第5話 街を癒す聖女

 私はまず数枚の布切れを青年と一緒に集めて、布を綺麗な布団に再生させた。そうして空き家に簡易的な療養所を作った。そうして次に倒れていてまだ息をしている人を、聖女の力でいちから治していった。宮廷にいた時はあんなに弱かった聖女の力が、今ではまるで無限のように湧き上がってくる。私は無限にも感じる力の中で、数日かけて出来るだけの人を治していった。


 私を見た人は皆信じられない、なんて顔をした。


「こんにちは、大丈夫ですか?」


「聖、女様……?」


「聖女はもう追放されたのです。それより貴方を治しましょう」


 そんな会話をしながら私は人を治し続けた。青年や元気になった街の人が手伝ってくれて、歳を取った方は空き家に運んで寝かせた。そのおかげが動ける人も増えて、街には倒れている人はほとんどいなくなった。そうして街は私が来た時よりも大分生気を取り戻してきていた。


 

 夜、私は壊れたライタ―とランプを探して直し、明かりをともした。空き家には私の力がまだ弱く治しきれなかった重病人や、元気になった人が集まって冬の寒さを凌いでいた。私はその様子を見ながら、街の人に声をかけた。


「ごめんなさい、せめて暖かいスープでも用意出来ればよかったのですけれど……」


 すると、街の人の中でも穏やかで優しいおばあさまが声をかけてくれた。


「いいのですよ、聖女様。私達の怪我や病気を治し、寝床まで作ってくれた。それだけで私達は十分ですのよ」


 それに続けて、ずっと手伝ってくれていた青年も声をかけてくれる。


「そうです!聖女様が来てくれなければ、私達はただ死を待つのみだったんだ。みんな聖女様に感謝しているのです」


 その言葉を聞いて、私は久しぶりに胸の中に温かさを感じた。宮廷では沢山力を使うばかりで、力を使うことが当たり前でこんな暖かな言葉をかけられることがなかった。久しぶりに暖かい言葉をかけられて、私は少し涙腺が緩んでしまった。


「でも聖女様も、何かあってここに来たのでしょう……?」


 とある一人のご老人が私にそう、声をかける。私はごかますように笑って「私のことは大丈夫です」とだけ言った。




 それからも私は人を治し続けた。そのうち動ける人が増えてきて、自主的に街を掃除したりし始めてくれた。死体は私達はひとつひとつ火葬して骨を土に埋め、お墓を作った。理不尽にもここで亡くなった人が報われれば、と思ったのだ。そうしているうちに街の景観も良くなり、街はとても綺麗になっていた。人もたくさん行き交い、街は生気を取り戻していた。

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