第14話 王都到着。

 ヤマト達は王都に足を踏み入れた。


「ここが王都か....なんかノーウィンの方が発展してない?」


「いえ。ここは王都の端の部分本当の王都はまだまだ先です。街としての大きさはノーウィンとは比べ物にならないくらいの大きさなんです。なんてったってこの国一の都市ですからね。」


 自慢げに語る馬車の運転手は王都出身らしい。


 王都は巨大な城とそれを囲む住宅を城壁で包む様にできている。だが魔王軍の人間領の侵略が相次ぎ、人々は安全な王都に移住。結果、城壁の外にも家が建ち王都の壁の外側はスラム街のようになっているのである。


「何はともあれ、王にノーウィンが侵略されたことを知らせなくては。」


 ローツ御一行の馬車は城壁を目指し、再度進み始めた。


 途中、城壁の外の街を通るときに馬車の運転手の格好を見てか、物乞いが馬車に群がることもあった。


「ローツ様、城門に着きました。」


「運転、ご苦労様。ヤマトさんたちもご足労おかけしました。」


「いえ。ローツさんに何事もなくよかったです。」


 ローツは、門番に手形を見せるとヤマト達は王都の中へ案内された。どうやら今日は忙しいらしいので手紙だけ出して後日、王とは顔を合わせるようだ。


「やっぱり、権力者さんは違いますねぇ。ヤマト様。」


「こら。失礼な事言うんじゃない。」


 トカゲ男の皮肉にもローツは笑って返した。


「もしよければ、疲れていることでしょうし。今日は私の家でお休みになって下さい。」


 ヤマトは今にも寝転がりたい気分だったので、ローツの言葉に甘えた。


 ローツの家に向かう途中で、何枚も同じ貼り紙がありアリア目に留まる。


「ローツ様、この貼り紙は何でしょうか?」


「ああ、これはですね。ちょうど明日から三日間、勇者様の成人式パレードがあり、それが終わると勇者様の魔王軍討伐の初陣があるので王都は今その祭りの準備で大忙しなんですよ。」


「へぇー勇者様かぁ。」


( アリアは勇者様に夢中ですか...。くそっ俺も手違いじゃなく、この世界に来てたなら勇者にでもなってたはずなのに!産まれた時から最強で周りからは、ちやほやされてんだろうなあ。 )


 ヤマトは勇者に嫉妬した。


 ローツの家に着くと、召使い達に迎えられる。


「やっぱ、お金持ちは違うでしょう?」


「あぁ。そうかもな。」


 ヤマトは美人のメイドを見ながら小声でトカゲ男に返事した。



「やったー!異世界来てから初めてのお風呂だー!」


 ヤマトとトカゲ男は晩飯ができるまで、時間があるのでローツ邸の別館にある大浴場に入れさせてもらった。


「まあ。そんなにはしゃいで。」


「これが喜ばずにいられるかよー。俺のいたとこでは毎日入っていたんだぜ。」


「俺のいたとこって、もしかしてとこですか?」


「ギクッ!ど、どうしてそう思う?」


「いや、さっき「異世界来てから」って大声で言ってたじゃないですか。」


( まずい。気が緩んで声に出して行っちゃった...。 )


「でもわたくしは、ヤマト様が何処から来たって気にしません。ヤマト様はヤマト様ですから。」


「トカゲ男...。」


 つい口に出してしまったヤマトであったが、別世界から来たことを誰かに聞いてもらえて心が軽くなったのであった。


「「「いただきます。」」」


 ヤマト達は、部屋の端から端まであるとても長い机の上に並べられた食事に目を奪われた。


「わあー。どれも美味しそう。」


 アリアも食欲を取り戻したようだ。


「嬉しい!ここ数日ろくなものを食べてないですからね。」


 牢屋に閉じ込められていたトカゲ男は色鮮やかな料理に手が止まらない。


「皆さんのお口に合って良かったです。」


 ローツが話しているが、食事に夢中でだれも耳を貸さない。


 夕飯は盛大に行われ、大いに盛り上がった。食事後、アリアがお風呂に入りに行くと、二人は客人室で話しを始めた。


「あの。気になっているんですが、一緒についてきているアリアという女とは、どの様な関係で?」


「あっそか。トカゲ男にはまで説明してなかったわ。アリアはうちの新しいパーティーメンバーだよ。」


「ええー?!なんでそういう大事なこと、このわたくしに相談して下さらないのです!」


「でも、お前が反対しようが最終的には、俺の判断で仲間にするかどうかは決めるしいいだろ。」


「と言ったって他の人からの意見は大事でしょ!まあ彼女の場合かなりの属性の魔法がつかえるみたいですし、反対はしないですけども。」


「あっ。トカゲ男。お前にはもう一つ言うことがあって....。アリア、魔法の詠唱から発動するまで時間が掛る、珍しい人なんだよね。」


 トカゲ男は驚く。


「どうしてそんな子をパーティーに入れたんですか。冒険者に向いてないし、もしものことがあったらどうするんです?」


「でも彼女の小さい頃からの夢って...。それに最大限、危険な目に合わせないから!」


「ヤマト様がそこまで言うのなら....わかりました。それにあなた様が見出した人なのですからきっと大丈夫ですよ。言い過ぎました。ごめんなさい。」


 かくして、正式なパーティーの一員となったアリア。明日の勇者の成人式でまた彼らの運命は大きく動くのである。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る