第2話 本物と言える聖女
地下の牢獄に乱暴に投げ込まれる。そのまま抵抗する間もなく鍵が閉められ、警備官さんたちはそのまま立ち去って行った。私はその背中に叫ぶ。
「待ってください、これは誤解です!国王様もルソー伯爵様も何か誤解されているのではないでしょうか?!お願いします!どうか話をさせてください、どうか!」
私がそう叫ぶと一人の警備官さんがこちらを振り向いた。
「……聖女様」
「お願いします、私はこんなことが正しいとは思いません。貴方様もそう思っているのではないですか?!」
「わたくしたちはあくまで国王様に使えております。ですのでいくら聖女様の願いでも聞くことは出来ません。お許しください。どうか貴方に神の御加護があらんことを……」
「そんな……待ってください!待って……!」
しかし私の言葉を聞くこともなく、今度こそ警備官さんはそのまま立ち去って行った。明かりも無くなり暗くなった牢獄の中で私は項垂れた。
「どうしてこんなことに……」
以前からローズ様のことは耳にしていた。大侯爵様がローズ様を気に入っていたことも。でもまさかこんなことになるなんて思いもしなかった。
私は暗い牢獄の中で、冷たい床の感覚を感じながら目を伏せた。
この国には千年に一度、聖女が生まれる。
聖女は国を守るために生まれた、神に選ばれし者でその力を使い、千年にも続く国の平穏を守る役目を持つものだ。ある日、国の預言者が白銀の髪を持つ赤目の少女が聖女である、と予言した。そうして数年後私は白銀の髪に赤目を持ってこの世に生まれてきた。聖女と認められた私は10歳から宮殿で聖女としての教育を受けた。そうして16歳、この国での成人の年に私は聖女として表に出た。
私は全てを尽くし、聖女としての役目を果たした。この国には珍しい見た目のせいで恐れられることもあった。この力のせいで石を投げられることも、馬鹿にされることも沢山。でも私は聖女だから、自分にそう言い聞かせて聖女の役目を果たしてきた。なのにこんな仕打ちはない。確かに最近の私の聖女の力は弱く、なかなか役に立てることが少なかった。聖女の力は神からの授かりものだから、安定して使うことは難しいのだ。しかしあのローズ様は私しか持ちえないはずの聖女の力を安定して、しかも莫大な力を使うことが出来る。最近の私とはまるで違う。
「もしかして私、本当の聖女ではなかったのかもね……」
そう呟いた言葉は、ただ静かに牢獄の冷たい床に沈んでいった。
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