落ちぶれ聖女、騎士公爵様に触れる
第31話 探し物をする聖女
来週の今日に私はエドワード様と初夜を迎える。それまでに私が出来ることはそう言う行為に関する知識を蓄える。しかし今の私に頼れるものは本しかない。そう思った私は一か八かでミアさんにとあることを尋ねた。
「……書庫?ええ、ありますけれども。エドワード様は熱心な読書家でございますから。本の収集癖も相まって、この屋敷の書庫には相当数の本が揃っております」
その言葉に私は一安心し、ミアさんに早速書庫のある場所へと案内してもらった。
「ここが我が屋敷の書庫です」
扉が開かれた正面には大きな本棚がいくつも並んでいた。唖然としている私にミアさんは私に電機製ランプを手渡した。
「ここは暗いですからランプを持ってください。夕刻までには呼びに来ますので」
そう言ってミアさんは、書庫から立ち去った。その背中を見届け、私は大きな書庫の中を歩き始めた。ほの暗いこの場所に本当にランプは必需品だった。しかし意外にも書庫の中は多様なジャンルが綺麗に分類されていた。そのうち、私は心理学、と言う札を見つけた。そこに目をやると、そこには恋愛指南本のようなものが置かれていた。この広い書庫から探す手間が省けた、と思いつつ、私は本に手をかけた。
「私、本当に世間知らずなのね。何にも知らないわ」
何冊かの恋愛指南書を読んだ私は動揺しまいっぱなしだった。でも年頃の男女には当たり前なのだろう。エドワード様だって「喜ばせる為の方法は学んだ」なんてことを言っていたし。きっとこの指南本に書いてあるような体験も経験済みなのだろう。だから私は動揺している場合ではない。私はもうただの公爵夫人。普通の女の子。エドワード様との今度の関係の為に、俗的なことを学ばなければならないのだ。そうしてエドワード様の言った恋愛感情も。そうして、私は静かに本を閉じた。
きっとどこかの本には書いてある、私の知らない気持ちの答え。
(でも私は答えの本を探すより、直接知りたい……!)
当てのない探し物をするぐらいなら、私は大元の核心に直接問いたいのだ。
私は夕刻よりも早く書庫を出て、ミアさんに声をかけた。
「……あら、お早いお帰りでしたね。今日はもういいのですか?」
ミアさんのその言葉に、私は頷いた。
「はい、でも書庫での用事は全て終わりました。もう見つけましたから」
私がそう言うと、ミアさんは「……それは実に結構」と言った。多分心遣ってくれている。私はそんなミアさんに一礼すると、自分の部屋に早足で戻った。
1週間の準備期間など最初から必要なかった。エドワード様が本当に好きならば、私はしっかり向き合うべきだったのだ。だから私はもう逃げない。今夜は、いや、今すぐにでも、エドワード様にそのことをお伝えしなくちゃいけない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます