第37話 ※思い出す聖女
「アーサー、ごめんなさい。これからはもう会えないの」
「……行くのかい?宮廷に」
「……うん、聖女の命は絶対だから。男の人とはもう関わっちゃいけないって。だからもう……」
「いいんだ、フィリア。僕はいつでもフィリアを見守っているから、フィリアは安心して聖女としての仕事をして」
「また、また必ずどこかで会いましょうね!私、きっと立派な聖女になるから!そうしてまた会いに来るから!」
「……ああ」
「どうして今更こんな思い出……」
エドワード様を待っている間、私はバルコニーに出て星を眺めていた。そうして今から行われることを前に気持ちを整えていた時、ふと昔のことを思い出したのだ。
アーサー・ウィリアムズ。私が宮廷に入る前の故郷の幼馴染。私が10歳になった年に故郷を離れた時、最後に会った友人だった。聖女になってからは、そのことが忙しすぎてすっかり記憶から抜け落ちていた。でも多分、今思い出したのは……。
(私はあの時、アーサーのことが好きだったのね。でもアーサー。私、今恋をしたの。とても素敵な人なの。この人が本当に好きって思えるわ。だから、)
「……アーサーも素敵な人と、結ばれてね」
その時、後ろで扉が開く音がした。私が振り向くと、そこにはエドワード様が帰ってきていた。
「そんな恰好で外に出たら冷えるぞ」
「はい、でも今夜は星が綺麗なんです」
私がそう言うとエドワード様もバルコニーに出てきて、星を眺めた。
「確かに、綺麗だ」
でもそう言って星を眺めるエドワード様の方が、私にはずっと綺麗に見える。
「……星に願いをかけていました。私はもう聖女ではないから、皆の願いを代行者として叶えることは出来ないけれど、でもこうして大切な人を願うだけでも」
「……ああ」
私はもう一度星にしっかりと願ってから、エドワード様に声をかけた。
「さぁ、エドワード様。せっかくお風呂に入ったのに、湯冷めしてしまいます。もう中に入りましょう」
「人払いはしている。朝までは誰も来ないだろう」
「……お気遣いに感謝します」
「心の準備は出来たか?」
「……はい、もちろん」
ベットの上で、エドワード様の手が私に触れる。私はくすぐったい気持ちを抑えて、その手に応えた。そうして手遊びをしているうちに、エドワード様が私の耳元で囁く。
「今日この日に、貴方を健康に産み育てたご両親と、私に出会わせてくれた運命に感謝をしよう」
「はい、私もエドワード様と出会えた奇跡、めぐりあわせに心から感謝いたします」
私達は、ベットの海に倒れ込んだ。
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