人に、そう尋ねると、隣の男は、ジロリとシンバを見て、



「きったない奴だなぁ」



そう言った。



着ている服も黒装束で、ライフルで撃たれた所から布がボロボロにほつれ、肌も褐色に塗られていたものが、汗などで剥がれてきていて、白い肌の部分も見えているし、髪も黒から金髪に戻っている部分もあり、確かに見た目的にも汚い。


どこか水辺で綺麗にしてくれば良かったと思う。



「いつって、最近だと思うが、エンジェライトがリーフェルを堕としたって言う話だ。それで、皆、もうこの国は終わりだと、エンジェライトへ向かう為、船に乗ろうとしているんだよ。エンジェライトは20年くらい前から新しくなり、まだ民が少ないらしく、住みたいと言う人間を割と簡単に受け入れてくれるって言うからな」



前にいた男が、そう話してくれた。



「リーフェルがエンジェライトに堕とされたのに、それなのにエンジェライトへ!?」



思わず、そう叫ぶシンバ。



「リーフェルは裕福な人間にとっては住み心地のいい場所だが、金のない者に対してはリーフェル王は無関心に等しかったからな。町の治安も悪くなる一方だったし。それが国として成立できなくなるのなら、無理にここに留まる理由はないだろう。こうなったら素晴らしい時代が来るという月天子帝国の建設も中止になるだろうし。ならば勝利を治めたエンジェライトへ行った方がいいに決まっている」



その台詞に、シンバは愕然とし、人の流れに流されるまま。



王と民達の間に、全く絆がない事を知った。



確かに貧民だった頃、賊になった頃、もしそのままのシンバだったら、リーフェルがエンジェライトに堕とされたと聞いても、シンバは、無関心だっただろう。



だが、それはシンバが国の民として存在していた訳じゃなく、貧民であり、賊であったからで、ちゃんと国が許可している名のある町に生まれ育っていたら、もっとリーフェルに愛着があってもおかしくないと、シンバは思っていた。



普通に船に乗ろうとしていると言う事は、ここに集まった人々は、皆、ちゃんとした町の民の筈なのに、どうして——・・・・・・。



「でもエンジェライトは同盟を結ばない国を全て排除すると言っているそうで、今回、リーフェルが堕とされた事で、エンジェライトと同盟を結んでいない国は、エンジェライトと戦う気でいるようだ。今、世界はエンジェライトとの同盟国と、反対国の二つに分かれているらしいから、こりゃ全面戦争になるだろうな」



「しかし、同盟同盟って、何に同盟なんだ?」



このエリアの民達は、世界のちゃんとした情報さえ、流されていない。



大して危機感もなく、国を捨てようとしている。



民達は、この国も、王にも関心がなく、それは王が民に関心がない事を表していた。



リーフェルは、とっくに終わっていたんじゃないだろうかと、シンバは思う。



それでも、シンバが見てきたものは、ユエ姫様であり、ユエ姫様への感情は、リーフェル王国を愛する事でもあった。



いつの間にか、シンバは、ユエ姫様に仕える事で、愛国心を持っていたのだ。



どうにかしなければと思うが、どうすればいいのか、わからない。



例え、今、ユエ姫様が戻ったとしても、リーフェル王国に、民達は誰も残らない。



本当にリーフェルは終わってしまう——。



やっと船の順番が来て、人の流れに流されるまま、乗り込むが、シンバは船に乗った事さえ気付かず、ぼんやりと、これから先の事を考えている。



ふと、空に浮かぶ十日夜の月が目に入り、ハッとする。



いつの間に船に乗ったのだろう、いや、それよりも、上弦の月から十日夜の月まで数えて3日は経っているんだと、シンバは3日も気絶していたのかと自分の情けなさに深い溜息。



今頃、ユエ姫様も、この月を見上げているだろうか——。



どこで、どうしておられるのだろうか。



無事でいてくれれば良いがと、願うばかり。



船内も人込みで、ごちゃごちゃしているので、余り動かず、海風にあたりながら、座り込んでいると、いつの間にか寝てしまい、気がついたら、もう太陽は高かった。



アバラが痛くて、呼吸も苦しくて、気分が悪いと言うのに、大変な事態になる。



エンジェライトへ向かう者達が多く現れたので、この船は急遽、手配されたらしく、客船ではない為、乗船料は安くなっていると言うのだが、シンバは、金を持っていないのだ。



乗る時は混雑していた為、降りる時に、一列に並び、金を払うよう、船員に説明される。



それにしても、もうエンジェライトに着くのかと思えば、まだ丸一日はかかると言うし、そこから、また船を乗り換えるらしい。



遠い向こうの国なんだなぁと思いながら、キラキラ光る波を見つめた。



とりあえず、降りたら、樹脂か何かを手に入れ、ペンダントの鏡を張り合わせなければと思いながら、シンバはアバラの痛みから逃れるように、また眠りに着いた。



そして、船の乗り換えの為、港に降り立つ時、うまく人に紛れ込み、金を払わずに船から出る事ができ、シンバは、その港町をうろつく。



広場の水辺で、顔と髪を洗い流すと、金髪と白い肌になり、シンバは噴水を覗き込み、水に映る自分を見る。



アバラの痛みのせいで、直ぐに顔に脂汗が吹き出て、洗っても洗ってもベタつく。



参ったなぁと空を仰ぎ、金がなければ痛み止めの薬も買えないと溜息。



こうなったら、盗みでもするかと、市場通りへと足を向ける。



貧民の子供は盗みが得意だ。



逃げ足も速い。



賊は力で人から物を奪うのが得意だ。



戦いも慣れている。



そう考えれば、シンバは物を盗む位、今迄して来た事で、容易いと、リンゴやモモ、オレンジなどの果物を素早い手の動きで、懐に入れる。



見つかったら、戦えばいい事だと、大胆にも、沢山の食べ物を懐に入れていく。



流石に市場に薬は売られていなかったが、樹脂は手に入った。



腹も膨れれば、体力も回復し、多少、痛みも和らぐんじゃないかと思い、広場に戻ると、果物を鱈腹食べたが、アバラの痛みはそのままだった。



今度は、ペンダントの鏡を樹脂で張り合わせ、元通りとはいかないが、何とか修復できた。



そろそろ次の船の出港だろうと、港へ足を向けた時、目の前を青いマントを着て、フードを被った男が横切り、その男も港へ向けて歩いて行くので、一緒の船だろうかと思いながら、その男を見ていた。



港はやはり混雑状態。



気がつけば、マントの男が隣に立っている。



その男の手は、シンバの手と同じで、戦ってきた者の手をしていた。



顔を覗き込もうと、少し前屈みになるが、



「——っ!」



アバラが痛み、妙な体勢は苦しいと、結局、男の顔は拝めないまま。



日も暮れて、やっと船に乗り込むと、また船の中も人が大勢いて、シンバは海風に当たりながら、ぼんやりと過ごす。



——あぁ、十三夜月か。



——綺麗だなぁ。



十三夜月は、満月の次に美しいと言われる。



確かにそうだとシンバは空を見上げたまま。



そして、シンバは、懐からペンダントを取り出して、月とどっちが綺麗だろうかと、見比べてみる。



月の光に鏡が反射して、その光が船の壁に当たると、そこにエンジェライトの紋章が浮き出る。



「これ、仕掛け鏡なのか・・・・・・? じゃあ、ユエ姫様が思いつきで、鏡を取り外し、エンジェライトの紋章を描き込んだって訳じゃなさそうだな、この鏡を作った人が、エンジェライトの紋章を描いたんだろうけど、だとしたら、エンジェライトの者の仕業だよな、わざわざ違う国の紋章をこんな風に綺麗に描かないだろうし・・・・・・」



ユエ姫様はエンジェライトの誰かと知り合いなのだろうかと、シンバは考えるが、考えても答えなど出ないので、鏡を懐に仕舞い、深い溜息。



波の揺れのせいかと思っていたが、どうやら頭がクラクラしているのは、熱があるようだ。



シンバは眉間に皺を寄せたまま、目を閉じて、呼吸荒く、蹲っていた。



もう駄目だと、コテンと横になると、青いマントの男が、近寄って来て、何か言っているのがわかったが、何を言っているのか、そこまでわからなくて、シンバは虚ろな瞳で、男を見ていた。



気がつけば、まだ船の中だが、ベッドの上で、しまったと飛び起きると、



「あ、お客様、お連れ様がごゆっくりと体を休ませた方がと——」



と、船員が、シンバをベッドに寝かせようとする。



「つ、連れ? っていうか、ベッドで寝かされても大金は払えないし」



金を払わず、またどさくさに紛れて、船から出ようと思っていたが、顔を覚えられたら、そうもいかないと、慌ててベッドから出ようとすると、



「いえ、お金の方はお連れ様が払われましたよ? それから、この薬をどうぞと——」



と、船員は薬と水を差し出してくる。



「・・・・・・あの、連れって?」



「はぁ、あの青いコートを着た男性です」



「・・・・・・その人がオレを——?」



誰だろうかと、シンバは考え込むが、誰なのか、サッパリわからない。



——賊でもなさそうだし、騎士って感じでもなさそうだし。



——旅の剣士って肩書きが合ってそうだったけど、そんな奴、知り合いにいないしなぁ。



——しかも船員に薬まで渡すって、毒薬なら、人に気付かれずに飲ますだろうし。



とりあえず、大丈夫だろうと、差し出されている薬を飲み、何の目的でこんな事をして来るのかは、わからないが、用があるのならば、ここに会いに来るだろうと、ベッドに横になる。そして薬のせいか、すっかり眠り込んでしまい、そのまま港に着いてしまった。



結局、青いマントの男は寝室に現れず、港でも、その姿を見る事はなく——。



一体、誰だったのだろうと思いながら、エンジェライト行きの馬車に乗ろうとして、やめた。



金がないし、馬車だと、人数が限られていて、船と違い、誰かに紛れて降りる事はできないだろう。



仕方ないから歩いて行く事にするが、それにしても、凄く寒いと、シンバは両手で自分を抱き締めるように二の腕を掴む。



そして、ふと気付く。



「・・・・・・あれ、青いマントじゃなくて、コートだったのかも——?」



そういえば、薬と水を差し出してくれた船員も、



『——あの青いコートを着た男性です』



そう言っていたなと思い出す。



まぁ、いいやと、兎に角、歩いていれば、少しは体が温まるだろうと、港を出て、エンジェライトへ向けて歩き出す。



馬車が行った方へと歩くが、地図もない為、この方角で正しいのかが不安だ。



暫く歩き続けると、次の馬車が大勢の人を乗せて通って行く。



そして、前の馬車は港へと戻っていく。



エンジェライトへ向かう人が多い為、馬車は行ったり来たり。



確かにこの方角で正しいようだと、シンバは安心する。



やがて、空からチラチラと雪が降り出した。



初めて見る雪に、少し感動し、足を止め、思わず手を広げ、空を見上げる。



——灰色の重い雲・・・・・・。



——そうか、雪が降る空に、月は見えないのか。



そして、自分の息の白さにも気付き、意味もなく、ハァッと白い息を吐き出す。



ブルッと寒さに身を震わせ、立ち止まっている場合じゃないと、再び、歩き出す。



夜になる前に着かないと、凍え死にそうだと思うが、エンジェライトらしきものは全く見えない。



馬車は行ったり来たりしているから、この道で間違いないだろう。



それにしても、こんなに無防備に馬車が同じ道を通るなんて、賊に襲われないのだろうかと、シンバは不思議に思う。



空は相変わらず灰色で、暗いのか明るいのかさえ、よくわからない。



やっと城が見え始め、アレがエンジェライトかと思った瞬間、後ろから馬の蹄鉄の音が近付いて来た。



パカラパカラといい音が鳴り響き、振り向くと、今、シンバの真横を、青いマントの男が立派な馬に跨り、通り過ぎていった。



振り向いたにも関わらず、また振り向いて、馬と男を見送るシンバ。



「あの男だ・・・・・・あの男もエンジェライトに!? 何者なんだ?」



男を追うように、シンバもエンジェライトへ急いだ。



エンジェライトの城下町は、人で賑わっていて、宿は満室の看板が出ていたが、多くの人が泊めてくれと宿の前に溢れている。



こんな寒い場所では野宿と言う訳にはいかないだろう。



だが、シンバはこの町に住みたい訳じゃないし、観光に来た訳でもない。



無一文でリーフェルから、ここに来たのは、エンジェライト王を殺す為!



刺し違えても絶対に殺してやると、気合を入れるシンバ。



いや、もしかしたら、ユエ姫様はこの城に捕らわれているかもしないと、シンバは城を見上げ、中へ入って行く。



門番に止められたら、月夜烏を抜こうと思ったが、門番は特にシンバを止める様子もなく、簡単に中に入れてしまった。



城内にも関わらず、直ぐに庭が広がり、シンバは庭を見回す。



真っ白に積もった雪の中に、薔薇が咲いている不思議な御伽噺のような光景。



その庭で、青いマントの男が馬に餌を与えながら、よしよしと馬の鼻部分を撫でている。



——あの男、エンジェライトの騎士だったのか?



——雰囲気からして騎士隊長って所か?



「エンジェライトへの移住願いですか?」



ぼんやりと、突っ立っていたシンバに、エンジェライトの紋章の入ったスーツを着た男が話しかけて来たので、ビクッとしながら振り向くと、



「受付はあちらです、最後尾にお並び頂けますか?」



そう言われた。



——あぁ、そうか。



——門番がオレを止めなかったのは、受付までは自由に誰でも入れるんだな。



「この騒ぎは何事じゃ?」



と、青いマントの男がそう言いながら近寄って来る。



エンジェライトの紋章の入ったスーツを着た男が数人出てきて、マントの男に頭を深く下げながら、



「はい、よくわかりませんが、リーフェルエリアの者がエンジェライトに移住したいと集まってきております」



そう説明をした。



男はフードを外し、マントを脱ぐと、エンジェライトの紋章の入ったスーツの男に、マントを渡し、



「リーフェルエリアの者が? それにしては人数が多すぎじゃ、不可解じゃのう」



と、首を左右にコキコキ鳴らし、肩が凝っているような態度で、眉間に皺を寄せている。



シンバは、その男が、誰であるのかと言うよりも、その男の腰の鞘に納められた剣に驚きを隠せず、ジッと見ていた。



——どう見てもカタナだな。



——抜いてみないとわからないが、あの柄の部分からして、父が創るモノに似ている。



そして、シンバは、その男の顔を見る。



30代半ばと言う感じで、綺麗な銀色の髪と青い瞳と白い肌。



まるで雪の精霊のようだと思う。



今、その男が、シンバを見て、



「お主もエンジェライトに移住願いを?」



そう聞いた。シンバは首を振り、黙っていると、



「じゃろうのう、荷物もなければ、無一文じゃろう、移住と言う雰囲気ではないのう」



と、荷物がない事も無一文だと言う事も知っていると言う事は、やはり、船で、助けてくれたのは、この人かと、



「どうしてオレを・・・・・・」



そこまで言いかけて、シンバは言葉を呑み込んだ。



エンジェライトの紋章の入った男達から綺麗なコートを渡され、それを身に纏い、更に、男は頭の上に、王冠を乗せ、



「あぁ、面倒なのじゃが、城では、こういう格好でないと、娘が口を聞いてくれんのじゃ。どうも最近、わしを嫌っておってなぁ、せめて王様らしくしてと叱られてしもうて」



そう言って、驚いているシンバを見ている。



「で? なんじゃと?」



「え? あ、いや、あの、エンジェライト王は・・・・・・?」



「わしじゃが?」



確かにそうだろう、今の姿なら見てわかるが、さっき迄は旅の剣士のようだった為、シンバは困惑している。



いや、それだけじゃない、付き人もなく、王1人で外出をしたと言うのだろうか?



しかも一般の民達が乗るような船を使ったと言うのだろうか?



あの混雑した船に王が乗る?



それに王の手とは思えない手をしている。



シンバと同じ、戦って来た手だ。



「どうした? わしに用があるのか? とりあえず中へ入れ」



と、城の中へ入って行く王に、シンバは呆然——。



普通はこうも簡単に、どこの誰かもわからない者、つまり不審者を城へ招くだろうか。



本当にこの人は王なのだろうか。



もしかしたら影武者なのではないだろうか。



突っ立ったまま、呆然として動かないシンバに、王は振り向いて、



「心配するな、お主をどうこうする気はない。只の興味じゃ、お主の腰の剣にな」



そう言った。



それはシンバも同じ——。



急いで、王の後を追い、王の後ろにつくと、



「お主、どこから来たんじゃ? ここ等の人間ではなかろう?」



歩きながら、問うので、



「・・・・・・リーフェルです、オレはリーフェルの姫の影です」



正直に答えた。王の反応が知りたい為だ。



「リーフェルの姫、そうか、ユエの護衛の騎士か」



と、ユエ姫様をよく知っているかのような口振り。



そして、王の間に着くと、大きな王の座となる椅子に、ドカッと座り、そこにいた者達に、



「この者と2人で話しがしたい故、下がっておれ」



と、王の間に、シンバと二人だけの空間をつくり、



「で、リーフェルの騎士が何をしておる? リーフェルの民がエンジェライトに集まっておる事と何か関係があるのか?」



そう聞いた。



——どうしよう。



——お前がリーフェルに襲撃をかけたんだろうと言うべきか。



——こうも公に話ができると思っていなかったから、考えが纏まらない。



——予定では暗殺しようと思っていたのに・・・・・・。



シンバは黙ったまま、難しい顔で俯いていると、



「リーフェルに戦を仕掛けたんだって?」



と、突然、男が王の間に、ノックもなく、バーンっと勢いよく扉を開け、何の前触れもなく現れ、大笑いしながらそう言って、入って来た。



見た所、これまた王族に近い雰囲気の偉そうな男だが——。



「一週間ぶりだな、で、ダイア王国の同意書は持ち帰れたか?」



「なかなか難しいのう、それより、リーフェルに戦を仕掛けたとは何の話じゃ?」



「知らないのか? ダイア王国にも話は伝わっていると思っていたが——」



と、言いながら、男は、ジロジロとシンバを見ながら、



「リーフェルをエンジェライトが堕としたって噂だ、で、コイツは誰なんだ?」



シンバを指差し、そう言った。



「なんじゃ、そのデマは。道理でその者がわしを訪ねて来る訳じゃな、その者はリーフェルの姫の護衛をしとる騎士らしいのじゃが・・・・・・こっちはフェルドスパーの王子コーラル殿じゃ」



王はそう言ってシンバを見ると、シンバは噛み付くように吠えた。



「デマってなんだよ!? エンジェライトは賊を使い、リーフェルへ襲撃を仕掛けたんだぞ! 賊の一人がエンジェライトの紋章の入った紙を広げて見せたんだ、我が国と同盟を結ばぬ国を世界から排除させると、そう書いてあった!」



「わしがそんな事を書く訳なかろう」



「じゃあ、誰がそんな事をするんだよ!?」



「わしが知る訳なかろう」



「ふざけんな! お前がオレの事を船で助けたりしたのは、何か企んでの事だろう!」



「お主が熱を出しておったから助けただけじゃ、他に理由はない」



「理由なく人を助ける奴なんていねぇんだよ!!!! ユエ姫様を今すぐ返しやがれ!」



「まぁまぁまぁ、落ち着けって」



と、フェルドスパーの王子、コーラルが間に入り、



「つまり、エンジェライトの名を語るバカがいるって事だ」



そう言った。



——それって、本当にエンジェライト王の仕業ではなかったって事か?



——だとしたら誰が!? こんなところで振り出しに戻るって言うのか!?



シンバが一人で考えている間、王と、コーラルは2人で話しを進める。



「しかし、何の目的で、エンジェライトの名を語ったのじゃろう」



「考えられる事と言えば、1000年王国を阻止する為だろうな。平和を語りながら、力で捻じ伏せる遣り方に、同盟国も契約を考え直し始めるってトコだろう。わからないのは、同盟を結んでいない国の中から、何故、リーフェルを選んだかと言う事だ」



「それなら心当たりがある」



そう言った王は立ち上がり、



「タイガを呼んで来る」



と、王の間を出て行くが、コーラルも、



「僕もタイガに用があったんだ」



と、王の間を出て行くから、シンバも取り残されないように、後を追う。



——タイガって誰だ?



——ていうか、本当に王様なんだな、この人。



——それにしては若すぎないか?



——それにこの偉そうな男は王子だって?



——王と同じぐらいの年齢で若そうだけど、オーラ的には王と変わらない感じだな。



——でも背中に剣を背負っているし、王子と言うより、やっぱり騎士に見える。



王は、綺麗な装飾の入ったドアをノックし、開けると、そこには数人のシンバと同い年程の少年達がワイワイ騒いでいて、ドアを開けた王に、静かになったと思ったら、



「お邪魔してます」



と、一人を除いて、皆、丁寧にお辞儀をした。



お辞儀をしなかった一人が、



「お父さん、帰って来てたの?」



と、駆け寄って来た。



状況がよくわからなくて、シンバの頭の中はクエスチョンマークが一杯浮かぶ。



だが、王をお父さんと呼んだと言う事は、このタイガと言う少年は、エンジェライト王の息子、つまり、エンジェライトの王子だと、わかる。



「コーラルおじさんも来てたんだ!」



「おじさんって言うなって言ってるだろ」



と、コーラルは、タイガにデコピンをする。



「タイガ、友達と遊んでおる所、申し訳ないが、ちょっと話がある。良いか?」



王がそう言うと、タイガは、コクンと頷き、



「ちょっと待ってて」



と、他の少年達にそう言うと、部屋から出て、部屋の扉を閉めた。



「リーフェルの姫が攫われたらしい」



突然、そう言った王に、



「おい!! 何故、攫われたってわかるんだ!?」



そんな話はしてないと、シンバは怒鳴り出す。



やっぱり何もかもが怪しく思えてしまうシンバ。



「何を言っておる? お主がわしに、ユエ姫様を返せと言うたのじゃろう、と言う事は攫われたのじゃろう? 違うのか?」



確かにそうだったと、シンバは、



「そ、そうだけど」



と、言葉を詰まらせながら頷く。



「1000年王国を阻止する為に、リーフェルをエンジェライトの名で襲撃したのではと考えておる。世界中の国々から、我が国が疑惑を持たれるかもしれん。わしは、同盟国にこの事を話しに行かねばなるまい。タイガ、お主は、この者とリーフェルの姫を救い出すのじゃ、この者はリーフェルの騎士、姫を救い出す為に遥々、この地にやって来たんじゃ」



と、王が、シンバの背を押し、タイガの前に出すので、



「ちょ、ちょっと待てよ、冗談じゃない、オレは王子の子守なんてしないぞ!」



そう言うが、誰もシンバの声が聞こえてないかのように話が進む。



「お父さんの仕事の手伝いができるんだね! でも、僕でいいの? 僕が同盟国に話をしに行く方がいいんじゃないかな? だってリーフェルの姫を救う方は、お父さんの方が早く解決しそうだし」



「いや、わしでは駄目なんじゃ、お主でないと——」



「どうして?」



親子の会話が続く中、シンバは、オレの話を聞けと訴え続け、コーラルは背に壁を付けて、腕を組み、話を黙って聞いている。



「リーフェルの姫、ユエは、タイガ、お主の婚約者じゃから」



王が、そう言った瞬間、シンバは動きを止め、黙り込み、呼吸も止めているかのように、静かになった。



「僕の婚約者?」



「そうじゃ」



「フゥン、そっか、だから僕が助けるんだね、うん、わかった」



「来月、お主を連れ、リーフェルへ行く予定じゃった」



「そうなんだ、ちょっとビックリしたけど、なんとなく、納得してる」



コクコク頷きながらタイガはそう言うが、納得いかないのはシンバだ。



だが、リーフェルは近々、理由があり、同盟を交わす筈だったと言う事を思い出す。



——そうか、婚約が理由だったんだ・・・・・・。



——そうか・・・・・・そうなんだ・・・・・・そうなのか・・・・・・。



シンバはショックを隠せない顔で、只、俯く。



そしてチラッとタイガを見て、ブラウンの髪とハニーの瞳の、綺麗で、笑うと可愛らしい感じの男だなぁと、思う。



ユエ姫様と結ばれるとしたら、こういう人間じゃないと駄目なんだと、どんどん自分への劣等感が膨らんでいく。



シンバのどん底気分とは無関係に、話が続いている。



「ねぇ、コーラルおじさんは結婚しないの?」



「おいおい、僕の親のような事言うなよ、毎日毎日、見合いばかりさせられて、うんざりしてるんだ」



「なんじゃ、毎日、見合いしとる割りに、気に入った女性がおらんのか?」



「・・・・・・僕には、夢があるんだよ」



と、突然、真剣な表情になるコーラル。



「夢? 1000年王国じゃろう?」



「それは夢じゃなくて現実だ」



「他に何の夢があると言うのじゃ?」



「僕はね、60歳のジジィ間際にピッチピチの20歳前後の女と結婚するんだ! これぞ男の夢だろう! いいか、タイガ! 男とは妥協しちゃいかん!」



ポカーンとした顔でコクコク頷くタイガと、



「アホじゃ」



と、呆れる王と、さっきから、よくわからない緩い状況が度々来るなぁと思うシンバ。



「ねぇ、キミは騎士なのに鎧とか着てないんだね? 真っ黒な衣装で蝙蝠みたいだ」



突然、タイガに友好的に話しかけられ、シンバは何も答えられず黙っていると、



「騎士と言うても、それぞれ役割がある」



と、王が答え、タイガはフゥンと頷いて、



「ねぇ、いつ旅立つ?」



と、また、シンバに顔を近づけ、穢れのない真っ直ぐな瞳と無邪気な笑顔で問う。



困惑したままのシンバに、タイガは、



「とりあえず、友達を帰すね、それから話し合おう?」



と、部屋に戻ろうとして、



「タイガ」



コーラルが呼び止める。タイガが振り向くと、



「僕のソードだ。欲しがっていただろう? やるよ」



と、背中に背負っていた剣を、タイガに渡した。



「ホント?」



「あぁ、来週、誕生日だろ? 18歳の祝いだ」



「いいの?」



「あぁ、この剣はもうお前のモノだ。調度いいじゃないか、旅立ちに必要だったろ?」



「うん! ありがとう、コーラル・・・・・・おにいさん?」



「ははっ、調子いいな、そういう所、母親似だな、まぁ、お前は見た目も母親似か」



と、笑うコーラルに、タイガも屈託なく笑う。



——なんだ、この雰囲気は・・・・・・?



——緊迫感がなさ過ぎると言うか・・・・・・・



——なんかおかしいだろう・・・・・・。



馴染めない空気に、更に馴染めないものが現れる。



小鳥がピヨピヨとローカを飛んで来たかと思うと、パタパタと、足音を鳴らしながら、



「待ってぇ、ピッピー!」



と、ポニーテイルをピンクの大きなリボンで結んだ女の子だ。



ふわふわのふりふりのドレスを身に纏い、銀色の髪と青い瞳と白い肌。



頭の上のティアラは姫である証。



だが、そんな証は必要ないだろう、王にソックリだ。



「あれ、ボクの妹のアイちゃん」



と、聞いてもないのに、タイガがシンバに囁く。



「アイ! 城内で鳥を逃がすなと何度言うたらわかるのじゃ、しかも走るな!」



王が怒ると、アイはぷぅっと不貞腐れた顔をして、



「もう帰って来てたんだ、パパ。帰って来て早々、ホントうるさい」



と、逆ギレ状態に、またもシンバは、わからないと呆気にとられてしまう。



娘とは言え、仮にも王なのに、そんな言われ方!?と、ビックリする。



「コーラルさんも来てたのね」



と、アイはコーラルには、にこやかに、ふんわりしたスカートを広げ、腰を少し下に落とし、丁寧に挨拶をして見せる。



コーラルはアイの頭を撫でて、



「ローカぐらい、みんな走ってるよな」



と、笑う。



「コーラルおじさんはアイちゃんには甘いよね!」



と、タイガがムッとして言うから、



「そりゃ、アイちゃんは僕をおじさんと呼ばないから」



と、コーラルは笑いながら言う。



アイが見知らぬシンバをジィーっと見るが、シンバもアイをまじまじと見ている。



——これがエンジェライトの姫?



——ユエ姫様とだいぶ違う。



——確かに見た目は綺麗だが、お淑やかさに欠ける。



——それに表情からして、お気楽というか、暢気というか・・・・・・



——というか、なんなんだ、この雰囲気!?



——本当に王族か!? コイツ等!?



「おにいちゃんの友達?」



アイがそう尋ねると、



「うん」



と、迷いなく答えるタイガに、シンバはまたも驚く。



——友達!?



——友達ってなんだ!?



——誰も否定しないのか!?



——オレは騙されているんじゃないのか!?



アイはフゥンと頷くと、



「あ! そうだ、ピッピ探さなきゃ! コーラルさん、後でアイの部屋に来て? ママと一緒に作ったお菓子があるから」



と、コーラルを見る。コーラルは笑顔で、



「アイちゃんの手作りお菓子か、楽しみだ」



そう言った。



——姫がお菓子を作るのか!?



——ママって事は妃とか!?



アイがじゃあと行ってしまうので、



「わしにはないのか!!!!」



王が吠えたが、アイは、



「パパのはママが用意してるでしょ、いつも! いちいち聞かないでよ!」



と、プイッと顔を背けると、行ってしまった。



「わしはなんでアイに嫌われておるんじゃろう」



「まぁ、そういう年頃なんだろ、気にするな」



「わしが頭を撫でようとすると怒るぞ! なのにコーラル殿が撫でるのは良いのか!?」



「だから気にするなって」



と、苦笑いのコーラル。



——何コレ?



——何の茶番だ?



——喜劇でも見せられているのか?



「じゃあ、ボクも部屋に戻って、友達を帰すよ。コーラルおじさん、まだ帰らないよね? 僕の旅立ち、ちゃんと見送ってね」



と、タイガが部屋に入ると、



「タイガもわしよりコーラル殿に懐いておるしのう」



溜息を吐き、王がそう言うので、コーラルは更に苦笑いしながら、



「タイガは王を尊敬してるよ」



そう言った。その台詞を吐いたコーラルの顔は真剣で、嘘ではなさそうだ。



こんな下らない話はどうでもいいと、



「あの王子は旅立つ事をアッサリと決めたようだが、そんな簡単な事じゃないってわかっているのか? 言っておくが、オレは足手纏いになる奴を連れて行く気はないし、幾らユエ姫様の婚約者だからと言って、それを簡単に信じる事もできない」



と、シンバは無理矢理にでも真剣な話へと持って行く。



「そうか。まぁ、タイガとは別々に行動しても良い。道は違えど、辿り着く場所が同じなら、どこかで交わる事もあるじゃろう」



「そういうの重荷だって気付かないのか? ユエ姫様の婚約者と聞いて、信じてなくても無視はできないだろう!」



「タイガは重荷にはならんと思うが?」



「・・・・・・ソレ、只の親バカだろ、と言うか、本当にアンタは王なのか? アイツも王子? アンタの息子? 若すぎないか? それにその若さで王って、嘘だろ」



「そんな嘘を吐いて、何の意味があるのじゃ」



「てか、雰囲気が嘘くさいんだよ!」



「そう言われてものう」



「じゃあ聞くが、アイツの部屋に集まっている奴等は、どこかの国の王子達か?」



「タイガの友達は城下町の子達じゃ」



「はぁ!? なにそれ? 王子が町の子を部屋に呼んで遊んでるって言うのか?」



「そうじゃ」



「おかしいだろ、だって、王族って言うのは!」



シンバは、ユエ姫様を思い出す。



そしてリーフェルという国を思い出す。



「大体、この国、ちょっと変だ、危機感が全く感じられない! 馬車も同じ道を行ったり来たり、賊に襲われるかもしれないと考えたら同じ道を通るべきじゃない。そう、まず、そういうの王が知らないから、王と民の絆がちゃんと結ばれないんじゃないのか!」



「賊などおらぬ」



「はぁ!?」



「我がエリアに賊などおらぬ」



王がそう言うと、コーラルも、



「そんな連中がいたら、この王様にお仕置きされてるぞ」



と、クックックッと笑いながら言うので、



「賊は王にどうにかできる輩じゃない! なんなんだ、アンタ達、さっきから、暢気過ぎだろ! この国はどうかしてる!」



怒り露わに大声で、そう吠えた。



「・・・・・・どうかしてるのは、リーフェルじゃないのか?」



コーラルにそう言われ、シンバはキッとコーラルを睨む。



「どこの国も、国に寄り、仕来りも違うじゃろうし、何とも言えんが、ここはわしの国。エンジェライト。変でもお主が感じたまま、それがエンジェライトなんじゃ」



本当は、おかしいのはリーフェルの方だってわかっている。



だが、貧民だったオレ、賊だったオレ、リーフェルの姫の影のオレ、その全てを否定してしまうようで、どうしてもエンジェライトを受け入れられない。



多分・・・・・・オレは・・・・・・タイガという同じ年齢のエンジェライトの王子が羨ましいんだろう・・・・・・。



恵まれた環境に?



沢山の友達に?



綺麗な容姿に?



その全てのようで、どれも違う。



ユエ姫様の婚約者という事が、何より、羨ましいんだ——。



もしも、オレがこのエンジェライトで生まれ育っていたら、また別の生き方をしていたのだろうか——。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る