第3話 追放された聖女

 次の日の朝、私はけたたましい声で目を覚ました。冷えた体を起こして正面を見ると、顔をしかめた警備官さんが牢獄の外に立っていた。


「フィリア・カーター、ルソー伯爵様がお呼びだ。起きろ」


 そうして私がまだ起き上がってもいないうちに、警備官さんは私の両腕を無理やりに掴み、引きずるようにして私を牢獄から引っ張り出した。



 引っ張られるまま歩くと、宮廷の外に出た。そこにはルソー伯爵様、ローズ様が私を待ち構えるように立っていた。ルソー伯爵様は私を見てにやり、と笑って見せた。


「フィリア、いい気味だな。これでお前の策略も終わりだ。これからはローズが全てを担ってくれる。お前は安心して落ちぶれるといい」


「フィリア様、これからはどうぞ私にお任せくださいませ」


 私がその言葉に何かを返す間もなく、私はそのまま後ろにあった馬車に乗せられた。そのまま馬車は発車し、私は宮廷から追い出された。




 しばらく馬車は走り続け、気が付くと馬車は街の中でも奥にある暗い場所に入り込んでいった。私は前に座っている運転手様に声をかけた。


「すみません、この馬車はどこへ向かっているのですか?」


 すると運転手様は振り向きもせずに、だけれど質問に答えてくれた。


「この馬車はベルローク街へ向かっております」


「……ベルローク街?」


 私がその言葉の意味を運転手様に聞く前に、馬車はとある街の前で止まった。警備官さんが私の腕を引っ張って、馬車から連れ出す。連れ出された先で顔を上げると、目の前には薄汚れた暗い街が広がっていた。


「ここは一体……」


 私がそう呟くと、警備官さんが私に大きな声で告げた。


「偽造罪の容疑でフィリア・カーターをベルローク街へ追放する!ルソー伯爵様からの伝言だ。もし改心しローズ様を新たなる聖女と認めるならば、1週間後またここに来るので、誠意として俺の前で土下座しろ、だそうだ。では1週間、改心するんだな」


 警備官さんは私にそう言い残すと、そのまま馬車に乗り込み宮廷のある方へ帰っていった。私は途方に暮れて、でもここで立ち止るわけにもいかず、街の中に入ることにした。






 街の中は薄暗く静かで人気ひとけもない。建物こそ並んでいるが明かり1つもついておらず、人もいなかった。代わりに建物の外に人が倒れ込んでいた。生気も感じられず、生きているのか死んでいるのかすら怪しかった。しかしよく見るとその腕や足には枷が付けられていた。中には囚人服を着ている人もいた。私はまだ状況も掴めずに、街をどんどん歩き進めていった。

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