13-3 突撃

 手榴弾を手に持った私は走り出した。

 その後をフラガがついてくる。廊下にもオフィスには人は一人もいなかった。恐らくここで働いていた職員には避難命令が出ているのだろう。私は走りながら手に持っていた手榴弾のピンを外した。これは先ほどフラガが階段で投げつけたものとは威力が違う。かなり広範囲の爆発をし、その爆風で車も吹き飛ぶほどのものだった。しっかりとセフティグリップを握りしめると、まるでもぬけの殻になったオフィスのデスクを飛び越えて、持っていた手榴弾を窓に投げつける。私たちの突撃ですでにひびが入っていた窓ガラスは綺麗に割れ、私はその割れた窓に飛び込んだ。

 体が宙に浮き、そのまま投げつけた手榴弾に近づいていく。私がそれを踏みつけると、その瞬間、炸裂した。

 ここまではすべて読み通りだった。吹き飛ばされた私の体は重力に逆らって、上へ上へと吹き飛んでいく。この爆発で足のシリコン外皮は全て燃え去り、合金でできた違法義足が剥き出しになった。これだけ無茶な戦い方をしても、悲鳴すら上げない義体を作ってくれたリアンには感謝しなければならない。

 だが吹き飛ばされた私の体は上には飛んだものの、窓ガラスではなく、壁に向かって進んでいた。私は体を反転させ、壁を蹴り上げようしたが思いほのか勢いがあったのか、私の体は背後に投げ出されてしまった。

 まずい……

 そう思った時には視界から屋上は消え去り、晴天の空が映っていた。

 その時である。私の右足首が引っ張られる。

 その足を掴んだのはフラガだった。

 フラガも私と同じ方法で、飛び上がり、壁にへばりついていたのだ。


「いくぞ!」


 フラガはそう叫びながら歯を食いしばると、私の足を力にいっぱいに屋上に向けて投げ飛ばした。その剛力を幾分にも発揮したフラガの助けで、私の体は見る見るうちに上昇する。そして今度はビルの外壁をしっかりと蹴り上げ、次の足を前に出した。

 ほんの数歩、いやもっとだろうか。私は確かに高層ビルの外壁を垂直に走っていた。

 フラガの力に加え、違法義体の化け物じみた脚力は重力おもいとわずに、まっすぐと屋上へ向かって走り続けた。

 そして私の手はついに屋上へと届いた。

 手を伸ばし、体を持ち上げると、要人どもの足、そしてヘリコプターの風が目を覆う。私は歯を食いしばり、屋上へと体を上げた。


「何者だ、貴様!」


「さっきのテロリストよ」


「まさか……人間か」


 ヘリコプターの周りに集まっていた要人が声を上げた。するとすぐにSPが私を囲む。先ほどまでの警備兵とは鍛え方が違う、だが、フォースギアであることに違いはない。私はホルスターにかけていた手をそっと放し、肉弾戦に持ち込むことを覚悟した。


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