第6話 レベル上げは、ほどほどに。
あれから七日程度、ヤマトは日課のようにに【自転車レベリング】をしていた。
今日は朝早くに草原へ向かう前に武器鍛冶屋によった。
「すいませーん。」
「おっ!どうしたんだ、あんちゃん。なんか買い物かい?」
早朝だが武器屋の店主は相変わらず元気そうだった。
「前に紹介してもらった初心者用の剣が欲しいのですが。」
「......!おいおい、あんちゃんがこの前来た時は、全く持てるような感じじゃなかっただろ。どうしたんだ、いきなり?」
「いえ。お気になさらず。俺は魔物を倒して強くなったので。」
「まぁ...そう言うなら俺は止めねえけどな。一応、鞘に入っているとはいえ、刃物だから気を付けろよな。」
ヤマトは剣を渡されると、片手で軽々と振ってみせた。
「マジかよ。」
武器屋の店主は驚きのあまり声が漏れてしまった。
「では、お会計を。」
「あぁ。..俺はなにをしたのかわからねえが、数日の間にあんちゃんみたいに急速に強くなったやつを見たことねぇ。だから、きっとあんちゃんなら凄腕の冒険者になれるだろうぜ!」
その後、武器屋の店主に褒められ浮かれていたヤマトは背伸びして少し難しいクエストを受けることにした。
「ヤマト君。このクエストは薬草取りっていう内容だけど、その薬草があるのは草原のさらに奥の危険な森にあるんだよ。それでもこのクエストを受けるの?」
浮かれているヤマトには、イリンの声は聞こえていないも同然だった。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよイリンさん。」
不安気味なイリンだったが、ヤマトがそこまで言うのならとクエストを受けることを承諾した。
森へ行くとヤマトは早速、薬草取りを始めた。
「意外と生えていないもんだなー。」
しかし森の手前側の薬草は取りつくされていたため、さらに奥に行くことにした。
少し自転車を漕いで奥に進んでいると、なにやら遠くに足音がした。少しするとその足音はどんどん強くなってきた。
( この足音、人のものか? )
もし人が自転車とぶつかってはのは危ないと判断したヤマトは声を出した。
「すいませーん。誰かいますか~。」
しかし返事はない、ただ足音だけが近づいてくる。
ヤマトが自転車を止めた瞬間そいつは顔を出した。明らかに人間ではなかった。それにそいつはトカゲのような見た目をした二足歩行の魔族の上、見慣れない2匹の魔物を引き連れていた。
「おやおや、誰がこのわたくしに声をかけてきたと思ったら、か弱そうな青年じゃないか。」
「誰が...か弱いって?」
散々褒められてきたヤマトは少しの挑発でも頭にきた。
「あなた以外に誰がいるというのです?」
「お前、名前は?」
「わたくしは、高潔なるリザードマンの血をひく者。魔王軍四天王の直属の部隊に訓練された兵士の次に強い工作員の一人。トカゲ男様になるぞ。頭が高いぞ人間!」
「それってあんま強くないってことだよね?それに名前がトカゲ男ってそのまんまじゃねーか。」
ヤマトは笑って挑発し返した。
「なにを!...もう許せん!やれっミニゴーレム達!」
すると引き連れていた魔物がヤマトに向かって走り出した。
ヤマトも負けじと自転車のペダルを思いっ切り踏み込んだ。ヤマトは一度スピードを出すため少し離れ、Uターンしてミニゴーレムをひき潰した。
「な、なんと。少々あなたを見くびっていたようですね。...ならば、わたくしの手であなたを潰すまで!」
「やってみろ!」
ヤマトは高々と叫ぶとトカゲ男に猛スピードで自転車をぶつけた。
しかし、自転車のかごをトカゲ男に両手でつかまれ止められてしまった。次の瞬間トカゲ男はヤマトごと自転車を遠くにぶん投げた。
予想外の攻撃にヤマトは背中から地面に落ちた。
「そんな攻撃でこのわたくしを倒せるとでも。」
調子に乗っていたヤマトは我に返り、今の自分では勝てないということに気づいた。
だがトカゲ男は攻撃の手を止らない。奴はヤマトの方に向かって走ってきた。もう逃げることができないヤマトは剣を手に取った。
ヤマトに近づいたトカゲ男が殴りかかってきた。それをヤマトは剣ではじくが想像以上の力に手が痺れた。もう一度拳がとんできた。さっきと同じように剣で防ごうとした。しかし拳は剣をすり抜けてヤマトの胸に当たった。
トカゲ男の攻撃を直接、体に受けたヤマトは痛みのあまり声も出せなかった。
(このままじゃ死ぬ....女神様に頂いたあの力を使わないと死んでしまう。)
「めっ女神様...!俺に力をっ!」
ヤマトは叫んだ。
「負けると思ったら今度は神頼みか...なんと愚かな青年だ。」
トカゲ男はこれで終わらせるという如く、鋭い爪をヤマトに向けた。
しかし、この瞬間ヤマトはトカゲ男の動きが遅くみえた。そう、女神の力が発動したのだ。そのため簡単に攻撃をよける事ができた。
(これが、女神様の力!30秒しかないけど今なら勝てる!)
ヤマトは動きの遅いトカゲ男を蹴り飛ばすと背中から、最初に買った方の剣を取り出し二刀流の構えになった。
するとヤマトはものすごい速さで、巨木にトカゲ男の両の手のひらを剣で刺し、トカゲ男を木に
女神の力がきれるとトカゲ男は自分の身に何が起きたかを悟った。
「お前の負けだ....トカゲ男.....。」
「ひぃー!すいませんでしたー。どうか、どうか命だけは...何でもします。ですから許してください!」
トカゲ男は巨木に縫い付けられ動けないながらも誠心誠意気持ちを伝えた。
とどめを刺したかったがヤマトの手元には剣がない。それに加え、彼は喋る人型の生き物を殺したことがなく、若干の戸惑いがあった。
さあ野上ヤマトが下した決断とは、、、、次回に続く。
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