第22話 旧王都にて
ノルケンタビス教団の討伐部隊が作られていることも知らずに、アルゴは今日も旧王都にて布教活動をするようだ。
アルゴが出発したすぐ後、ヤマト宛てにローツから手紙が届いた。
「ヤマト。ローツさんから何の伝言だ?」
「俺にもさっぱり。」
ジェンゴが手紙を覗く。
「なになに...。王都軍の指揮官キリアからなる教団討伐部隊が組まれた。彼女らは旧王都を中心に目を配らせているので注意するように。だってさ。」
「それって、アルゴさんが危ないんじゃ...。」
「あっ!」
ジェンゴがが慌てて空を見回すが、そこに聖竜の気配はなかった。
「キリア部隊長。お言葉ですが、あんな巨大なドラゴンにどう太刀打ちするのですか。」
「私を信じろ。策はある。」
それだけを言うとキリアは見張りに戻った。
すると彼女の目の先に巨大な陰が。
「現れたかノルケンタビス教団。」
聖竜がすぐそばまで近付く。それを待っていたかのようにキリアは魔法の杖を振るうと、地面が光りそこから投石器が辺り一面に現れた。
「これは?!」
「勇者様の出陣の時に使った転送紋を使わせてもらったのだよ。」
当然現れた投石器は、王都と旧王都を繋ぐ巨大な転送紋によって一瞬で王都から運ばれたのである。
「今日で終わりだ!!ノルケンタビス教団!!」
投石器を魔法で動かし、聖竜に向かって地上から魔石の雨を降らせた。
「何か飛んでくるぞ。家に隠れろ!」
ノルケンタビスが叫ぶ頃には大量の魔石が彼の背中の上にも到達しており、小屋は魔石で穴だらけになっていた。
「いったい誰が?ノルケンタビス様見えますか?」
アルゴが聞く。
「明らかに人間領からだ。多分、魔物の仕業ではない。」
「なぜ人間が?」
その時、アルゴの頭に魔石が当たる。
「アルゴさん!大丈夫ですか!」
アルゴは倒れ込み、返事をしない。
「アルゴはどうなったんだ!」
「魔石に頭を打たれて倒れてしまいました。」
それを聞き、ノルケンタビスは引き下がる事にした。それにノルケンタビス自身も魔石が体の至る所に当たりこのまま飛行し続けることは困難な為、そう判断した。
「おぉ!聖竜が逃げて行きます。」
「何を見ておる!追わないか!」
「失礼いたしました。」
キリア達は逃げる聖竜を馬で追いかける。
普段は雲の上に隠れて見えないが、魔石の攻撃により負傷した聖竜は高く飛べずにいたので、何処までも追いかけた。
しかし、流石はドラゴン。追いかけるには、全速力で馬を走らせなければならない。その為、いつの間にか馬が息切れを起こし、ノルケンタビス教団には逃げられてしまった。
「逃げられましたね。」
「ああ。でも奴らは大陸のずっと西に居るということが分かっただけでも十分だ。」
その後もキリア達は休み休み、西に馬を進めた。
ノルケンタビスは島に着くと海に向かって落下する様にして着陸した。
「何事だ!」
海に落ちたノルケンタビスの元へ島民は集まった。
「どうしたのです?」
トカゲ男とヤマトもそこにいた。
穴まみれ小屋から教団が下りてきた。その中に、倒れたアルゴを背負った団員がヤマトに見えた。
「アルゴさんに何が?」
「突然、下から石が飛んで来て、それがアルゴさんに当たったのです。」
団員も何が何だかわからない様子。
「まさか、ローツさんの手紙の...!」
夜が過ぎ、朝になってもアルゴは目を覚まさない。
ヤマトはノルケンタビスに昨日何があったか聞いた。
「昨日。旧王都の上空を飛んだいたら突然、地面から魔石がこちら目掛けて飛んできたんだ。きっと、それがアルゴに当たったのだろう。」
「ノルケンタビスさんは大丈夫なのですか?」
「一晩したらなんてことない。」
しかし、体には無数の傷痕があった。
「しかし何者が儂を狙ってきたのか。」
「多分、王都の者です。」
「確証は?」
「同じ王都で働く人からノルケンタビス教団を襲う組織が出来たと聞いています。」
「ほう。本格的に儂らを潰しにきおったな。王国も。」
「だからもう、大陸には行かないで下さい。」
「それはどうかな。そういう事はアルゴ決めることじゃ。」
教団の代表であるアルゴがいなければ何も決まらないので、ヤマトはアルゴのとこへ行くことにした。
「どうか目を開けて下さい。」
アルゴの家は島民で溢れかえっていて、その人だかりは家の周りにも広がっていた。
「おう!ヤマト。」
「どうも、ジェンガさん。」
「お前も見舞いか?俺はそうなんだが、見ろよこの人の数。」
「凄いですね。」
「やっぱ、慕われてるのかねえ。」
今日は顔を見ることができなそうだったので、ヤマトは日を改める事にした。
「オークの町、陥落しました!」
「よし!どんどん進め!!」
勇者は出陣して以降、次々に魔王軍に勝利を重ねていた。
「なんて楽なんだ勇者は。剣を振っているだけで魔物は倒せるし、生まれ変わって良かったー!」
「勇者様!大変です!我々討伐隊の補給線が魔王軍に潰され、このままだと食糧が尽きてしまいます。」
すると頭にきた勇者は、報告をした兵士の首を切り落とした。
「無能が。なにしてんだ。」
参謀の進言で補給線確保のため進軍を止めることになったのであった。
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