6-4 合流
そこにはアギフ・ジャバードの姿があった。
彼は十数人の護衛に守られながら、通路を進んでいる。恐らくその護衛は相当な戦闘な技術を持っていている。あの距離からガンマの額を正確に打ち抜いたのだ。フォースギアとて制御装置のある頭を打ち抜かれれば、一発で稼働しなくなる。構造は人間であり、ただ痛みを感じず、ほんの少しだけ身体の強化がなされた模倣人間である。
私が柱の陰から小指を出すと、その小指が吹き飛んだ。このスピードと正確性、ここから飛び出した瞬間、ハチの巣になるのは間違いなさそうだ。
「俺が盾になります」
「そんなことはさせないわ」
「俺たちはフォースギアなんですよ」
「私がただの博愛主義者だと思う? いい、ここから飛び出すことができないように、デルタを盾にしたところで、柱がデルタの代わるだけだわ」
「そう……ですよね」
私は拳銃を胸の前に構え、ただ柱に耳を付け、敵の足音が止まるのを待った。
このままアギフの護衛部隊が、足を止めることなく、己の技量のみでここを突破しようとするなら、私たちに勝ち目はない。柱を境にした早撃ちで負けるだろう。
だが相手はフォースギアではない、人間である。
人の命は一つだけだ。いくらの屈強な兵士とて、そんな真似はできないだろう。
足音が止まり、私は次の音を待った。見つめてるのはアギフの部隊ではない。目の前の通路である。
そして次の瞬間――
カンッ……
金属音が響き渡った。
カンッ、カンッ、カッカッカッ……
通路に転がってきのは手榴弾だ。この時を待っていた。私はその手榴弾の軌道を変えるのに一発の銃弾を使った。はじかれた手榴弾は天井まで跳ね上がり、護衛部隊の意識がそちらに向いた。
そしてそれが炸裂すると同時に渡したち二人は柱から飛び出した。
弾け飛んだ無数の破片と熱風を背中に受けながら、その勢いを利用して、走った。無痛のなせる業である。
手榴弾により、護衛部隊には隙が生まれた。ほんの一秒足らずの隙だったが、戦場においてはそれで十分すぎた。
私たちは両腕で頭を守りながら、走った。
そして壁を蹴り上げ、敵の視線を二つに分散すると、拳銃で敵の二人を撃破する。
この時点でかなりの弾を受けているが、四肢が動く限り、私たちが止まることはない。
そして近づけば、近づくだけ、勝敗はその肉体の差で決まる。
素早く敵の懐に入り込み、次々に制圧していった。
「奴が逃げますッ!」
デルタは敵から奪ったアサルトライフルで敵の懐を銃弾を撃ち込みながら叫んだ。その視線の先には地上へ逃げ出すアギフの姿があった。
私はすぐに天井を見上げた。すると真上にマンホールへ繋がるはしごがあった。
だがその瞬間、敵の攻撃を食らい、膝をついた。
このままだと、みすみすアギフを逃がしてしまうことになる。だが護衛部隊を相手にあのはしごを上る余裕はない。
肉弾戦でも鍛え上げられた精鋭部隊十数人と相手をするとなると、ほかに意識を向けている余裕などなかった。
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