第5話 女神のお告げ?

 宿屋に書いてもらった地図を頼りにヤマトは教会へと向かった。

しばらく漕いでいると大きな門に教会の文字が見えた。そう、ここが教会だ。


 門をくぐると、そこには庭の掃除をしている神父がいた。


「すいません。神父様とお話したいのですが今、時間ありますか?」


 とヤマトが言うと、神父は笑顔で快く教会に案内した。


「貴方の身なりはここら辺では見ませんが、もしかしてこの街の住民ではないのでは?...もしやこの世界の者ではないとか?」


( ...! 神父様は異世界転移のことがわかるのか?!もしそうなら相談相手になってくれるかもしれない。だったら神父様の前で噓をつくのはやめておこう。 )


「はい。そうなんです。ですがなんで俺が、この世界の住人ではないと分かったのですか。」


「それは、「この街に異世界人が迷い込んでいる」と女神様からのお告げがあったからです。そして女神様から「もしこの教会に異世界人が訪れたら我に祈りを捧げるように」とも伝言があります。ですので、もしよろしければ礼拝して頂けれませんか?」


「もちろん礼拝します。ですが一つ質問をしていいでしょうか?」


「たぶん、質問は私よりも女神様にした方が....」


「女神様とお話することができるのですか!?」


「はい。祈りを捧げれば迷える子羊達を導く、ありがたいお告げを授けてもらえるでしょう。私なんかよりも為になる話をしてくれるはずです。」

 

 何はともあれ女神を礼拝しないと話が進まないと思ったヤマトは神父に教えてもらいながら女神像の前で祈りを捧げた。


 



 ...すると「目を開けてください。」という女性の声が、どこからともなく聞えた。

言われるがままに目を開けるとそこはあたりいっぱいに靄のかかっている空間が広がっていた。

 そして、ヤマトの目の前には人間離れした美貌を持つ女性がいた。


「あなたが女神様?」


「はい。そうです。まずはこの教会の司祭の言う通りに祈りを捧げて頂き感謝します。おかげでこうやって二人で話すことが出来ましたから。」


「いえいえ。」

 

 さすがにヤマトも、この溢れ出る神のオーラの前では萎縮してしまうようだ。


「まずは謝らせてください!」と女神が見た目とは裏腹に大きな声を出した。


「そんな!女神様が謝るようなこと俺、されてませんよ。」


「いいえ、しました。あなたをこの世界に呼び寄せたことです。原因はこの街の者が、転移紋を発動させる際に、詠唱を噛んでしまい座標が大幅にずれて転移先があなたの住む世界と繋がってしまったそうなのです。こちらの不手際であなたをこの世界に転移させたことをここで謝罪します。」


 と女神は深々と頭を下げながら謝った。


「でも、悪いのは女神様じゃなくて詠唱を間違えた人でしょ?!いいから頭を上げてくださいよ。」


「いえ、さらに謝らないといけないことがあるのですが。」


「それって何ですか?」


「実は...あなたを元の世界に戻す、すべが今のところ見つかってないのです。つまり、あなたは当分の間この世界で生きていかなければならないのです。」


( 女神様は、ものすごく謝っているけど、そもそも俺はこの世界で生きようと思ってたし........そうだ!今ならチートな能力がもらえるかもしれない!女神様に願ってみよう!! )


「あの、女神様?」


「はい!!私に出来る事なら何でもしますので、どうかこの世界の民達だけは憎まないでください!すべて私が悪いのです。」


「ならー。」


「なら?」


「俺を強くしてください!」


「それで許してもらえるなら。ですがあなたを強くできるのは一回だけそれもきっかり30秒だけですが。」


「それだけですか?」


「すいません。私は武術に長けた神ではないためそれが限界です。」


「でしたらその力をください!だから頭を上げてください。ねっ、ねっ!」


「ありがとうございます!許していただけるなんて、なんと懐が深いお方なのでしょう。」

 

 ペコペコと何度も頭を下げるその様子は女神のすることではないようにも見えた。

 

「いえいえ。」


( しょぼい力だけどなにも無いよりはましだよね。 )


「あと女神様聞きたいことがあるのですが。」


「はい!何でも聞いてください!」


「疑問なのですが、なぜ魔物を倒すと人は強くなっていくのですか?」


「それは、魔物を倒していただいた者に感謝の意を込めて神々から少しのご加護が与えられるからですよ。簡単に言えばあなたの世界にあるゲームのレベルみたいなものと考えてください。」


( やっぱレベルじゃねーか。 )


「やはり神様達も、魔物は嫌なんですか?」


 ヤマトは、小学生のような素朴な疑問を投げかけた。


「嫌と言うよりそれは、この世界を脅かす危険な存在であり。それ故、倒したものへ加護与えているのです。」


と言うと親切な女神は、続けて魔物の説明をした


「彼らの誕生の時は遡ります、元々この大地のは我ら、神々の住居でした。神が大地に生まれてから時が経つと、邪神が現れました。奴は他の神を殺して自分が唯一の存在になろうとしました。そのため我々は邪神の暴挙を止めるため封印しました。ですが、その邪神から生まれたのが魔物、魔族、そして魔王。彼らも邪神と同じ考えを持っています。とくに魔王は邪神の血を濃く引いており、彼はこの土地を支配して邪神の復活を望んでいるのです。」


( なんかゲームみたいなカッコイイ世界観だなあ。 )

 

 こんな話、彼は到底現実とは思えず子供のような考えしかでてこないのであった。


「なるほど。色々とお話をさせて頂きありがとうございました。何だかこの世界のことが理解できたように思います。 ところで、こんなに長い間、話していると神父様が心配されるかもしれないので、元のところに戻りたいのですが。」


「ですね。では、あなたの精神を元の状態に戻します。 もし、なにか困ったことがあったら是非教会を訪ねてください。いつでも力になります。」


____________________ 

 

 ヤマトは教会を後に、魔物が生息する草原に向かった。なにやら彼にはしたい事があるらしい。


 草原に着いた。今日も小さな魔物が沢山いる。


「魔物の素材も欲しいしレベルも上げたいからここら辺の魔物、チャリでひいていこうかな。」


 と呟くと猛スピードで草原を駆け回った。少しすると、草原はたちまち魔物の死体の山となり変わっていた。


「大量!大量!そろそろいいかな。」


 するとヤマトは大きな麻袋をかごから取り出しして魔物を袋に詰めていった。それを取引所に運んで売ってはまた草原に戻る。このルーティンが彼の生み出した【自転車レベリング】である。


「最高だぜー!」 

 

 

 ...しかし、こんな事をして罰が当たらないわけもなく....次回なんと強敵が現る!!





 

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