6-1 合流
フォースギアは大きく分けて二種類あった。
それは人型と重装型である。主に使われるのは人型だが、戦時中は重装型がその前線を担う。重装型は三メートルほどあり、砲台が取り付けられていて、場合によっては腕なども改造されていた。その装甲も堅く、まさに歩く戦車である。この重装型を扱うのはかなり難しく、限られた人しか操作することができない。うまく使えば、そのパワーを遺憾なく発揮し、戦闘の要を担う。
一方、人型でも、歩兵大隊などの最前線で戦うフォースギアと、私がいま使っているフォースギアはまた別物である。
いわば敵の砲火を一身に受けるフォースギアに精巧な人間味はいらなかった。そのため内部の機械がむき出しになった造りになっていて、見た目よりも装甲を重視している。訓練時に使われるのもこのフォースギアであり、人一型と呼ばれていた。そして人間を模して精巧に作られた人二型のフォースギアは目視による人間との区別はつかない。
肌は血が通っているように、生き行きとしているし、瞳孔の動きまで完璧に再現されている。体のいたるところの神経と連動しているため、内臓がないこと以外はほぼ人間である。さらにリアルを追求するため、怪我をすれば、赤い血が流れる。
肉眼ではその判別はつかないだろう。
降下してから数十分、ついにあたりが騒々しくなった。
街中では警報音が鳴り響き、国連軍の進行が始まったことが、知らされた。だが避難する場所もなければ、降伏する意思もない。人々は天を仰ぎ、軍の勝利をただ祈るのみだった。
「こちらデルタ、ポイントに接近しています。ほかのどうですか」
「こちらアルファ、私も問題ない」
「こちらガンマ、もう見えてるぜ」
「こちらイプシロン、私も問題はありません」
「ベータも大丈夫です」
認証データでお互いの位置は把握しながら、五つのピンはそれぞれ一つのポイントに集まりつつあった。
互いが目くばせしながら、ゆっくりと集まってくる。その合流ポイントの中心にあったのはマンホールだった。
私はそのマンホールの蓋に、音感センサーと自動爆薬を設置した。ここより地下の足音が感知し、そしてそれと同時にマンホールの蓋を吹き飛ばす、そこから強襲する形で、奴らの背後に降り立ち、そのまま制圧する。
それが暗殺計画である。
「よし、これであとは待つだけだわ」
「当たりですかね」
ガンマがマンホールを見下ろしながら言った。
「十分の一といったところね。それが当たりかどうか分からないけれど」
「人の殺すのはハズレな役目ですよ」
イプシロンがそう言って、苦笑いを浮かべた。
「アルファ、ここ少し静か過ぎませんか」
唐突にそう言ったのはベータだった。
ベータの前職は警察官で、その卓越した洞察力から軍部に推薦された男だ。
「いきなり何を言って……」
「いやベータの言う通りだわ」
私もそう言われるまで、気が付かなった。言われてみれば、妙に喧騒が止んでいる。そして気が付けば、この市街地に私たち五人以外の姿がない。
かなり嫌な予感がした。
なにかまずいことが起こる、私の直感はあまり外れない。
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