11-1 真実

 メンフィスは徐行させながら、倉庫へと入っていった。


「彼女たちは少佐に懇願したのよ。エリアに移送されるくらいなら、ここで殺してほしいってね」


「じゃあ少佐はその願いを叶えたということ?」


「恐らく少佐は真実を知っていたんでしょ。その引き金は捕虜に向けただけではなかった。そこで殺す行為はまさに政府に弓を引くことと同じ、その瞬間に彼の中で何かが顕在化したのよ」


 するとメンフィスは車を止めて降りた。

 私も車を降り、メンフィスについていくと、彼女は倉庫の奥へと進んでいった。


「元々この場所は貿易の波止場だった。だから大使館みたいなものなの。今では職業訓練学校から逃げ出してきた人たちが避難しているけどね」


「じゃああの女の子もそうなのね」


「そうね、少佐は大人たちを殺したけど、まだ判断のつかない子供だけは殺さなかったわ」


「そもそもなぜ少佐は私に嘘なんかついたの……」


「それはあなたが必要だからよ」


 メンフィスは立ち止まった。


「それが嘘でもいい、この世界に疑問を持つには充分なメッセージだった」


「あなたも少佐と同じ意見なの?」


「私はその筋を調べすぎたのよ。政府が持っている謎や職業訓練学校の黒い噂に興味を持ってしまった。だからもうニューロチップも使えないし、私はデータ上で殺されている。今はこうして難民たちと一緒に生活しているわ」


 メンフィスはそう言うと、ポケットからリモコンを取り出した。

 それを倉庫に向けて、スイッチを入れていると、コンテナが開いた。暗い倉庫内に明かりがつき、そのコンテナの中に隠されていたものが目の前に姿を現した。


「これ……まさか」


「これはリアンがあなたに残したものよ」


 義手義足である。それもただの義手義足ではない。それは違法義体だった。まさにフラガがインプラントしているもの、いやそれ以上の代物である。私はあまりの衝撃に生唾を飲み込んだ。


「これ……リアンが作ったの?」


「ほぼ彼女一人で作り上げたわ。ノバラ専用の違法義体よ。すべてのチューニングは完了しているし、神経系との接続もすぐにできるわ。これをインプラントすれば、フォースギア以上の敏捷性と耐久性、さらに腕力が手に入るわ。だけどこれをインプラントするか、しないかはあなた自身で決めなさい。私はあなたの言われたとおりに動くわ。でもただ一つ言えることは、これをインプラントすれば、あなたはもう人とは呼べないかもしれないということよ」


 私は自分の手足をじっと見つめた。

 この力があれば、フラガとも戦えるだろう。いやそれだけではないリアンを殺すように命じたあの国連タワーにさえ、乗り込めるかもしれない。


「私、いやここにいる私たちはあなたに協力するわ」


 すると倉庫の扉が開く、私の背後には重火器を手に持った難民が笑顔で私を見つめていた。

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