第10話 魔法少女、参上!?

「私をあなたのパーティーに入れてくれませんか?」


「え、えっと。俺はヤマト。お名前は?」


「すみません。私はアリア。魔法使いですっ!」


 ヤマトに話しかけてきた彼女は、アリアと名乗った。なんと彼女の見た目は魔法使いと言うよりも魔法少女に近かった。赤色の髪に日本の制服を派手にしたような服装でコスプレイヤーのよう。年はヤマトとさほど変わらない。

 まるで二次元の世界の存在に生きているような彼女に、ヤマトは魅了された。


「ど、どうして俺の仲間になりたいんだ?」


「それは...そう!ヤマトさんを見た時から、なんか...強そうなオーラ出てましたから。一目惚れってやつですよ。」


「そんなこと言われたら、断れないな。よし!今日から君は俺のパーティーの一員だ。」


 ヤマトは鼻の下を長くしながらそう言った。


 早速ギルドの受付に行ってパーティー申請をしていると、ヤマトに近くのの冒険者が声を掛けててきた。


「そこの奴、悪いことは言わねえ。その女とパーティーを組むのはやめとけ。」


「なんでさ?」


「そいつが出来損ないの魔法使いって言われているのを知らねえのか?」


「どういう事だ?」


 するとアリアはヤマトの耳元で囁いた。


「ヤマトさん。この人達のことに耳を傾けないで。きっと私とパーティーになれなかったことを恨んで私たちを別れさせようとしているんですよ。」


 ヤマトはアリアと顔を合わせるだけでも精一杯なのに、彼女に顔を至近距離まで近づけられ耳元で囁かれたら緊張と興奮でなにも分からなくなった。


「お、お前は、アリアちゃんとパーティーを組めなくて、悔しいだけだろ。俺はなんと言われようとパーティーは解消しないぞ。」


「またこの女にまるめ込まれたか...。まあ、俺は警告したからな。」


 すると冒険者は人混みの向こうへ行ってしまった。


 ヤマトは、アリアをパーティーに入れるとクエストを一つ受けてギルドを出た。


「クエストの討伐対象の魔物を倒しに行こうか。」


「待って下さい。もう夕方です。夜の魔物討伐は危険ですし、明日にしませんかヤマトさん?」


「ま、まあそうだな。」


「じゃあ宿に一緒に行きましょう。」


「一緒に!?」


「なにか問題でもありますか?」


「ないけど..。」


 ヤマトは心の中で美少女と同じ部屋に泊まれると思っていたが、そんなことはなかった。


 翌日。とはいえ隣の部屋でアリアが寝ていると思うと、ソワソワして寝付けないヤマトであった。


「ヤマトさん、目の下のクマがすごいけど大丈夫?」


「気にしなくていいよアリアちゃん。」


「もうパーティーの一員だし、「ちゃん」はつけなくていいですよ。」


「そ、そう?なら俺もヤマトでいいよ。」


 ヤマトは、まんざらでもなかった。


「じゃあ、ヤマト。クエストのイノーガの大群をたおしに行こっ。」


「そ、そうだね。」


 出発の前に馬小屋に寄った。


「ヤマトは馬をもっているの?」


「いや、自転車って乗り物を預けているんだ。」


 そう言いヤマトは自転車をアリアに見せた。


「なにこの金属でできた物。こんなものどこで手に入れたの?」


「地元の鍛冶屋に作ってもらった特注品なんだ。」


 この嘘も板についてきた。


「へーヤマトって凄いんだね。」


「そ、そうなのかな。」


 アリアを自転車の後ろに乗せて、ヤマトはイノーガの出没地域に向かい漕いだ。


「意外と自転車って乗り物速いのね。」


「そう。走るより断然速いし移動が楽なんだ。」


( まあ、その速さのせいで、俺は死にかけたんだけど...。 )


 たわいもない話をしていると、ヤマトは何かに気づいた。


( もしかしてこの状況。青春ものとかでよく見る、カップルの自転車二人乗りにみえないか?! )


 そうでないと分かっていても、ヤマトはその事で頭がいっぱいになった。


「ちょっとフラフラしているみたいだけど大丈夫なのヤマト?」


( 正気になれ。くだらないことで転んでアリアを傷つけたらどうするんだ。 )


「大丈夫。それよりも、もうそろそろじゃない?」


 二人の目の先には冒険者が立てたであろうテントがぽつぽつと見えた。


「わぁー。これ全部冒険者かな?だったら手柄を取られないようにしなきゃ。」


 テントの近くに行くと冒険者がヤマトに声を掛けた。


「兄さんもイノーガ目当てかい?」


「はい、そうです。」


「だったら残念だね。ここ三日、私たちが見張ってたがイノーガは出てこなかったよ。もしかしたら大群は遠くへ行っちまったのかもしれないねえ。」


「そんなぁ。」


 とヤマトの後ろでアリアが呟く。


「その声はアリア?!またお前は若い冒険者を騙してパーティーに入れてもらったのかい。いい加減、冒険者は諦めろと言ってるだろう。」


「で、でもぉ....。」


「いえ。俺は騙されてなんかいません。俺は自分の意思でアリアがいいと思ってパーティーに入れました。」


 アリアは顔を赤らめた。


「まあそうかい。でもこの子は本当に戦いに向いてないからね。そこだけは頭に入れときな、兄さん。」


「分かりました。」


 突然、物音がした。そちらを見てみると砂ぼこりが立ち上がっている。よく見るとこちらに一頭の馬に乗った男性が向かってきた。

 その男性はさっき話していた冒険者の仲間のようだ。


「リーダー!イノーガの大群が出ました。」


「よし。お前ら目当てのもんがでたぞー!」


 大声で叫ぶとテントから続々と、その冒険者のところに人が集まった。


「私たちはイノーガを倒しに行く。兄さんらも早く倒さないと報酬はなくなっちまうよ。全部、私たちが倒しちまうからねえ。」


「行こう、アリア。」


「うん!」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る