5-2 オペレーション

 フォースギアに接続された状態で、私たち兵士は電脳空間で作戦の概要と、状況の説明を受ける。視界の先に映像が映し出される。ただし、暗い空間に画面が浮かんでいるわけではない。まるで自分が会議室にいるように感覚に陥る。VR技術と近いのかもしれないが、それほど自由があるわけではない。

 大学の大講義室のような場所の中心に立った本部長が状況の説明を始めた。


「二四分前、軌道衛星、五基が何者かによって、破壊された。まるでこの時を狙っていたかのように、五つの衛星が軌道上に最も近づく、タイミングを見計らって行われている。そしてその爆破によって大規模な電磁パルスが発生した。その範囲は西半球を覆うも程のものであり、現在は地上の電波を使って復旧しているが、この損害でマーキュリー計画の大きな遅延が見込まれるだろう」


 本部長がそういうと、次に画面が切り替わる。

 そこには巨大な核爆弾が映し出されていた。


「これは旧カザフ共和国が秘密裏に制作していた核爆弾である。全長十メートルのこの核爆弾はTNT火薬に換算して、150メガトンの大きさを持っていると推測されている。この時代にこんな兵器を作るなどどうかしているとしか思えないが、今回はこいつが使われた。電磁パルスが発生する数分前、旧カザフ共和国の付近で、天に上る白い線が観測されている。これを行ったのは、この地で反政府組織を構えているアギフ・ジャバードではないかと推測できる」


 次にアギフ・ジャバードの映像が映し出された。


「彼はかねてより、半テクノロジー運動を行っており、先の戦争では、率先して無能力者の民衆を従えた男だ。彼はもともと、エリアの出身である。幼い頃が力が強く、頭もよかった。だが彼の特質すべき点は、そのカリスマ性である。そのゆえに彼は、テクノロジーによって閉鎖された社会に疑問を抱き、その瓦解を目標に活動を始めた。無能力者たちに技術と知恵を与え、その憎悪を原動力とした集団を築き上げたのだ。その卓越する能力で人を惹きつけ、教育システムから落ちこぼれた民衆を立て直している。そしてこの旧カザフ共和国の全土に大きな独立国家を構えた。終戦後、目立った動きはなく、その地の繁栄に従事していたように思えたが、今一度奴らが動いた。我々国連はこのアギフ・ジャバードを特別作戦対象とし、君たち友軍部隊には彼の暗殺を命じる」


 すると旧カザフ共和国の上空写真が映し出された。


「我々国連軍は東ロシアから大規模な電撃戦を行う。それと同時に君たちは空挺し、内部から奴を探し出して、暗殺してほしい。隠密活動になるため、小隊として活動するというより、互いの連絡を取り合いながら、奴を追い詰めるんだ。以上が作戦の概要である。詳しい作戦の進め方は、フォースギアに内蔵されたAIボットに聞くことだ。作戦の成功と君たちの健闘を祈る」

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