14-3 対面
「まぁ生きているかは、君のセリフか」
「少佐、どうやって」
「あのプリズンスカイから脱獄するにはこの方法しかなかった。いまの俺は確かに人とは呼べないかもしれないな。そしてこの男もな」
少佐はそう言って、肉片と化したパドロフに近づいた。そして私はその肉片を見て、さらに驚くこととなる。そこには散らばっていたのは肉片ではなかったのだ。シリコン樹脂で作られた皮膚に、プラチナの基盤がぎっしり詰まった鉄の塊だったのだ。
「この計画はもう始まっている。誰にも止めることができない」
首がもげても、体がバラバラになってもパドロフの声はまだ小型スピーカーから聞こえてくる。
「黙れマシーン野郎が」
少佐はそう言ってそのスピーカーを踏み潰した。
「俺とこいつの唯一の違う点は、人間かそうでないかだ」
「パドロフ議長は遠隔操作されているということですか」
「そうだ。だがこいつはフォースギアじゃない。国連のトップはもはや人間ですらないんだ。パドロフ議長ははなから人ではなかった。こいつはAIなんだよ。そのため肉体を持たない。だから死んだわけではない。奴はグランドコンピューターの中にいる」
「そもそも少佐はいったいどうやって」
「その話はヘリに乗ってからだ」
私たち二人はホバリングしているヘリコプターに乗り込んだ。それと同時に少佐は自動航行を止める。手動に切り替えると上昇しながら国連タワーを離れた。
「ああするしかなかった」
「あの電磁パルスも少佐の仕業ですか」
「そうだ。俺は逮捕される前にこちらの体にプラグラムを仕込んでいた」
「自走型のフォースギアということですね」
「言ってしまえばそうだな。俺はフラガとの交換条件で、ラジオ電線への接続プラグを手に入れた。それを使って自走させていたフォースギアにテレポートしたんだ。そのため俺は死んだ。だが生きている。つまり今の俺は量子の重ね合わせの状態に似ているんだ」
「なら、その自走したフォースギアが核爆弾を飛ばしたということですね」
「そうだ」
「いったいこんなことをして……なんのために」
「ユリサキ地上を見るんだ」
少佐にそう言われヘリコプターのハッチから地上を除くと、そこにはもぬけの殻となった洋服が散らばっていた。
「これは……まさか」
「パドロフはまだ止まっていない。このままだと本当に人類は消え去る。それを止めるためだ」
「いったいどうやって……」
「グランドコンピューターを破壊する」
「そしたら少佐だけではない。私もほとんどの人類が死滅しますよ。いまや生物、資源、文化、その各位にコンピューターが組み込まれている。この時代は石器時代に戻すつもりですか」
「いやそれでも、君だけは生き残るんだ」
「私は違法義体をインプラントしています。グランドコンピューターが止まれば、私も停止します」
すると少佐はその言葉を遮るように言った。
「リアン・リー博士の作ったその義体。体によく馴染むだろ。それは君の母から採集した細胞で作られたものだ。つまりフラガの義体とは根本的に違う、機械じゃなく生きている生物なんだよ」
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