第9話 魔法の街
自転車を馬小屋に預けたヤマト達は街の大通り出た。
『ノーウィン ここは この王国で 最も魔法が 発展している街』
門をくぐると、こんな看板が街の至る所にあった。
( ここは魔法が売りの街なのかな? )
「なあ、トカゲ男。街自体は発展してるけど、なんか魔法みたいな要素この街にあるか?俺にはよくわからないんだけど。」
だが、トカゲ男から返事はない。
「おい!聞いてるのか?」
まだ返事はない。
仕方なくヤマトが後ろを振り向くと、トカゲ男は上を取り憑かれた様に見ていた。
「トカゲ男。たしかに『ノーブン』の街に比べれば、この街は2階建てかそれ以上の建物は多いが。そんな、初めて都会に来た田舎の少年みたいな反応するほどでもないだろ。」
「いえ、違いますヤマト様。建物のさらに上、真上を見てください。」
トカゲ男に言われた通りに真上を見てみると。そこには、まるで空を覆いつくすような数の空飛ぶほうきが走り回っていた。
「こ、これは....。」
ヤマトもトカゲ男と同じく、下を見ることはできなくなった。
「ねっ、凄いでしょ。ヤマト様!これが『ノーウィン』が魔法の街と言われる所以ですよ。きっと!」
トカゲ男は興奮気味に喋った。
さっきまで下ばかり見ていたときの景色とは、全く違う。まるで、別の街に来たような感覚に陥ったヤマト。彼が足を止めてしまうほどだった。
すると
「ちょっと、お兄さん達!道の真ん中で止まらないでほしいんしんだけど。」
と女性の声が聞えた。
二人は謝ろうと後ろを振り返ると、彼らの姿を見た中年の女性は顔を真っ青にした。
「こ、この人...ま、魔物を連れているわ!それにこの魔物、従魔契約してないわ。誰か!この街の警備隊を呼んでちょうだい!」
「これから契約を.......」
ヤマトが説明をし始めると、空から猛スピードで警備隊が二人やってきた。
( まずい。どうすればいいんだ..。 )
突然のことに、ヤマトは混乱してしまった。
「君たち、ちょっとこっちに来てもらおうか。」
警備隊に話しかけられたヤマトは緊張と混乱で口が回らなかった。これに気づいたトカゲ男はまずいと思い、咄嗟にヤマトのリュックのポケットに手を突っ込んだ。
「すいませんねぇ。今から従魔契約をするところでして。」
そう言うと、トカゲ男はポケットから門番に貰った紙を取り出し、警備員に見せつけた。
「この書類は確かにこの街のものだ。すまない、君たちを勘違いしていたようだ。お詫びと言ってはなんだが、せめてギルドくらい道案内させてくれ。」
これにトカゲ男は大きく頷き、道案内をしてもらった。
「すまんな。俺があたふたしたばっかりに...。」
「いえ、お気になさらず。これも従魔の仕事だと思って下さい。」
この言葉にヤマトは、不覚にも感動してしまった。
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ギルドに着いた。
「なんだこの人の数。」
扉を開けるとそこは、まるで祭りをしているかのように人でごった返していた。
「すいませんね、うるさくて。」
美男子が二人に声を掛けてきた。彼は、いかにも魔法使いと言わんばかりの三角形の帽子とローブを身に纏っていた。
「もしかして魔法使いの方ですか?」
そのまんまの質問をヤマトはした。
「魔法は使えますけど、本職はどちらかと言ったらギルドの従業員ですかね。」
従業員の彼は、人混みを搔き分けギルドの従業員専用の部屋にヤマト達を案内した。
「改めまして、ようこそ『ノーウィン』のギルドへ。従魔契約の件でしたらこの街の者から聞いております。早速、そちらの手続きを始めても良いでしょうか?」
ヤマトとトカゲ男は同意し手続きを進めた。どうやら今日は忙しく、契約の完了には二日間掛かり、その間トカゲ男はギルドの別館に預けることになるらしい。
( 見知らぬ土地で二日間も一人でいるなんて何だか心細いなぁ。って何思ってんだ俺!この世界に飛ばされた時だって一人だったんだ、こんな魔族がいなくても一人でやっていけるさ。)
ヤマトが不安に思うのも当然。そもそも『ノーウィン』の街は『ノーブン』つまり最初の街の倍以上の面積を誇り、魔法といった彼の元住む場所には無いもので溢れかえっている。高校生、嫌、ほとんどの人がこんなとこに飛ばされたら馴染むのに一週間以上は掛かるだろう。
そんなことを見透かしたように、ギルドの男性はパーティーメンバーの募集の話を切り出した。
「ところで、お兄さんはリザードマンの他にパーティーメンバーがいないようですが。この際新しい仲間を作ってみるのはいかがでしょうか。」
「新しい仲間?」
「はい。ちょうど今の時期は、魔法学校を卒業したものがギルド来て冒険者の仲間入りをしているんです。」
「だから人が多いんですね。」
「はい、その通りです。それにこの街で仲間を作っておけば、心細くないですしね。」
彼のその言葉はヤマトの図星をついた。
ヤマトはトカゲ男と別れた後、ギルドの男性に言われた通りに仲間を作る為ギルド内を歩き回った。
ギルドを三周したあたりだろうか。なかなか声を掛けられずいたところを、ヤマトと同じ年くらいの美少女が話しかけてきた。
「私をあなたのパーティーに入れてくれませんか?」
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