突如宮廷から追放され冷酷と有名な騎士公爵様に拾われた落ちぶれ聖女の私、身の安全の為に結婚いたしましたが、旦那様は12歳とは思えないほどロリかっこいい男装幼女様でした!?
藤樫 かすみ
落ちぶれ聖女、騎士公爵様に拾われる
第1話 ある日突然落ちぶれた聖女様
「悪虐聖女フィリア、今日こそお前の今までの悪事、暴かせてもらう!」
ルソー伯爵様が私を指さして、開口一番にそんなことを言う。その腕の中には、最近宮廷で「本物の聖女の力を持つ」と噂のローズ様がしおらしく抱きしめられていた。周囲では社交界の貴族様方が困惑して私を見ていた。私は困惑を隠しつつ、ルソー伯爵様に向き直った。
「ルソー伯爵様、失礼ですが一体どういうことでしょうか?私はこの国に誓って悪事など働いたことは一度もありません」
「嘘をつきやがって!お前の悪事はこの麗しいローズからすべて聞いたぞ!」
ルソー伯爵様がローズ様を見ると、ローズ様はたちまち目に涙を浮かべた。
「はいっ、私は幼いころから本物の聖女の力がありました。ですが地位と立場を利用しフィリア様が聖女を名乗っていてせいで、私は身分が低いこともあり名乗り出ることが出来なかったのです……!」
そうして本格的に泣き出すローズ様。ルソー伯爵様がその肩を抱きしめる。
「おお、可哀そうなローズ。その苦痛も今日で終わるよ。……フィリア、お前は嘘をついて皆を騙していたのだ!」
その言葉に私は感情的にならないように気持ちを抑えながら、反抗した。
「私は皆様を騙したことなんて……!」
「戯言を。時にローズの素晴らしい功績はもう耳にしたかな?」
「洪水で水浸しになった村を一瞬にして復興させた、とか」
「そうだ、この国が危機に陥った時、すぐに癒すことが出来るのが本物の聖女の力なのだ。お前の不安定な力が聖女ではない証ではないか?」
馬鹿にしたように、ルソー伯爵様が私を見下す。
「ルソー伯爵様、聖女の力は安定して使うものは難し……」
「ローズは安定して力を使うことが出来る!お前とは何もかもが違う!」
その時王様が「もうよい!」と私達を制した。
「では確かめよう。ローズが本物の聖女だと、そう見抜く方法は何かあるか?」
「はい、国王様!」
国王様のその言葉に、ローズ様が勢いよく挙手した。
「聖女の力は治癒能力に特化しております。ここは枯れた草花を蘇らす、というので確かめてみませんか?」
その言葉に国王様は少し考えた後「いいだろう、やって見せよ」と言い放った。私が何か言う前に目の前には枯れた草花がすぐに用意されていた。ローズ様は意気揚々と枯れた草花の前に立った。
「では先にローズ、見せてくれ」
「はい。見ていてください、国王様。本物の聖女の力を!」
ローズ様が正面に手を掲げた瞬間、たちまち枯れた草花は色を取り戻し、元気を取り戻し、生き生きとした姿に生まれ変わった。周囲からは「おおっ」という歓声が上がる。
「では次にフィリア、見せてくれ」
私はどうしようか、と少し悩んだ後、手を枯れた草花の前に掲げた。しかし、体に力がみなぎるのを感じれない。そうしていくら経っても目の前の草花が蘇らなかった。しばらくして、国王様が呆れたように声を出した。
「……もうよい、フィリア」
国王様がその言葉を放った瞬間に、私は周りにいた警護官に両腕を捕まえられた。その姿を見て、ルソー伯爵様がにやり、と笑う。
「フィリア、お前を国王および国民をだました偽装罪で罪に問う!そして聖女の座はこの麗しいローズ様に与える。いや、ローズこそふさわしい聖女だ!」
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