第16話 女神、再び
王城の中庭は、剪定された木々とおおよそ2階建ての建物くらいある大きな女神像があった。
アリアが女神像の下で手を振っている。ので、ヤマト達は彼女の元に行った。
「この人はバンニさん。ヤマトたちが来るまで話し相手をしてくれてたの。」
アリアは隣りにいる司祭を紹介した。
「いやあ。皆さん、ノーウィンでは本当に大変な思いをしましたね。ご無事でなによりです。きっと、あなた方を女神様は見守ってくださっていたのですよ。」
司祭はヤマト達に寄り添うように声を掛ける。
「そうかもしれませんね。」
とヤマトは返す。彼は、司祭の「女神様」という単語であることを思い出した。
( そうだ女神様に勇者のことを聞いてみよう。 )
「すいません、バンニさん。今から女神像に祈りを捧げたいのですが。」
「おお、若いながらも礼拝をしたいだなんて、司祭として嬉しいです。」
そう言うと彼は、邪魔にならないようトカゲ男とアリアを連れてその場から離れた。
ヤマトは女神像の前で目を瞑った。
次に目を開けると光の部屋に女神と二人だけになっていた。
「お久しぶりですヤマトさん。」
相変わらずの美貌に息を吞む。
「ど、どうも。」
「それでここに来たということは、何か私に用が?」
「はい。勇者についてお聞きしたいのですが。」
「では勇者と言う存在について説明します。」
「よろしくお願いします。」
女神が話し始める前に、大きく息を吸ったことから話が長くなることを想像するのは容易にできた。
「勇者。それは魔王と同等に渡り合える者。悠久の時から我々と邪神の戦いはありました。それは今尚、「勇者」対「魔王」という形で残っています。我々は一時的に邪神を封じ込めました、しかし奴は自分から産まれた魔物に精神を移して魔王として生き長らえています。」
「と言うことは、今の魔王は邪神そのものということですか?」
ヤマトの質問に女神は頷く。
「そして魔王は何千年もの間、この世界の覇権を握ろうとしています。我々も抗いたいのですが、今や概念の一部となってしまい地上に直接関与出来ませんでした。ですので私たち神も、最も神に近い血筋を引く人間の一族に宿り、勇者として魔王と戦いました。」
「では、今の勇者も中身は神様ということでしょうか?」
「いいえ。いまは人間が宿っています。」
ヤマトは安堵した。もし今の勇者が神様だったら、神に対し嫉妬し、失礼な言葉を吐いていたことになる。だから心は人間と聞き安心したのだ。
「でもなんで、今の勇者に神が宿らないのですか?」
「それは残る神が、私一人だけになったからです。」
「それはどういう...。」
「元々はこの世界に神という存在は、邪神を含めて20人いました。しかし神々が人間に宿ると、神の行き過ぎた生命力に人間の体は耐えられず、青年期には死んでしまいます。しかし勇者がいなければ人間は魔王どころか奴の手下にも勝つことができません。ですので死んでしまうと分かっていても神は、人の子に宿ることしか出来ませんでした。」
「では何故、今の勇者がいるのですか?」
「それは、魔王の力の秘密にたどり着いたからです。その力は魔王の行動からわかりました。そもそも魔王は何故か、50年経つごとに器を入れ替え、邪神の精神を次から次へと別の魔物に移して、生まれ変わっていました。」
「でもそれは、神様と同じく体が耐えられないのでは?」
「いえ、それとは別の意味があったのです。そもそも魔物というのは人間以上に体は頑丈にできています。とある神がドラゴンに宿って数百年経った今でも生きているのが何よりの証拠です。だから、邪神は体を入れ替えなくてもいいはずなのですが、魔王は生まれ変わっています。そしてその謎が、最近解けました。」
「その謎とは?」
「その謎、それは時空を超えた精神と、一般的な肉体が一つになるのというもので、それが魔王の力の秘密でした。その力の原理は、肉体が時と空間を越えた非常に発展した精神に追いつこうとした際に生まれるものでした。そして邪神は、完全に肉体が追いついた状態になる嫌い、別の魔王に生まれ変わったのです。そして、勇者と呼ばれる力の元も同じものでした。故に今の勇者は神が宿っていない、というです。」
しかし、ヤマトの中で疑問が生じた。
( 時空を越えた人間の精神って..? )
どうやらヤマトの心の中が読めるようで、女神はそれについても答えた。
「それはヤマトさんと同じような存在のこと。ですが、ヤマトさんは姿そのものをこちらの世界に移動したので勇者の力はありませんが...。」
「と言うことは、勇者も地球の人の生まれ変わり?!」
女神は、ヤマトがガッカリすると思ったが意外と話に食いついたので続けた。
「その通りです。そしてヤマトさんが転移してきたのも、勇者転生の儀式を私がしたせいで地球のある宇宙と、この世界の繋がりが強くなっていたのが原因です。」
( だから初対面で謝罪されたのかぁ....。 )
女神の話を聞き、ヤマトは地球人の勇者に会いたくなった、それに相手も同じ世界の人に会いたいと思っているに違いない。そう思うヤマトは、急いで女神に現世に戻してもらい、勇者のところに走って向かった。
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