3-1 再生

 プリズンスカイはエリア1から遠く離れたアメリカの西海岸に位置した。飛行機と車を使って移動すれば、丸一日かかってしまう。だが、私は直接その場所に向かうわけではなかった。

 エリア1にある提携施設を利用し、生体テレポートで、少佐との面会を始める。提携施設はエリアの中心部に位置し、治安維持本庁の隣である。円柱状に建てられて建物の中に入ると、面会の予約をした。少佐の服役態度からすれば、最大で十分程度の面会をすることができる。さらに私が軍部の人間ということもあり、優先的に面会の枠を獲得できた。

 少佐に家族はいなかった。日本に母親を一人残してきたという話を聞いたことがあるが、もう今では生きているのかすら分からないとのことだ。この五年間、私以外に少佐に会いに行った人はいるのだろうか。もしいないなら少佐はこの真っ白く、何もない空間で、戦争の記憶のみを繰り返していたことになる。

 私が待合室のソファに座っていると、すぐに案内アンドロイドが声をかけて来た。無駄な手続きは少なく、スムーズにドッキングルームへと通された。

 生体テレポートのシステムはフォースギアと同じである。だが、少し違うのは脊椎プラグは使わずにテレポートできるということだ。私の生体情報はデータとなって転送され、まるで向こうにいるような状態で話すことができる。そのためフォースギアのような精密を動きはできないが、人と会話するならこのくらいでちょうどいい。

 ビデオ通話のようなものと考えると分かりやすいだろうか。だがより多角的に鮮明に、まるで相手を直接会っているような正確な情報をテレポートできるのだ。これは半メタバースの技術である。

 現在では施行されてないが、そのうち生体テレポートの情報空間のみでの接触が可能になるだろう。そうなれば、人類がこの地球を去る日も近い。それが悲観的な未来か、楽観的な未来は判断しかねるが、文明の進化が止まることだけはない。

 私は指示に従い、寝台に横になった。頭の上には棺桶に似たカプセルがあった。寝台からモーター音が鳴り響き、ゆっくりとそのカプセルに吸い込まれていく。

そこで私の肉体情報を3Dでスキャンするのだ。その情報をもとに作り出されたホログラムは転送され、少佐の前に実態として現れる。

最後に麻酔ガスがカプセル内に充満する。

結局、この技術の原理は夢なのである。脳はシナプスという電気信号で動いている。そのためアダプターを脳に直接取り付けずとも、ある一定の電波を当てることで、その夢は簡単に操作できるのだ。針の振動で音楽を奏でるレコーダーと同じである。そもそも私たちが現実として、見ている視覚情報も網膜を通り、三原色を基準に色分けされた電気信号に過ぎないのだ。鮮明な夢は現実とさほど区別がつかない。

 目を瞑り、そして再び目を開けた時に私の意識は遥か数千キロ先にあった。

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