第20話 力の神

「あなたは神様の生まれ変わりですか?」


 ヤマトの質問にドラゴンは目を点にした。


「今までアルゴにしか気付かれなかったのに、よくわかったのぉ。」


「それは女神様から聞いていたので。」


 ドラゴンは納得した様子。


「改めて、儂はノルケンタビス。力を操る神じゃ。」


( ....!! )


 ヤマトは何かを思いついた。


「そんなに驚いてどうした?」


「力を操る神様なんですよね。それなら俺を強くしてください!」


 今度はノルケンタビスが驚く。


「できなくはないがお主、正気か?お主が一番、力の怖さをしっておろうに。」


「どういう意味で?」


 少し呆れた様子のノルケンタビスは口を開いた。


「今の勇者のことじゃよ。」


 その言葉で、ノルケンタビスが何が言いたいのかに気付くヤマト。自分の発言を思い出して顔を赤くする。


「で、でも俺は勇者なんかとは違うし...。」


「皆、力を手に入れる前そういうのだ。あの邪神だってそうであった。」


「邪神?」


「いや何でもない。」


 ヤマトは邪神についてもっと聞きたかったが、彼が邪神のことを口にした時の悲しそうな顔を見てこれ以上は聞かない事にした。


 静かになってしまったのでヤマトが元居た世界の話をしていると、アルゴが後ろから走って来た。


「大変です!魔王軍に『ノイロン』の街が襲われていると、大陸の仲間から!」


「勇者は?」


 ノルケンタビスよりも先にヤマトが口を開いた。


( まさか、あの野郎...。 )


「ヤマトさんもいたのですね。勇者は魔王軍領に侵攻中の為、街には間に合わない様です。」


( さすがにあの勇者でも、人を見殺しにしたってわけじゃないんだな。 )


 少し安心したヤマトだった。


「そんなことより、今すぐ出発の用意を!」


 とノルケンタビスは言い、戦える者を集めさせた。


「ヤマトさんも来てくれますよね?」


「もちろん。」


 ヤマトはアルゴの顔を見て答えた。




 出発の為、ジェンゴや島民達がノルケンタビスの背中に乗り込んだ。


 するとノルケンタビスは羽を大きく羽ばたかせ離陸した。


「三日ぶりですねヤマト様。」


 そこにはトカゲ男とアリアも搭乗していた。


 ノルケンタビスは滑空速度をあげていったので、ドラゴンの背中にある小屋の壁にヤマト達は叩きつけられた。


「痛いよー。」


 アリアが叫んでいる間にノルケンタビスは、襲われている街の上空に到着した様だ。


「お前たち!着いたぞー。」


 ノルケンタビスがそう伝えると、背中の上にある十数のボートに皆で乗りだし始める。


「アルゴさんこれは?」


 ヤマトはこの光景を訊ねた。


「ああ、皆さんがボートに乗っているのは、それで着陸するためですよ。ヤマトさんも急いで。」


 するとボートは魔法の力で浮き、次々に地面に向かって降下した。ヤマトも遅れまいと残るボートで着陸した。


 地上では街の兵士達と魔王軍の攻防が繰り広げられている。


 そこでジェンゴは浮遊しているボートから、自身の身長よりも大きな弓から矢を放った。その矢は魔王軍の兵士を三体貫くと。


「助けに来ましたよ!」


 と大きな声で街の住民達に伝えた。


「おお。援軍がきたぞ!」


 兵士達は喜びの声を上げ士気が高まる。均衡状態だった戦況が崩れ、ノルケンタビス教団と『ノイロン』の兵士達がその場を圧倒した。

 

 ヤマトも王から貰った輝く剣で魔物を鎧ごと切り落とす。


「凄いなこの剣の切れ味。」


 一方魔王軍陣営は撤退するか否かで揉めていた。


「何なんだ!あの空の巨大なドラゴンと、そこから現れた奴らは聞いてないぞ!」


「落ち着いて下さい。ゴルダン様。まだ勝機はあります。」


「なんだそれは?」


「はい。一時的に撤退しましょう。」


「できるか!百戦錬磨のこの俺様の経歴に泥を塗るつもりか!」


「いえ、そういう訳では.....。」


 魔王軍将軍ゴルダンと参謀は話に決着がつかないでいると、そこにヤマトとアリアが現れた。


「お、お前は.....!」


「叔母さんの仇。」 

 

 ゴルダンを目にした二人は驚いた。しかしゴルダンには心当たりが無いようだった。


「二人共、誰?」


 それに怒りヤマトは、ゴルダンにいきなり切りかかった。だがゴルダンはひらりとそれをかわす。


「危ない危ない。急に攻撃するのは反則だよ。」


 すると今度はゴルダンが一瞬にして炎に飲まれた。アリアの魔法だ。


「これで消えて下さい。」


 アリアはそう願うが、何事もなかったかのようにゴルダンはその場に立っている。


 これで二人は思い出した。ゴルダンが破格の強さの持ち主だったことを、アリアの叔母をいとも簡単に倒したことを。


「だめだよ、ヤマト。こいつは強すぎるよ。誰か、助けを呼ばないと。」


 しかし、ヤマトはアリアの忠告を聞かずに剣を振るう。


「お前だけは!」


 今度は剣先をつかまれた。


「そんな攻撃で倒せるとでも?」


 剣を抜こうとしてもびくともしない。そこをゴルダンはもう片方の手でヤマト腹部を殴った。


「ヤマトっ!」


 ヤマトは倒れかけたが、どうにかさやを杖にして立ち上がった。


「もういいよ雑魚は。」


 次の瞬間ヤマトの膝上から血がドバっと流れた。


 ヤマトはその場倒れ込んだ。


 

 



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