12-3 反撃
「大正解」
「おいおい、ちょっと待て、高軌道から国連タワーに突っ込むっていうのか」
「フラガ、多分それが一番可能性が高いわ。私たちは違法義体をインプラントしているから、ちょっとやそっとでは死なないわよ」
「戦闘機が体にのしかかってきたらそれこそ終わりだぞ」
「大丈夫よ、そこはちゃんと計算するわ」
メンフィスはそう言うと、フラガの神経系を接続した。
「運動エネルギーと重力をかけ合わせれば、最適な入射角は割り出せるわ。問題はビルのどのあたりに突っ込むかよ」
「そうね。妹を救出するにしても、その正確な位置が分からなければ意味がないわ」
「そこは大丈夫だ。俺の右ポケットに入っているタブレットを取ってくれ」
フラガに言われるままに、ポケットに手を伸ばすと小型のタブレットが出てきた。それをタップした瞬間、空間上に3Dホログラムが出現し、国連タワーが映し出された。そしてさらにその建物内を赤い点が移動しているのが見える。
「これなに?」
「あんたが心酔する少佐からの贈り物だ」
「どういうこと? 少佐と会っていたの? いまどこにいるのよ」
「そう質問攻めにするな。俺だってあの人がどこにいるかは知らねぇよ。だがこれは取引だったんだ」
「全然、話が掴めないわ」
「よく考えてみろよ。政府に目を付けられている兄妹がそう簡単に面会できると思うか。それに少佐はどうやってラジオに電波を乗せたんだ。もし仮に乗せられたとしたら、なんでわざわざ発信源を偽ってまでして、暗号を使って座標で位置を教えるんだよ」
「じゃあ……」
「そうだ。あのメッセージを送ったのは俺だ。交換条件として、ミアに発信機を付けることを約束した。あの刑務所は男子房も女子房も存在しない。食事をするときは皆、同じ席に着く。だが少佐曰く、ミアだけは違ったらしい。いつも刑務官と共に行動していたから、接触するのは大変だったとよ」
「ならあの時も妹に面会に行ったというのは嘘ね」
「それはお前が勝手に妄想したことだ」
するとフラガはメンフィスに目を向けて言った。
「安心しな。これがあればミアがどこにいるのか正確な位置情報が掴める」
「ええ、これなら最短で行けるわよ」
その事実を聞いて、思わず固まってしまった私に対してフラガは笑いながら言った。
「別にお前らに協力したわけじゃない。お互いに利用しあったんだ。だからあっちでも妙は気を起こすんじゃないぞ。俺もミアさえ助けられればお前を見捨てる」
「ええ、そんなこと言われなくても分かってるわよ。これはあくまでも復讐よ。私もあんたを利用させてもらうわ」
私はそう吐き捨てると、丸椅子を手に持って片づけていた。そして振り返ると、手術室のドアノブに手を置きながら言った。
「ちょっと優しくしたからって女を買いかぶらないことね」
「いけ好かない女だ」
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